【アジアで会う】勝恵美さん モア・プロダクション・ベトナム代表 第184回 日本の絵本を子どもたちに(ベトナム)

かつ・めぐみ 岐阜県瑞浪市出身。東京の大学を卒業後、名古屋のテレビコマーシャル(CM)制作会社に就職。2年間勤めた後、写真の専門学校に入学した。作品づくりのために訪れたベトナムに魅了され、2002年にハノイに転居。フリーペーパーの制作会社を経て、13年に独立した。月1回、写真愛好家を集めて、ハノイ近郊で撮影会を開催。現地のツアーガイドも知らない”フォトジェニック”な場所を探し出すのが楽しみ。

パソコンに向かうローカルスタッフにベトナム語でてきぱきと指示を出す。13年にハノイで立ち上げたモア・プロダクション・ベトナムは、日本人とベトナム人の社員18人を抱え、ベトナム航空の日本語版機内誌「ヘリテイジジャパン」や日本を紹介するベトナム人向けのフリーペーパーの制作のほか、広告代理店事業、イベント運営などを手掛ける。ハノイ市旧市街でカフェ「安南パーラー」も運営する。

■初のベトナム旅行はトラブル続き

写真家の故星野道夫氏に憧れ、20歳のときにアラスカにオーロラを撮影しに行ったのを皮切りに、時間を見つけてはカメラ片手に一人旅に出るようになった。初めてベトナムを訪れたのは、今から18年前。10日間かけて北部ハノイから南部ホーチミン市まで鉄道とバスで縦断した。

「空港に着くなり知らない車に誘導されるは、両替所でだまされるは、大切なカメラを盗まれるは、病気になるは、トラブル続きの旅でした」。一部の心無いベトナム人により嫌な思いをしたが、困ったときに救いの手を差し伸べてくれたのも、またベトナム人だった。「とても人間くさい国で、そのパワーに圧倒されました」と当時を振り返る。

それから2年後の02年、写真の専門学校の2年生になったと同時に、作品づくりのために休学して再びハノイを訪れた。半年の滞在予定だったが、縁あって日本語の無料月刊誌(フリーペーパー)の制作・発行を手掛ける日系企業に就職。営業、取材、編集のすべてを任され、あっという間に10年が過ぎた。「半年の滞在予定が、そのまま長期的に住むことになるとは思ってもいませんでした」と笑う。

■皇后さまと面会

「好きなことを仕事にしたい」という強い思いを胸に独立を決意し、親友であるレ・ティ・トゥ・ヒエン氏と13年7月にモア・プロダクション・ベトナムを設立した。事業を展開する傍ら、日本の絵本に感銘を受けたヒエン氏の提案により、14年から社会貢献活動の一環として読み聞かせを実施。昨年3月には、天皇陛下と共に初めてベトナムを訪問された、絵本の普及に注力されている皇后さまと在ベトナム日本大使館主催のレセプションで面会した。

これを機に読み聞かせについて広く知られるようになり、日本とベトナムの企業から支援の申し出があった。とんとん拍子に話が進み、同年6月末に日本の絵本3冊をベトナム語に翻訳し、発行した。

「『じゃぶーん』『ぷくぷく』『ごろん』など日本語独特の擬音語・擬態語を翻訳するのが難しい。ベトナムの子どもたちが読んでも楽しめるよう、社員全員でアイデアを出し合って翻訳しています」。特殊な日本語フォントは独自にベトナム語フォントにデザインし直し、手書き文字の部分はベトナムの小学生による手書き文字を使用するなどの工夫も凝らす。

絵本の普及を目的としているため、1冊2万5,000ドン(1.1米ドル、約125円)と手頃な価格に設定。発行部数の1割を苦しい学習環境にある子どもたちに寄贈するほか、小売店や書店を通じて販売する。福利厚生の一環として従業員に配布するために購入する日系企業も増えており、個人で購入して幼稚園などに寄贈する在留邦人もいるという。

■22年までに100作品の発行目指す

絵本事業の始動から半年がたち、これまでに9作品を翻訳・発行した。22年までに100作品の翻訳・発行を目指す。今後は、ベトナムの地場企業や母親たちへの普及にも注力し、ベトナム人絵本作家の育成も支援していく計画だ。

もともとヒエン氏の夢だった絵本事業は実現した。「会社を立ち上げてから、ずっと自分のやりたいことをさせてもらってきました。これからは、社員一人一人の夢を支援し、その夢を実現できる会社にしていきたいです」。

ハノイで暮らし始めて16年。ベトナムで多くの人たちに出会い、チャンスを与えてもらい、大きく成長できた。「私は本当に幸せ者。今度は、これまで支えてきてくれた社員や現地の人たち、ベトナム社会に恩返ししていく番です」――。そう語り、笑顔を見せた。(ベトナム版編集・本田香織)


関連国・地域: ベトナム日本
関連業種: マスコミ・出版・広告

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