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【アジアで会う】ウマル・ハムダンさん デンキ・エンジニアリング社長 第188回 日本で学んだ仕事の姿勢、母国でも(インドネシア)

1976年西ジャワ州チルボン生まれ。高等専門学校(SMK)を卒業し、地元自動車メーカーに勤務、97~99年まで技能実習生として日本のメーカーで研修を受けた。帰国後、日本の電気設備会社で勤務したのち独立。2007年に電設会社「デンキ・エンジニアリング」を起業した。

デンキ・エンジニアリングのウマル社長(右)と、エンジニアで弟のサウディヤナさん(NNA撮影)

デンキ・エンジニアリングのウマル社長(右)と、エンジニアで弟のサウディヤナさん(NNA撮影)

「日本語でしゃべるのはあまり得意ではありません」と笑いながらも、流ちょうな日本語で話し始めた。首都ジャカルタから車で1時間半ほどの郊外にあるオフィスには、アルファベットで書かれた「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の「5Sの標語」が掲げられている。インドネシア人が経営する会社で見かけるのは珍しいと尋ねると、「礼儀については日本の研修で学びました。特に時間を守ることは大事。今でも昼のお祈りと昼食時間はきちんと定めています。日本のこうしたいい点をインドネシアで伝えたい」と話した。

■近所で知った「日本」

ウマルさんは小さい頃から7人きょうだいの長男として家族を支えた。朝早くに起きて父親が引くミー・アヤム(鶏肉麺)の屋台の仕入れから調理まで手伝ってきた。高等専門学校卒業後は自動車メーカーでエンジニアとして勤務した。しかし、もっと大きな仕事がしたいと考えるようになった。「エンジニアだとどんなに頑張ってもグループリーダーが精いっぱい。大家族の長男として、何とかお金を稼ぎたいと思っていました」と当時を振り返る。

ある時、同じ年頃の若者が、毎日外で体操をしたり整列したりしている施設を見つけた。中にいた若者に尋ねると、東南アジア諸国から技能実習生を受け入れている日本の「国際人材育成機構(アイム・ジャパン)」であると聞かされた。ウマルさんはその時初めて「日本」を意識した。「日本に行って、新しい技術、規則、考え方などを学ぶことができれば、帰国後、新しい仕事に就けるかもしれない。大学に行くより学べることが多いのではと考えました」。ウマルさんは早速行動を起こし、念願かなって研修生として採用された。1997年のことだった。

■通貨危機、そして起業へ

最初の3カ月はインドネシアの施設で基礎教育や礼儀、日本語などを学んだ。見ること、聞くこと、やること全てが初めてだったが、「必死になって身につけていこうとした」。その姿勢が評価され、日本での研修先が大手電気設備会社に決定した。

日本での研修期間は2年。1年目はひたすら日本語と技術について勉強し、2年目に入ると実際に作業現場で仕事を任されるようになった。それでも時間さえあれば技術のトレーニングを続けていった。「元々自動車のエンジニアだったので、電気・電設について学ぶのは初めてだった。時間さえあれば勉強していました」。

インドネシアに戻ってきたのは99年。折しもアジア通貨危機の余波が母国を直撃した直後だった。ウマルさんは当時インドネシアに進出していた研修先だった企業で働いていたが、その年に事務所の閉鎖が決定。会社の計らいで、別の同業の電気設備会社に「日本語ができるインドネシア人技術者」として採用された。

6年以上働き、仕事も身につき、人脈も構築できてきた。そろそろ会社を興すのに最適な時期ではないかと考え、少しずつ起業に向けた準備を進め、2007年に独立した。

■勝ち取った信頼

独立当初は小さい事務所だったので、「企業は発注しようと思ってもなかなか来づらかったようだった」と振り返る。しかし、どんな仕事でも受けたら手を抜かない姿勢が次第に信頼へとつながっていった。ある時、日本の大手ゼネコンが、インドネシアの大型インフラ計画に関する小さな電設業務を依頼した。別のインドネシアの会社にも同様の業務を依頼していることが分かった。「これは『自分たちの実力が試されているな』と思いました。この仕事を絶対に失敗なく、期限内に仕上げることが一番だと考え、自分も毎日現場に足を運んで、業務の進ちょくを確認しました」。努力が実り、依頼された業務は相手より早く終わり、しかもきちんとした仕上がりだったという。この大手ゼネコンからはさらに大きな仕事を複数受注した。

ウマルさんは「われわれの仕事は、契約書を交わすだけでなく、人と人との信頼関係で成り立っているところが大きい。そのためには時間や期限を守り、小さな仕事でも手を抜かないこと。これが何より大切だと日本で学びました」と強調する。同じように日本で研修を受けた弟たちもエンジニアとして勤務し、ファミリービジネスのさらなる拡大を目指す。(インドネシア版編集・六角耕治)


関連国・地域: インドネシア日本
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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