香港の政府高官や立法会(議会)議員らが多数出席した宴会の出席者から新型コロナウイルスの感染者が出た事件は、一時は高官13人と議員20人が隔離される事態に発展した。政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は7日、出席した高官に規律違反がなかったか調査するよう関係当局者に指示したと発表。高官らは次々と謝罪に追い込まれている。
問題となっている宴会は今月3日に開かれた。中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の香港地区代表の1人、洪為民(ウィットマン・ホン)氏の53歳の誕生日を祝うパーティーで、香港島・湾仔のレストランで開催。洪氏は中国広東省深セン市の「前海深セン・香港現代サービス業協力区(前海深港現代服務業合作区)」で香港との調整を担う前海管理局香港事務首席連絡官も務めており、宴会の出席者は高官や立法会議員らを含め180人を超えた。
年明けに急拡大しているコロナのクラスター(感染者集団)に関連し、6日と7日に出席者のうち2人に陽性反応が出たことが判明。高官13人と議員20人を含む出席者全員が一時は大嶼山(ランタオ島)の竹コウ湾(ペニーズベイ、コウ=たけかんむりに高)にある検疫センターに隔離された。
出席していた高官は、徐英偉(キャスパー・チュイ)民政事務局長、許正宇(クリストファー・ホイ)金融サービス・財務局長、区嘉宏・入境事務処長(入境管理局長)、白オン六(サイモン・ペー、オン=韋に温のつくり)汚職取締署(ICAC、廉政公署)コミッショナー、香港警察トップの蕭沢頤(レイモンド・シウ)警務処長ら。
6日の時点で徐氏ら一部のパーティー出席者が濃厚接触者として隔離された。その後7日になって、初期検査で2人目のコロナの陽性反応が確認されたことをきっかけに、隔離は出席者全員に拡大した。
しかし8日、2人目の陽性反応はコロナワクチンによるもので、感染ではなかったことが判明。一方、6日に感染が確認された出席者は宴会当日の午後9時半以降に会場に到着していたため、この時間前に会場を離れた出席者は隔離措置が解除となった。
■火消しに追われる政府
事件が発覚した6日は、香港政府がコロナ感染拡大防止を目的に7日からの飲食店の夜間店内飲食禁止を発表した翌日という、いわば最悪のタイミングだった。政府は火消しに追われている。
林鄭氏は事件が発覚した6日の臨時会見で、民政事務局長の徐氏を名指しする形で事実関係を認めた。続いて7日には隔離対象となった高官の臨時代行人事などを発表。併せて陳国基(エリック・チャン)行政長官弁公室主任と聶徳権(パトリック・ニップ)公務員事務局長に対し、問題の宴会に出席した高官に規律違反がなかったかどうか、詳細に調査するよう命じたと明らかにした。徐氏ら宴会に出席した高官も、続々と謝罪の声明を発表している。
林鄭氏は3月に行われる次期行政長官選挙に再選を目指して出馬するか否かをまだ明らかにしていないが、9日付明報によると、香港中文大学社会科学部政治行政学科の蔡子強(アイバン・チョイ)上級講師は、政府が事件を果断に処理できるかが鍵だと指摘。仮に処理を間違えば、行政長官選に影響しないとは言えないとの見方を示した。
また中国本土の香港・マカオ関連シンクタンク、全国香港・マカオ研究会の劉兆佳副会長は、中国中央が今回の事件にきっと失望しているだろうとした上で、事件は香港政府と立法会の名誉を傷付けたと批判。政府に対し、厳しい処理と市民への謝罪を求めた。
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