北京
コラム
北京には魅力的な窓辺が少ないと思う。色とりどりの洗濯物がぶら下がる南方の窓。鉢植えの赤・黄・緑が美しい西洋の窓。家主にぴっかぴっかに磨かれた日本の窓――。世に興味引かれる窓は数あれど、ここではとんと印象にない。
手前味噌だが、我が家の窓はなかなか目見美しい姿をしている。引っ越し当初は植物を並べて自己満足に浸っていたが、春が来るとそんな手間をかける気なんてきれいさっぱり消え去った。カーテンを開けておくと黄砂が侵入して拭いても埒が明かん。夏は陽射しが……、冬は冷気が……と、結局カーテンを引たままで1年過ごした。
今年もまた黄砂の季節。北京の窓は砂ぼこりにまみれて口を閉ざす。我が家の窓も、来客がある数時間だけ姿を現し、花を飾られ、またすぐ封印される運命なのである。(豆)