タイなどでフィンテック事業を展開するOPN(オープン、東京都中央区)が、東南アジア事業を拡大する。今月上旬には、日本政府系のベンチャーキャピタルなどから1億2,000万米ドル(約155億円)の事業資金を調達。オンライン決済事業や、金融サービスとブロックチェーン(分散型台帳)技術を横断した事業拡大を計画している。すでに事業を展開しているタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアに加え、1~2年以内にベトナムおよびフィリピンにも進出する方針だ。
OPNは今月10日、「シリーズC+ラウンド」と呼ばれる経営が安定化したスタートアップ企業向けの資金調達段階で、1億2,000万米ドルを調達した。日本政府系のベンチャーキャピタルであるJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、三菱UFJ銀行、同行の合弁会社マーズ・グロース・キャピタルが参加している。ロイター通信は、OPNが日本では数少ないユニコーン企業(企業価値が高い新興企業)の1社になったと報じた。
OPNの共同創業者の長谷川潤最高経営責任者(CEO)は、NNAに対し「今回の資金調達によって、シームレスな決済ソリューションの開発をさらに加速させるとともに、主要市場である東南アジア、日本、その他の地域での新たな事業展開が可能となる」と説明した。
OPNは、これまで持ち株会社「SYNQA(シンカ)」の下、デジタルトランスフォーメンション(DX)やフィンテック(ITを活用した金融サービス)ソリューションを提供するOPN、決済インフラを展開する「Omise(オミセ)」の2つの事業会社を展開してきた。事業拡大に向けた新たな事業資金を調達したタイミングで、事業ブランドをOPNに統一した。
長谷川氏はリブランディングの狙いについて、「社員数が500人を超え、グローバル化も進んでいる。『すべての人々にデジタルエコノミーへのアクセスを』というわれわれの使命を、社内外に共通認識として浸透させていく上で、シームレスでボーダーレスな決済体験を提供することを意味する『OPN』へのリブランディングがふさわしいと判断した」と説明した。
タイでは2013年に決済サービスを開始。これまでに素材最大手サイアム・セメント(SCG)、携帯通信最大手アドバンスト・インフォ・サービス(AIS)、タイ国際航空といったタイを代表する企業7,000社以上が同社の決済サービスを導入している。
今年4月には、新たに飲食店やホテル向けに「OPN Tag(オープン・タグ)」のサービスを開始した。同サービスは、バーコードとタッチ決済用のマークを記載したタグを飲食店などの各テーブルに設置。タグにスマートフォンをかざすことで、ウェブ上のメニューから注文し、支払いも済ませることができる。料理の宅配にも対応する。利用者の利便性が高まるほか、導入企業にとっては顧客のデータ分析が可能になるメリットもある。タイではこれまでに50社ほどが導入。デジタルカタログ、広告、クーポン展開といった販促活動にも活用できることから、外食・ホテル以外でもさまざまな業種への展開を視野に入れる。OPN Tagについては、タイに続いて日本でのサービス開始を予定。タイ以外の東南アジア市場にも広めていく方針だ。
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