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【アジアで会う】牧島 亮男さん マレーシア日本国際工科院副院長 第186回 日本式工学教育を根付かせる(マレーシア)

まきしま・あきお 1940年茨城県生まれ。東京大学・大学院工学系研究科名誉教授、北陸先端科学技術大学院大学名誉教授・プレジデンシャルアドバイザー。専門は無機工業化学・無機材料工学。マレーシア工科大学(UTM)マレーシア日本国際工科院(MJIIT)発足当時からカリキュラムの策定などに関わり、2016年11月から現職。マレーシアと日本を往復する多忙な生活を送っている。

マレーシアとの縁が始まったのは、茨城県つくば市の無機材質研究所研究員だった約30年前。国際協力機構(JICA)の短期専門家として、「日本・ASEAN科学技術協力」というプロジェクトに参画した。「米国に数年滞在した経験もあり、英語ができたので選ばれたのではないか」と当時を振り返る。

1980年代のマレーシアは、マハティール首相(当時)が掲げるルック・イースト(東方政策)の下、先進国入りを目指して躍進し始めた若い国だった。

スランゴール州のマレーシア工業標準化機構(SIRIM)研究所には当時、東南アジア諸国連合(ASEAN)各地から若き研究者が派遣されていた。これからの祖国を担っていく人材にJICAが納入した装置の使い方を指導したり、共同研究を行ったりした。

当時、マハティール氏もたびたび研究所を訪れたという。首相自身の発案で、電子レンジの扉に使われる耐熱ガラスを開発する、通称「マハティール・プロジェクト」に取り組んだことがある。

ただ、当時は日本でも研究を続ける身。無機材質研究所から東大に籍を移すとますます多忙になったが、5年にわたるプロジェクトを勤め上げた。

■MJIIT発足から10年

2010年のMJIIT開校で、再びマレーシアとの縁がつながった。

MJIITとは、「マレーシアに、日本式の工学教育機関を設立する」という構想が生まれた約10年前から関わり、16年にはマレーシアに赴任して副院長就任の運びとなった。ただし、日本や他国でもさまざまなプロジェクト、委員会に参画していることから、1カ月のうち約20日間をマレーシア、10日間を日本で過ごすという多忙な日々を送っている。

余暇を楽しむこともままならないが、クアラルンプール郊外のマレーシア森林研究所(FRIM)は2度訪問した。専門知識を備えたガイドとともに山歩きを楽しめる人気のスポットで、樹齢90年の人工熱帯雨林に心動かされたという。

■キーワードは「産学連携」

これまでの研究者・教育者としての経験から、人を育てるために最も大切なことは「どういう教育を行ったか」であると考えているという。どんなに高価な最新装置でも、耐用年数を過ぎれば古くなってしまう。人もまた、転職や定年で入れ替わってしまう。ただ、その地に根付いた教育は、世代を超えて受け継がれていく。

現在、MJIITは日本政府とマレーシア政府の共同プロジェクトとして運営しているが、5年後には独り立ちしなければならない。

今後のキーワードとなるのは「産学連携」だ。マレーシア政府から国立大学への補助金が削減される中、欧米の大学のように自ら研究費を集める必要が出ている。しかし、提携先を見つけるのも容易ではない。当地に進出する日系は製品製造と低コスト化が主で、研究開発(R&D)拠点を構える企業は少ないからだ。

今後、研究が期待されるテーマは、第4次産業革命(インダストリー4.0)を実現するロボットとAI(人工知能)、水害や地滑りといった自然災害を防ぐ防災マネジメントなど。特にロボットと防災は日系への期待が高い分野だ。マレーシア政府は、主力産業であるパーム油生産の効率化を目指し、日系企業を巻き込んだパーム果房収穫ロボットの開発を期待しているという。(マレーシア版編集・降旗愛子)


関連国・地域: マレーシア
関連業種: 社会・事件

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