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【アジアで会う】松原寿美さん インド発SaaS日本法人代表 第392回 社会を個人が変えていける(インド)

まつばら・ひさみ 1991年生まれ。岐阜県出身、インド北部パンジャブ州アムリトサル在住。南山大学短期大学部英語科卒。2019年に離婚を機に渡印しアムリトサル発の新興SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)企業ステータスブリューに就職。21年に日本法人の代表取締役に就任。趣味はワイン。

(本人提供)

(本人提供)

インドのスタートアップの求人を見た瞬間、「これだ」と思った――。日本での事業に関して最初から全ての裁量権を持てることが魅力的だった。インドでの就労を望んだわけではないが、敬遠する気持ちもなかった。ちょうど離婚を考えていた折。「日本を出ればいいんだ」と気づいた。

ステータスブリューは、ソーシャルメディア(SNS)のマーケティングツールを開発・販売する会社。兄弟で経営しており、弟のトゥシャール・マハジャン最高経営責任者(CEO)が大学在学中に開発したアプリが、現在の製品の基になっている。最高執行責任者(COO)を務める兄のリシャブ・マハジャン氏はインド工科大(IIT)出身。日本の大手IT企業に勤めた経歴の持ち主で、日本にSNSマーケティングの市場があることも理解していた。

入社当初の雇用条件は、過酷だ。最初の1年半は給料がほぼなかったが、目先の給料は気にならなかった。衣食住は保証してもらえたし、最終的にがっぽり稼げるなら問題ないという思いだった。「好きな四字熟語は、一獲千金なんです」と笑う。

入社前の渡航準備期間から働き始め、日本初案件を獲得した後に渡航。インドでは常に仕事に全力を傾けてきた。入社後すぐに新型コロナウイルスが流行し、外出できない時期もあったが、「仕事に打ち込めて逆にラッキー」だと思ったほどだ。

社内での発言権は、日本事業が大きくなるごとに増していった。経営陣の日本に対する思い入れや熱意、大きな裁量権を与える度量も助けになったと振り返る。

■会社の成長を体感できる

手がける製品や会社自体が成長していく過程を、肌で感じられるのがスタートアップで働く醍醐味だ。会社が大きくなる経験は、大会社ではなかなか経験できない。会社を経営して、お金をたくさん稼ぐことは、10代の頃に決めた目標だった。

自社と同じようなマーケティングツールの製品は「腐るほどある」。それでも、小規模なスタートアップの製品が、いまでは米国の大企業が手掛ける同様の製品と比較検討してもらえるようになるまで成長した。主力は企業向けで、決して安くはないが、日本では80社以上と契約している。

開発部門との距離が近ければ近いほど、製品の改善はやりやすいため、これまでは本社のあるアムリトサルで仕事をしてきた。今年は日本での採用活動や会社の体制づくりのため、1年の半分は日本で仕事をすることを目指している。会社の規模は現在の3倍か4倍は必要との考え。ベンチャーキャピタルからの資金調達も見据えている。

■雇用の課題を解決したい

ステータスブリュー本社の作業風景(本人提供)

ステータスブリュー本社の作業風景(本人提供)

多数の日本人が暮らすインドでも、現地のスタートアップで働く人は珍しい。「私の目から見るインドは、個人である国民が政治以外の手段でこの世の中を変えていける手段をたくさん持っている。その1つの現れがスタートアップの増加だと思う」。社会を個人が変えていけるのがインドの一番好きなところで、刺激を求める人にはおすすめの環境だ。

代表に就任した日本法人も、社会に直接働きかけることのできる会社にしたいと考えている。1番の目標は、世界的なSaaS企業を日本に引っ張ってくることで、日本が抱える雇用の課題を自分の会社から解決すること。

日本の優秀な人に、「日本の平均年収は400万円以下で報われない」と思ってほしくないし、国内外の企業から「日本人だから安く雇える」と思ってほしくない。日本法人で新たな人材を迎え入れる際は、どこにも負けない条件を提示して日本の常識を覆すつもりだ。(インド版編集・榎田真奈)


関連国・地域: インド
関連業種: 社会・事件

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