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【アジアで会う】山崎大祐さん マザーハウス代表取締役副社長 第253回 途上国発ブランドを世界へ(シンガポール)

やまざき・だいすけ 1980年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2003年米金融大手ゴールドマン・サックスに入社、エコノミストとして活躍。07年同社を退社し、服飾・雑貨販売を手掛けるマザーハウス(東京都台東区)の副社長として創業メンバーに加わった。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という独自の事業理念を形にするため、アジアを中心に積極的に事業拡大を進めている。

「事業の成否を握るのは継続力。何事も諦めずに続けることが大切」と語る山崎さん。(NNA撮影)

「事業の成否を握るのは継続力。何事も諦めずに続けることが大切」と語る山崎さん。(NNA撮影)

スポットライトに照らされた木の棚に、上品な革のバッグが並ぶ。別のテーブルにはストール、ジュエリー、パスケースなどカラフルな小物の数々。いずれも、バングラデシュやインドネシアなどの自社工場・工房で生産した手作りの品ばかりだ。

マザーハウスは今年4月、シンガポールのチャンギ空港に隣接する大規模商業施設「ジュエル・チャンギ・エアポート」に東南アジア1号店を開いた。台湾、香港に続く海外3カ国・地域目の販売拠点だ。5月初旬に店舗を訪れると、店内は世界各国からの観光客で賑わいをみせていた。

「これが全部、途上国で作られたなんて、誰も思わないでしょう」。山崎さんは、商品の品質に自信を示す。

■きっかけは大学の後輩からの誘い

マザーハウスは、今年で創業14年目。同社の代表兼チーフデザイナーの山口絵理子さんが、主にバングラデシュ、ネパール、インドネシア(ジョクジャカルタ)、スリランカ、インドにある生産拠点を担当。山崎さんが、日本と海外の販売拠点を走り回る二人三脚の経営だ。近く6カ国・地域目の生産拠点となるミャンマーに進出予定という。

山崎さんは、在学中から途上国の貧困問題に関心を持ち、ベトナムでストリートチルドレンに着目したドキュメンタリーを作成するなど異能の持ち主。相棒の山口さんは、大学時代に属した「竹中平蔵ゼミ」の後輩だった。

東京・六本木のオフィスでさっそうとサラリーマン生活を送る山崎さんを、山口さんが訪ねてきたのは入社3年目。「途上国の貧困改善につながるビジネスをしたい」。バングラデシュの工場で作られたバッグを取り出し、理想を語る山口さんの情熱に「おもしろい」とひざを打った。高収入・好待遇を投げ出すため、周囲の同僚から『正気か』と諭される決断だったが、飛び込むことにした。

■『想定外』は想定内

しかし、東京と途上国を1往復するだけで数十万円が吹き飛ぶ「遠距離」経営は、予想以上に厳しい。事業に出資してくれた仲間たちからは、「ネパールから撤退しなさい」と拠点の集約を迫られたこともあった。

最大の転機は開業5年目、2011年3月に起きた東日本大震災だった。その日はちょうど、初の海外販売拠点になる台湾1号店のオープン日。福島の原発事故の影響とそれに続く計画停電で、経済の混乱も続き、日本での販売が一気に落ち込むことは目に見えていた。

「開業間もない小さな会社はひとたまりもない」。山崎さんは、山積みになった在庫をすべて台湾に回すことにした。海外の販売拠点に起死回生をかける判断が、結果的に窮地を救った。ネットで地道に情報発信を続け、人づてに評判が広がった結果、台湾の事業は期待以上にうまく滑り出し、最近は黒字が定着した。

事業には必ず「想定外」がある。「それを『想定内』にするのが経営だ」。山崎さんが肌身で感じた教訓だという。

シンガポールの開店も「即断即決」。不動産開発会社キャピタランドから出店の要請を受けて、数日後には自ら現地に赴き、開店を決断。すぐに現地スタッフの募集も始めた。理想の事業モデルに近づけるため、「地震がなく、政治も安定した先進都市での出店に迷いはなかった」という。

シンガポールに一区切り着き、今はミャンマーでの生産を軌道に乗せるための準備に追われる毎日だ。「ミャンマーには世界最高峰のルビーがある」。ブランドに新たな花を添える将来図を思い描き、連日の長距離移動にも疲れを見せない。「途上国には多くの可能性がある。それを世界中のもっとたくさんの人に伝えていきたい」。山崎さんは、写真撮影に応じると素早く身を翻し、ぎっしりと書き込まれた手帳で次の予定を確かめた。(シンガポール&ASEAN版編集・上村真由)


関連国・地域: シンガポール日本
関連業種: 小売り・卸売り社会・事件

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