【アジアで会う】タン・レンレンさん シンガポール国立大学日本研究学科長 第198回 高齢化や世代間交流を研究(シンガポール)

タン・レンレン 1965年シンガポール生まれ。84年にシンガポール国立大学(NUS)日本研究学科に入学。97年に米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で学術博士号(文化人類学)を取得。アジアの高齢化事情や老年学、世代間交流などを専門とする社会文化人類学者。NUSの准教授でもある。趣味は旅行。大学生と高校生の息子、夫との4人暮らし。

小さいころからドラえもんの中国語版の漫画に親しみ、日本の文化は身近な存在だった。中学時代に家族旅行で日本を初めて訪問。いつしか大学で日本についてしっかり学びたいと思うようになる。

NUS日本研究学科に入学したのは、同科創設から3年後。「当時は故リー・クアンユー初代首相が高度経済成長を遂げた日本を見習おうと提唱していました」。日本研究学科ができた背景にはこうした国の意向があった。

■沖縄の長寿文化に関心

最初は日本語研究に取り組み、大学4年の時に名古屋の南山大学でサマーコースを受講。NUS卒業後は奨学金を得て沖縄・琉球大学で特別留学生として1年学んだ。日本語学と共に興味があったのは、日本の高齢化事情や日本人の家族動向。高齢化進行はシンガポールと日本で共通の課題だ。高齢化問題では、シンガポールにいる祖父を見ていて長寿社会のあるべき姿を学びたいと考えた。その後、沖縄の長寿文化や生きがいについて本格的に研究するためNUS修士課程に進学。老人が生きがいを見いだすきっかけになるという世代間交流(高齢者と年少者が相互に関わり合うこと)に対する関心も高まっていった。

さらに専門分野の研究を続けたいと米イリノイ大学博士課程に進み、人類学を専攻。老人ホームと保育園が併設されている東京の施設を調査し、世代間交流の様子をまとめた書籍を米国で出版した。この書籍は今でも世代間交流を取り入れた老人ホームの運営などに関する参考書として読まれている。「今でこそ世代間交流が老人に生きがいをもたらすと盛んに言われていますが、当時はまだ新しい概念でした」

博士号を取得してNUSに戻り、人文社会学部で副主任などを務めた後、2005年に日本研究学科長に就任。連続任期は6年間という制約があるため、10年末に一度退き15年に再任された。学科長としての任期は今年で通算9年になる。

■ポップカルチャーや食の講義が人気

日本研究学科では日本の食文化やポップカルチャー、映画、文学、政治、歴史、社会、ビジネス、言語学など幅広い分野の授業が行われている。「特にポップカルチャーや食文化に関する講義が人気です」。このほかNUSでは、日本語を含む外国語の授業が語学教育研究センターで行われており、日本語は人気の高い言語の一つという。

日本研究学を主専攻とする学生は現在約65人。副専攻として学ぶのは約100人で、大半がシンガポール人だ。日本研究学科の講義を受ける学生数は他学部からを含めて年間約1,400人に上る。交換留学などの日本滞在プログラムも充実している。「ここまで日本について包括的に学べる大学はアジアでも珍しいと思います」。日本研究学科には修士・博士課程もあり、学生の国籍は多彩だ。

タンさんによると、学科創設当初は学生の多くが日本企業への就職を意識して入学してきた。90年代に入るとシンガポールで日本のドラマやJポップが流行したことから「文化を知りたい」という動機が目立つようになる。現在でも日本の漫画、アニメ好きが高じて入学する人が多い。

卒業生の就職先は、日系企業のほか外資系、地場企業や政府機関など幅広い。日本研究学科の学生には日系企業も熱い視線を送っており、「ここ5~6年で日本語を話せる学生への人材紹介会社からの問い合わせが増えました」。

今後は授業内容をさらに拡充し、日本との交流プログラムを増やしたい考え。「日本を深く知ることは国際的な教養を身に付けることにつながる。世界で政治的・軍事的な緊張が高まる中、学生には異文化を学ぶことで固定概念にとらわれない人間に育ってほしい」と教え子の将来に期待を寄せる。

自身も学者として教壇に立ち、「日本の現代社会」などの講座を受け持つほか、アジアの高齢化と世代間交流、アジア太平洋地域に移住した日本人女性に関する研究にも取り組む。日本で講演する機会も多い。今後は日本の大学と共同で、シンガポールに20年以上住む日本人を調査するプロジェクトにも着手する計画だ。

日本研究学科は昨年、人文社会学部の新校舎に移転したばかり。同校舎内には、日本の作法などを教える畳の間を備えた新カルチャールームもあり、「一般向けに日本文化を紹介するイベントを多く開催していきたい」と目を輝かせるタンさん。学科長の任期期限の20年まで忙しい日々が続きそうだ。(シンガポール&ASEAN版編集・清水美雪)


関連国・地域: シンガポール日本
関連業種: 社会・事件

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