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【ASEAN】タイ大手企業のマーケティング戦略

成熟化するタイのパーソナルケア市場(3)

3月20日付のNNA記事「スキンケアのドゥーデイ、インドネと越開拓」(https://www.nna.jp/news/result/1882325)によると、「スネイルホワイト」ブランドのスキンケア製品を製造・販売するタイのドゥーデイドリームは今年、インドネシアとベトナムに代理店を設置する方針を明らかにした。同社は、インドネシアやベトナムのスキンケア市場の成長率が、タイより高いとみて拡販を急ぐという。

同記事によると、インドネシアでは年央にも代理店を指名し、販売を開始する見通し。ジャカルタなど大都市に注力し、反応が良ければ地方での販売も進める。ベトナムでは年央にパートナーの選定を本格化し、今年末までに契約を取り付ける。ベトナムのスキンケア市場は年10%以上のペースで拡大しており、現在100億バーツ(約352億円)規模。タイ市場の成長率は7%にとどまるという。インドネシアとベトナムの2カ国とも本格的に売り上げが発生するのは来年の見込みで、今年の輸出比率は前年並みの20~25%と予測。ドゥーデイは、2018年にフィリピンに子会社を設立するなど東南アジア事業を強化している。

この記事にあるように、タイのビューティー・パーソナルケア市場が成熟化するにつれて、現地の大手企業の中には、さらなる事業拡大の場を、今後の成長が見込める近隣国に見出すケースも散見されてきた。前回記事(リンク)で取り上げたタイのオーラルケア会社のTwin Lotusもそうした近隣諸国への事業拡大を行っている一例だ。

さて、今回のシリーズでは、健康・美容関連の中でも比較的生活に密着したパーソナルケア市場、特にスキンケア、オーラルケアセグメントでのタイにおけるトレンドや主要各社の攻防等を複数回に分けて見てきた。

前回の記事「(【ASEAN】競争が激化する中でのタイ現地プレーヤーの戦略とは」(https://www.nna.jp/news/show/1874036)では、タイの成熟しつつあるパーソナルケア業界における主要各社の戦略を見てきたが、今回もそれに引き続きタイで成功している現地企業の事業拡大戦略について見ていきたい。取り上げるのは、現地に則したマーケティング力を軸に大手となったSmoothE//Siam Health Groupだ。

■タイ大手パーソナルケア会社大手のケース

今回ご紹介するSmoothE/Siam Health Groupは、タイにおいて大手の一角を占めている、現地の代表的なパーソナルケア会社で、主要な製品には、「SmoothE」ブランドで展開しているスキンケア関連や、「DENTISTE」ブランドのデンタルケア商品が含まれる。

同社は、1990年に創業者であり薬剤師でもあるDr. Saengsook Pittayanuku氏が創業。当時タイで販売されていた化粧品、クレンジングの質が、欧米で販売されている商品より落ちるという点に着目。そこで同社は、従来にはなかった泡の立たない洗顔フォームを開発し、水素イオン指数(pH)バランスが良くアレルギーにも対応し、かつ敏感肌にも刺激がない独自性の高い商品の開発に成功した。

また、当時のタイでは美容・健康への意識度が高まっていたため、Dr. Saengsookは、機能性の高い美容製品というコンセプトで、スキンケアの主力製品のSmooth-Eを市場に打ち出した。一見すると外資系の商品と見まがうパッケージも相まって、タイの市場で好評を得ることとなった。

その後、同じブランドで、ボディーケア、クレンザー、ヘアケア、日焼け止め、ニキビやアンティエイジング、美白効果、傷跡ケア製品など顧客の多様なニーズに応えられる広いラインナップを展開している。

またオーラルケアでは、口内のバクテリアの発生を最大12時間抑えることができるという独自フォーミュラ(成分調合比率)を開発。これにより、朝の口臭を改善することが可能になり、この特性を生かした練り歯磨きをDENTISTEとして展開。こちらも、歯ブラシやマウスウォッシュ、デンタルフロスなどのオーラルケアの周辺分野に進出し、同社を支える大きな事業の柱となっている。

■外資系の競合に次ぐタイのトップシェアブランドに

実際同社のタイ市場におけるシェアは大きい。図表1は、スキンケア関連の主要製品における、当該市場の1位ブランドとSmoothEの市場を比較している。

SmoothEは、フェイスウォッシュ(市場シェア12%)、フェイスモイスチャー(市場シェア7%)、メイク落とし(市場シェア7%)、メンズ洗顔料(市場シェア3%)と、総じて外資系が強いタイのパーソナルケア市場において、トップレベルのシェアを獲得している。特に、フェイスウォッシュ市場においては、市場シェア12%のトップブランドの地位を獲得しており、比較的市場への参入障壁が低く、ブランドが乱立しやすいフェイスウォッシュ市場において、確固たる地位を築いている。

また、オーラルケア分野でも同様に、歯磨き粉3位(市場シェア14%)、歯ブラシ 4位(市場シェア6%%)、マウスウォッシュ5位(市場シェア4%)、デンタルフロス3位(市場シェア 12%)と、外資系のトップブランドに次ぐレベルで健闘している。

■タイ市場を熟知したマーケティング力が強み

同社の強みは、自社商品のポジショニング戦略と、自社の強みを市場に訴えるマーケティング力にある。

彼らのマーケティングにおける基本方針は、「商品を売るのではなく、感情を売る」。つまり、自らの技術力を、より感情に訴えるマーケティング力を強みとしている。例えば、口臭改善に効果の高い彼らのオーラルケア関連製品では、技術的な優位性をストレートに訴えるのではなく、「朝起きてすぐキスできるハミガキ」として打ち出した。またそのイメージに沿ったテレビCMを複数のストーリー形態で市場に打ち出した。その結果、顧客の感情に直接訴求する同社の強みとなるメッセージを浸透させた。

加えて、「DENTISTEを使って歯のケアを続ければ、歯医者に行く必要はなくなる」と、経済合理性をわかりやすく訴求したりもしている。タイでは歯医者は保険適用外なので、コストの削減になることを効果的に伝えている。

こうしたメッセージを、年間1億バーツの費用を投じて、芸能人を積極的に活用して消費者にアピール。特にタイの農村地域では、医師が勧める商品より芸能人が宣伝する商品の方が人気があるため、技術的な優位性を、わかりやすいメッセージに落として、かつより受け入れられやすいマーケティング戦略で市場に訴求している。

販売チャネル戦略も独自性を発揮している。彼らは、薬局・ドラッグストアと提携して、店頭で顧客に対して優先的に勧めてもらうよう契約を締結。加えてこれらの小売店に自社専用の棚を設けて目立たせている。

彼らの積極的なマーケティング戦略の結果として、一般的な他社の競合商品より価格は高いが、日用品ではなく医療品よりの商品、という位置付けで独自のポジションを保っており、結果としてより高い収益性を維持することに成功している。

さて今回、現地メーカーの事業戦略のケースとして、タイ現地資本で成功している企業のマーケティング戦略を紹介した。タイの市場性を熟知した市場への伝達方法で、自社のポジショニングを高めており、比較的安かろう悪かろうと見られがちな多くの現地系商品とは一線を画している。その結果、外資系がプレゼンスを発揮するタイのパーソナルケア市場において、現地系でしっかりとした市場を獲得する稀有なケースとなっている。


関連国・地域: タイ日本
関連業種: 化学小売り・卸売り

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