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【「スポーツ×アジア」の新時代】タイ人が日本の地方都市に注目するワケ

Jリーグが進めるアジア戦略

北海道コンサドーレ札幌のチャナティップ選手やサンフレッチェ広島のティーラシン選手を含め、Jリーグでは現在5人のタイ人選手がプレーする。その背景には、2012年からのJリーグの「アジア戦略」がある。アジアの優秀な選手にJリーグでの活躍の場を提供することで、アジアの注目をJリーグに集め、Jリーグとアジアサッカーの市場拡大、ひいては新たなビジネスや日本経済の発展に寄与することを目標に掲げているのだ。

バンコクで開催されたコンサドーレの親善試合で北海道・札幌をPR(小山恵氏提供)

バンコクで開催されたコンサドーレの親善試合で北海道・札幌をPR(小山恵氏提供)

Jリーグマーケティングの小山恵氏。Jリーグのタイ向けECサイトの運営も担当する

Jリーグマーケティングの小山恵氏。Jリーグのタイ向けECサイトの運営も担当する

アジアのサッカー界では、日本のJリーグが競技、市場規模ともに最高レベルにある。「Jリーグにはアジア各地に提供できるノウハウがある」と話すJリーググループ企業である株式会社Jリーグマーケティング(東京都文京区)海外事業部の小山恵氏。「現地のスター選手がJリーグの各クラブに加入することで、もっとアジア各地でJリーグの試合を観戦してもらえるようになる。Jリーグに移籍した選手も成長し、各国代表も強くなっていけば、日本のライバルとなって、アジア全体のレベル底上げにつながっていく」。そんな構想を描いて、Jリーグは12年にアジア戦略を本格スタートした。

その後、J2リーグの複数のクラブにベトナム人選手などが加入したが、競技レベルや環境への適応などさまざまな理由で試合に出る機会は少なく、その存在への大きな注目が続くことはなかった。

だが、17年夏にJ1リーグに昇格したばかりのコンサドーレが獲得したタイのチャナティップ選手の活躍が、Jリーグ全体にとっても転機となった。チャナティップ選手は加入後、レギュラーとしてリーグ戦16試合に出場し、無得点ながらもチームのJ1残留に大きく貢献したためだ。

■メディア露出の大きさと札幌の認知度

「タイのメッシ」としてタイで知らない人がいないほど有名なチャナティップ選手。そのJリーグでの活躍ぶりをタイ現地メディアが伝えないはずがない。露出度の大きさは圧倒的だった。

彼がコンサドーレ加入後、初めてとなる練習風景をJリーグの公式フェイスブックで配信したところ、332万人にリーチした。これは札幌市の人口197万人よりはるかに多い。

チャナティップ選手のJリーグ加入が追い風となり、タイの大手放送局TRUE VISIONが17年から有料放送「True Visions」でJリーグの試合放送を開始した。シーズン中は毎週5試合が放送されている。地上波の「True4U」(無料放送)もコンサドーレの試合を中心に放送し、1試合の視聴者数は30万~40万人に上る。スマートフォンなどのアプリ(True-ID)でも試合が視聴でき、コンサドーレの試合の視聴者数は英プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド、リバプールに次ぐ人気ぶりだ。

現地メディアで注目されたことで、札幌市の認知度も大きく向上した。米調査会社ニールセンスポーツが18年2月にタイのJリーグファンに「知っている日本の都市名」について聞いたところ、93%が札幌市を知っていた。東京(98%)や大阪(96%)、横浜(96%)、広島(94%)に次ぐ高さだ。一般のタイ人の認知度82%に比べると11ポイントも高く、Jリーグの試合放送などメディア露出が札幌の認知度を大きく高めたのが分かる。

