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中国からの中古車輸出、日本ブランドに商機も

「中国からの中古車輸出が解禁される」として、日中両国で業界関係者の関心が高まっている。中古車を「海外に出す」ことによって、約2,800万台で停滞している新車販売の買い替え需要を促すことが可能になるからだ。実現に向けた課題は、中国国内の中古車流通を健全化し、品質や価格の透明性を持たせること。中国生産の日本ブランド中古車は、左ハンドル国への輸出で商機がある、との指摘もある。【遠藤堂太】

膨らむ完成車メーカーの在庫。中古車輸出が始まれば新車需要を間接的に支えることが可能だ=中国南部・柳州

膨らむ完成車メーカーの在庫。中古車輸出が始まれば新車需要を間接的に支えることが可能だ=中国南部・柳州

中古車買い取り大手のカーチスホールディングス(東京都千代田区)は、中国から中古車を輸出するビジネスに乗り出す。先月26日に山東省の貿易大手、新華錦のグループ会社と同省青島市で合弁会社を設立する基本合意書を交わした。カーチスの担当者は、「新華錦が中古車輸出に向けて準備を進めており、われわれは日本の車両検査や査定などのノウハウを提供する」と述べ、事業の将来性に期待を込める。両社は昨年10月の安倍首相訪中時に北京で行われた「日中第三国市場協力フォーラム」で覚書を交わしていた。

報道によると、自動車販売の有力業界団体「全国工商業連合会自動車ディーラー商会」が、昨年3月の全国人民代表大会(全人代)で中古車輸出の発展案を提示。これを契機に業界の関心が高まった。現行では完成車メーカーの品質保証が求められるなど、中古車輸出は事実上不可能な状況という。

昨年10月に青島で開催された中古車輸出の国際フォーラムで講演した中古車物流・コンサルティング、ソウイング(栃木県小山市)の中尾聡社長は、「北京、天津、青島、広州で輸出が試験的に認められる見通し」と話す。中国と同じ左ハンドルの国で、新車を買える購買層が少なく自動車の本格的な生産が行われていないアフリカ西部やモンゴルなどへの輸出が期待できる。中古車が下取りされ輸出に回ることで、中国国内の買い替え需要を促すと中尾氏はみる。

日本と比べると中国の中古車流通量の伸びしろは大きい。2018年の日本の新車市場は527万台で中古車輸出は133万台。新車販売の4分の1が中古車として輸出に回る計算だ。日本国内で中古車として登録(販売)されるのは新車の1.32倍。これに対し、中国の中古車販売台数は新車販売の半分にも満たないが1,300万台を超える。

■課題は国内流通の健全化

京都大学大学院経済学研究科の塩地洋教授は北京で昨年9月、業界団体の中国自動車流通協会の招きで講演したが、業界団体の熱意とは裏腹にメーカーの中古車輸出の関心は低かったと指摘する。塩地氏によると、中国では中古車の輸入が禁止されているため、輸出も事実上制限されてきたが、「輸出が解禁されても、品質や価格面で中国の中古車が世界で競争力があるとは思えない」と輸出には懐疑的な見方だ。

塩地氏は、「日本では新車販売台数の6~7割はディーラーで中古車として下取りされる。しかし、中国ではディーラーの下取り率は1割程度だ」と指摘。中古車が市場に出にくいため価格が高止まりし、輸出した際に価格競争力がないと話す。日本の場合、新車購入1年後の車両価格の下落幅は3割だが、中国では1割程度しか下落しないという。

「中国や韓国ブランドの新車よりも、日本製中古車が安心・確実だ」。ミャンマー最大都市ヤンゴンで、地場物流会社の社長は、中国車の評価が市民の間でも低いことを強調する。昨年7月に右ハンドル車の輸入が禁止されたミャンマーだが、日本人が使用しコンディションも良い日本製中古車の人気は健在だ。

中国からの中古車輸出の最大の課題は、海外ユーザーの信頼感を得るために必要な、流通の健全化だ。ヒアリングした関係者は一様に、中国では「走行距離メーターの偽造がある」「修理履歴を隠す」「部品を非純正品に交換してしまう」といった懸念を挙げ、現段階では健全な中古車流通が見込めないと話す。

中国の自動車流通に詳しい大阪商業大学総合経営学部の孫飛舟教授も、日本のように自動車市場が成熟していないため、中古車輸出が難しいことを示唆する。孫氏は、「日本は車検制度や、中古車輸出でも検査システムがある。取引は海外からでも参加できるネットオークションが主流で、査定価格も透明性・合理性があり、その結果安く安心して購入できる。しかし、中国ではこれらが確立されていない」と述べる。

■左ハンドル国で韓国車より優勢に

中国での中古車流通は日本・ドイツのブランド車が上位を占める。このため、仮に中古車輸出が本格化したとしても、中国ブランド中古車と日本製中古車が競合することはなさそうだ。中尾氏によれば、「日本ブランド中古車の商圏が、左ハンドル国で拡大する」のだという。

日本からチリへは昨年、9万台の中古車が輸出された。チリでハンドルを右から左に約3万円で改造された後に、近隣のボリビアやパラグアイに再輸出されている。日本の完成車メーカー担当者は「危険な自社ブランド改造車が走っている」と危惧(きぐ)するが、改造していない韓国製の左ハンドル中古車よりも人気がある。

中尾氏は、「日本車を安く手に入れたい、というニーズは強い。中国から日本ブランド車が輸出できれば、新興国にとっても、日本ブランド車の安全を担保したいメーカーにとっても合理的だ」とコメント。「バイヤー開拓や海上輸送の連携、情報・ノウハウ共有で東アジア(日・中・韓)のメーカーや業者が連携し、中古車輸出の世界ネットワークを構築できないか」と提唱する。

・関連記事

(表)日本の中古車輸出(国別台数)

https://www.nna.jp/news/show/1883907


関連国・地域: 中国韓国ミャンマー日本
関連業種: 自動車・二輪車マクロ・統計・その他経済

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