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【アジアで会う】ダイティア・ジョハン・アガハリさん 総合診療医 第238回 患者は家族、心に寄り添う(インドネシア)

1957年生まれ、北スマトラ州メダン出身。アトマジャヤ大学医学部卒業後、90年に富山医科薬科大学(現・富山大学)に留学、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の小児循環器科で2年間の臨床経験を持つ。現在は、南ジャカルタに2カ所あるクリニック「SOSメディカ」を掛け持ちしながら勤務する。日本とインドネシア両国の友好関係や相互理解の増進などに貢献したと評価され、2018年12月、在インドネシア日本大使から在外公館長表彰を受賞。

初めて診察した患者には、名刺に自分の携帯電話番号を手書きで記入してから手渡す。インドネシアで携帯電話が販売され始めた1990年代後半から続けていることだ。

当時ジャカルタには、日本語が通じる医師やスタッフがいる病院、クリニックはとても少なかった。海外在住の日本人が、体調を崩し、医療機関を受診したとき、医師やスタッフに病状をうまく伝えられないという言葉の壁が立ちはだかる。携帯電話で直接、それも日本語で話せ、小児科の臨床経験も持つ医師のジョハンさんは、特に小さな子どもを持つ親には心強い存在だ。

だが、携帯番号を患者に教えれば、当然のことながら昼夜を問わず緊急連絡が入ってくる。勤務先のクリニックは当初から、医師が患者に携帯番号を教えることに、いい顔をしなかった。

ジョハンさんはそれでも携帯番号を教え続ける理由を、こう説明する。ジャカルタでは、救急車を呼んでも日本のようにはすぐ来てくれない。夜間であればタクシーに1人で乗るのは不安だ。子どもが病気やけがをしたときに、父親が仕事で不在だと、母親1人で付きそうのはとても心細いだろう――と。

特に、病状を自分で詳しく説明できない子どもが患者の場合、保護者に患者の容体や患部をスマートフォンで撮影してもらい、その写真や動画を送信してもらう。そうすれば、たとえ保護者や付き添う人がパニックに陥っていたとしても、病院に搬送されるまでの間も、ジョハンさんは適切にアドバイスが与えられ、保護者の不安を和らげることができると考えている。

■LINE登録は500人以上

病気になると、身体が弱るだけでなく精神的にも不安になりがちだ。ジョハンさんは「医者が病を治すだけでは不十分。患者だけでなく、付き添う保護者も心強くなれるように寄り添い、手助けするのが仕事だ」と話す。

スマホが普及した今は、携帯番号が無料通信アプリLINE(ライン)のアドレスに代わった。登録されている患者の数は、「きちんと数えたことはないが、500人以上はいるかな。患者さんは家族ですから」。時にジャカルタ以外の地方や、海を越えた外国にいる日本人の「家族」からメッセージが届くこともある。

言葉が自由に使えない外国で、もどかしい思いをすることが多いからこそ、体調がすぐれないときには、母語で話せる医師や医療スタッフがいると安心する。30年近く前、富山県内の病院に留学したときの経験から痛感したことだ。

■子どもも医療、生理学の道に

留学は「小さな偶然が重なって」実現した。とはいえ、その道のりはとても長かった。奨学金を申請したものの、待てど暮らせど受理したとの返事がこない。申請窓口に毎週通い詰め、吉報が届いたのは4年後だった。

妻と当時4歳の娘、2歳の息子をジャカルタに残しての単身留学。朝と夜に毎日、自宅に電話をかけた。国際電話をかけられる公衆電話は、寮から1キロも離れた場所にあったが、冬の寒い雪の日も電話ボックスに足を運んだ。当時の寮費は月3万~4万円だったが、電話代は7万円もかかった。

ジャカルタに戻り、勤務医として超多忙なジョハンさんを支えたのが妻だった。日曜日でも急患が出れば、クリニックに向かうジョハンさんを車で送り、診療が終わるまで数時間、車中で待機した。そんな両親をみて育った長女は今、オーストラリアで救命医になり、長男は上智大学を卒業、オーストリア国立大学で奨学金を得て博士号を取得後、岡崎市の生理学研究所に勤務している。

たまに1週間ほどの休暇が取れれば、日本とオーストラリアに妻と一緒に出向く。仕事で多忙な子どもたちに代わり、彼らの家の掃除をする時間は、こころ休まるひとときだ。(聞き手=インドネシア編集部・山本麻紀子)


関連国・地域: インドネシア
関連業種: 社会・事件

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