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コスト減へ金型製作、甲陵樹脂の比法人

樹脂の成型加工・販売や金型の設計・製作・販売などを手掛ける甲陵樹脂(本社・東京都大田区)の唯一の海外生産拠点となっている甲陵スービック(Koryo Subic、本社工場・スービック湾自由港)が、先月から金型の自社製作に着手している。年内には本格稼働させたい考え。従来は親会社の日本工場に依頼していた金型製作をフィリピンで行うことにより、コストの削減と効率化を狙う戦略だ。

甲陵樹脂の100%出資で1996年に設立された甲陵スービックは現在、カメラ、DVDビデオカメラの部品加工を中心に、化粧品部品などの加工も手掛けている。鈴木信一工場長の話では、製品のシェアはカメラ部品が約50%、化粧品部品が約20%、残りがDVDビデオカメラ部品などとなっている。販売先シェアは中国が約70%で日本が約30%。ただ、化粧品部品はほとんど日本向けという。

フィリピンでの金型製作実施に踏み切った最大の要因はコストだ。従来は、フィリピンでは金型について初歩的な加工や手直しは手掛けていたものの、製作は基本的に甲陵樹脂の日本工場に発注し、フィリピンに「輸入」していた。大きさや形状にもよるが、この方式ではコストが金型1個当たりだいたい100万円以上かかるという。甲陵スービック自身で金型製作を行えば、このコストを圧縮できるとの判断から、今年7月に機械の搬入を始め、翌8月の半ばから金型製作の「試運転」に入った。

鈴木工場長の説明では、フィリピンで金型が製作できるようになれば、コストの30~40%が削減できる見込み。しかも効果はコスト面にとどまらないという。金型製作を日本の工場に依存している状態では、金型に不具合などが生じた際もフィリピンでは対処できないため、日本で手直し・修理をしなければならない。それによってコストのほか、相当な時間のロスも不可避となる。フィリピンで金型を製作する体制が確立できれば、金型に問題が生じても現地対応が可能になり、時間のロスも大幅に削減できるというわけだ。

日本の「ものづくり」の重要な柱であり、「メード・イン・ジャパン」の工業製品が誇る高品質を支えてきた金型の製作は、言うまでもなく極めて高度な精度が要求される。鈴木工場長によれば、甲陵スービックが手掛けるカメラ部品などの場合、求められる公差は1,000分の5未満。それ以上は「アウト」だ。「フィリピンでこの公差水準が実現できるかどうかがカギ」と、同工場長は話す。

■「構想力など長所」

現在、金型製作を学んでいるフィリピン人従業員は4人。「少数精鋭」の原則に基づき、優秀な工員を選抜した。日本から出張中の技術者1人が指導に当たっている。関門だった複雑な形状の金型も、クリアできる見通しになってきたと鈴木工場長は話した。

鈴木工場長は、金型製作の面で長所になるフィリピン人従業員の特長として、◇アイデアの豊富さ・構想の早さ◇手先の器用さ◇中途半端で投げ出さない点――を挙げた。「設計は3~4日でしてくるし、ある程度の基礎があれば色々なものが作れるのではないか」と語る。その一方で、金型製作に当たるフィリピン人従業員の課題は、「構想したものを、どうしたら作れるかを考える力」と説明した。

■「自分たちで解決せよ」

金型製作を習得したフィリピン人従業員が次は指導員となり、他のフィリピン人従業員にその技術を移転していく体制を確立することを、甲陵スービックは目指している。

「問題は自分たちで解決する」という姿勢を植えつけるため、4人には全員が金型製作に関する全ての機械を使いこなせるように指導しているという。機械の整備や問題発生時の原因究明と対処も、機械メーカーのメンテナンスサービスに頼らず、極力従業員にやらせる体制。こうした体制を組むことで、例えば機械の故障時に、従業員自らがその原因を学ぶことができ、再発防止の上でも効果が高いというわけだ。

品質向上は当然の前提とした上で、「中国とのコスト競争を強いられる以上、いかにコストを下げるかがこれからの課題」と鈴木工場長。そのコスト削減策として金型自社製作プロジェクトを進める甲陵スービックの取り組みは、競争環境が厳しくなる中、生き残りを賭けて努力する海外日系メーカーの象徴的な姿のひとつといえそうだ。【安部田和宏】


関連国・地域: 中国フィリピン日本
関連業種: 電機鉄鋼・金属その他製造IT・通信天然資源小売り・卸売りマクロ・統計・その他経済雇用・労務

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