日本の各都市別の訪日目的を調べると、札幌と広島はサッカー観戦の割合が他都市に比べて高く、さらに札幌ではスキーを目的した訪日の割合より多かった。

タイでのJリーグや札幌の認知度上昇を受け、タイから札幌などへの観戦ツアーも組まれるようになっている。コンサドーレがバンコクで行った親善試合では北海道と札幌市の地域プロモーションを行ったほか、タイに進出を計画する北海道の企業にも参加してもらった。アジアでのコンサドーレやチャナティップ選手の人気ぶりを活用しようとする企業や自治体の動きも活発化している。

■増えるアジアの選手

チャナティップ選手のコンサドーレでの活躍で、Jリーグの各クラブが東南アジア出身選手への関心を高めている。サンフレッチェ広島が18年、同じタイ人のティーラシン選手を獲得し、ヴィッセル神戸もタイ代表のキャプテン、ティーラトン選手を加入させた。18年11月現在ではFC東京やセレッソ大阪を含め計5人のタイ人選手がJリーグでプレーしている。

Jリーグマーケティングの小山氏は「5年ほど前から各クラブに東南アジア選手の獲得とその可能性を呼びかけても、東南アジアに対する先入観もあり、なかなか実現に至らなかったが、チャナティップ選手の活躍で他に良い選手がいれば獲得したいと興味を持ってくれるようになった」と指摘する。

Jリーグは、J1リーグの外国籍選手枠(試合エントリー)を18年までの4人(3人+AFC加盟国籍1人)を、19年から5人に拡大するほか、Jリーグと提携するタイ、ベトナムなどの選手は外国籍枠に含めないという提携国枠は継続する。「東南アジアの子供たちや若い選手はJリーグを目指すようになった。タイの次に狙うのはベトナムやインドネシアなどの有望選手。Jクラブの強化担当、スカウトも現地に行っている。ぜひいい選手に加入してもらえれば」と小山氏は微笑んだ。

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■チャナティップ選手も「なまらうまい!」

「ガリガリ君」PRにチャナティップ選手を起用

「アジアプロモーションパートナー」締結の発表記者会見。左から赤城乳業の井上創太社長、チャナティップ選手、コンサドーレの野々村芳和社長。

「アジアプロモーションパートナー」締結の発表記者会見。左から赤城乳業の井上創太社長、チャナティップ選手、コンサドーレの野々村芳和社長。

チャナティップ選手の等身大POPなどを使用した、タイ国内でのプロモーションの様子

チャナティップ選手の等身大POPなどを使用した、タイ国内でのプロモーションの様子

経済成長を背景にアイス市場が伸びるタイ。氷菓「ガリガリ君」で知られる赤城乳業株式会社(埼玉県深谷市)は、2016年にタイ現地法人、アカギアイスアジアパシフィックを設立。タイ国内のコンビニやスーパーなどで「ガリガリ君」を販売している。チャナティップ選手の人気を販売の起爆剤にしようと、17年12月に北海道コンサドーレ札幌と「アジアプロモーションパートナー」を締結。タイ国内でのプロモーションの広告塔として、チャナティップ選手を起用している。

「弊社は10年からサッカー日本代表(サムライブルー)とコラボしたガリガリ君ソーダなどを販売。その流れで、タイでガリガリ君の知名度を上げるためには、販促にサッカー選手を起用したいと思い、絶大な人気のチャナティップ選手を起用しました」と同社営業本部マーケティング部の萩原史雄さん。

街頭やイベントなどで使用する等身大POPや、サンプリングなどでガリガリ君と一緒に配布するステッカーやクリアファイルなどに、チャナティップ選手の肖像を使用している。同社マーケティング部の広瀬裕美さんは、「日本を好きな方はガリガリ君を知ってくれていましたが、それでも全体的な認知度はまだまだでした。チャナティップ選手起用のおかげで、サンプリングなどを通じて認知度の向上を実感できるほどになりました。チャナティップ選手の熱心なファンは、ガリガリ君も応援してくれています」と効果を語った。

※特集「『スポーツ×アジア』の新時代」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年1月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: タイ日本
関連業種: 食品・飲料小売り・卸売り観光メディア・娯楽社会・事件

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