• 印刷する

【アジアで会う】ジャニス・ウォンさん パティシエ 第246回 食べられる芸術作品を世界に(シンガポール)

ジャニス・ウォン 1983年シンガポール生まれ。シンガポール国立大学(NUS)経済学部卒業。2007年にシンガポールでデザートやお酒を深夜まで楽しめる「2am:デザートバー」を開業。13、14年に2年連続で英出版社ウィリアムリードビジネスメディア主催の「アジアベストレストラン50」で、アジア最優秀ペストリーシェフ(パティシエ)に選出。16年には新宿に日本1号店を出店。趣味はヨガや写真撮影、旅行。

「エディブルアート(食べられるアート)」をテーマに芸術作品のような美しいデザートを作り出し、アジアを代表するパティシエ・シェフとして活躍するジャニスさん。有名パティシエというと華やかなイメージを持つが、シンガポール中心部の国立博物館にある自身の旗艦店に現れた彼女は、控えめで落ち着いた雰囲気をまとっている。いつごろパティシエになると決めたのか聞くと、「20歳ぐらいまで今の仕事に就くとは思ってもみませんでした」と少し恥じらいながらほほ笑んだ。

シンガポールのほか、東京・新宿駅直結の商業施設、マカオの大型商業施設MGMコタイ、英ロンドンの高級百貨店ハロッズといった「一等地」で、自身の名前を冠した小売店や販売コーナー、デザートバー(デザートやカクテルを提供する飲食店)、レストランを展開。新宿のデザートバーでは、季節ごとにゴボウやイチジクなど日本各地の食材を使い、遊び心にあふれたデザートを考案。美しい「アシェットデセール(皿盛りデザート)」を堪能できる店として人気を集めている。

■留学先のオーストラリアで「開眼」

食材にこだわりながら料理を作りたいという思いは、NUS経済学部在学中にオーストラリアの大学に留学した際、農園やぶどう園を訪れた体験が基になっている。新鮮な食材を使ってチーズやワイン、チョコレートを生産する現場を目の当たりにし、キュレーター(学芸員)が芸術作品を演出するように、食材の独特な香りや食感をシンガポールの人にも楽しんでほしいという思いを抱くようになる。

もともとは金融機関などに勤めるつもりでNUS経済学部に進学した。だが留学先での体験を機に「食の道」に進むことを決意し、大学卒業後はパリの名門料理学校「ル・コルドン・ブルー」に入学して菓子作りの技術を習得。同校で学んだ後は世界各国のレストランで働き、ピエール・エルメなど世界的なパティシエに師事した。「五感を刺激して人を幸せにする食べ物を作りたいと考え、エディブルアートのコンセプトが浮かびました」。07年にシンガポールでデザートバーを開業し、こうしたコンセプトを国内で初めて紹介したのがジャニスさんだ。

今では新しい食材を探しに月に1回は日本を訪れる。最近も福岡に出張した。父の仕事の都合で3歳から7歳まで東京で暮らしたため、日本は思い入れのある国。シンガポールで日本の地方自治体と連携し、日本産食材を使ったデザートを開発してシンガポールの飲食業関係者に紹介する取り組みにも積極的に参加している。「日本で人口減や高齢化が進む中、経済活性化に向けて日本産食材の輸出促進に少しでも貢献したい」と話す。

シンガポールと日本の店舗で出す商品・メニューは基本的に異なるが、日本産食材は新宿店のメニューのほか、シンガポールで販売する一部商品にも使用している。シンガポール人は刺激が強く甘い味付けを好む人が多い一方、日本人は苦い味を好むなど、両国で消費者の嗜好(しこう)が異なるため、現地の好みを意識しながらメニューを開発する。シンガポールでは、旧正月(春節)や中秋節などの行事に合わせて年に4つ以上の新商品を制作している。

■シンガポールで店舗網拡大

過去数年で海外出店を一気に進めてきたが、現在はシンガポールでのブランド強化に力を入れている。今年に入り繁華街オーチャードの免税店DFSギャラリアに販売コーナーを開設。チャンギ空港にも3月末に販売店をオープンし、国内では6店体制となった。「シンガポールの店でも日本人のお客さまを少なからず見掛けます。国内店舗の存在感をもっと高めたい」という。

デザートだけでなく、ファッションや写真など芸術全般への関心が高く、自身の店舗の内装も手掛けるジャニスさん。有名ファッションブランドのショーと提携し、来場者へのお土産として「ジャニス・ウォン」の商品も提供している。好きなデザイナーを尋ねると、フランスの世界的な服飾デザイナー、ココ・シャネルと、先ごろ亡くなった著名デザイナー、カール・ラガーフェルドを挙げた。「2人とも憧れの人です。ココは日本でも好きな人が多いですよね」

パティシエの枠を超えて多方面で活動するジャニスさんの名前が、世界中で広く知られる日もそう遠くないかもしれない。(シンガポール&ASEAN版編集・清水美雪)


関連国・地域: シンガポール日本
関連業種: 食品・飲料小売り・卸売り社会・事件

その他記事

すべての文頭を開く

手技整体「平松式」が海外1号店 健康維持に貢献、人材育成も視野(16:31)

船舶登録システム、ブロックチェーン活用へ(15:24)

比アヤラ、ヨマと合弁で再生エネ市場参入(14:22)

香港の資金を呼び込み、規制緩和へ=金管会(12:39)

太陽光REC、生産能力を5割増強(16:04)

テイクオフ:小さな都市国家であるシ…(10/15)

テイクオフ:クアラルンプール北郊に…(10/15)

リセッション回避も経済低迷 3Q成長率0.1%、金融緩和実施(10/15)

不動産投資、東南アにシフト=香港不安で(10/15)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン