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遠のく本土との往来正常化 「回港易」縮小、検疫強化案も

香港で事業展開する企業にとって最大の懸案となっている中国本土との往来正常化が、当面は実現を見込めそうにない状況となってきた。本土で新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、香港政府は5日から、香港身分証(IDカード)保有者が本土からの帰港時に強制検疫(隔離)を免除される「回港易(リターン2hk)」スキームの適用対象を大幅に縮小。専門家からは、本土からの来港者に対する隔離措置を一段と厳格化すべきとの声も上がっている。

香港政府は4日夜、広東省を除く本土全域からの入境者に対し、5日から回港易の適用を停止すると発表した。本土では4日だけで江蘇、湖南、湖北、山東、雲南、河南、福建の各省で計71人の国内症例(本土での感染)を確認。香港政府はこれまで、感染リスクが特に高いとみられる地域を、主に省や市の下に位置する行政区分である区などの単位に絞って回港易の適用対象から外す運用を行ってきたが、全国的な感染拡大を踏まえて広東以外からの入境者は一律で回港易を使えないようにした。

今後、回港易を利用できるのは、香港到着の前14日以内に広東以外の本土地域を訪れていない人に限られる。新規定が発効した5日よりも前に同スキームの利用登録を済ませていた人であっても、5日以降に帰港する場合はスキームを利用できない。

回港易を利用できずに帰港した場合は、到着後に14日間の在宅隔離を受けることが必須となる。ワクチン接種者には隔離期間を7日間に短縮する優遇措置の適用も停止となる。

■広東は例外、政治的配慮も

インターネットメディアの香港01によると、親中派政党の民主建港協進聯盟(民建聯)に所属する陳恒ヒン(ベン・チャン、ヒン=かねへんに賓)立法会(議会)議員は、本土全域に対して回港易を停止する一方で広東だけは例外とした政府の判断を「合理的だ」と評価した。

陳氏は、今回の感染拡大で広東からは感染者が出ていないことを指摘。「本土ビジネスに携わる人への影響は大きいが、政府は公共の利益を踏まえて動く必要がある」と理解を示し、本土の状況が好転した際には直ちに回港易を再開するよう政府に求めた。

穏健親中派の実政円卓(ラウンドテーブル)代表を務め、実業家でもある田北辰(マイケル・ティエン)立法会議員も「受け入れられる判断だ」との立場。「感染対策だけを考えるなら広東に対しても回港易を停止すべきだろうが、香港と広東は関係が密接であり、広東はコロナワクチンの接種率も高い」と政府が今回の判断に至った背景を推察した。

5日付香港経済日報は分析記事の中で、政府の判断を「賢明」と評価する親中派の見方を紹介。政府は5月下旬、広東省広州市で感染者が確認されたことを受け、いったんは同省全体を回港易の適用対象から外したところ大混乱を招き、撤回に追い込まれた苦い経験があり、その教訓から、影響の大きい広東を例外扱いにしたとみられるという。広東以外を一律で対象外としたことは、地域間の不公平感を生じさせない「政治的に見て賢明なやり方」だとしている。

■専門家「在宅隔離の見直しを」

本土から香港への入境者に対しては回港易だけでなく、通常は指定ホテルに滞在しなければならない隔離措置を在宅でも受けられるという優遇がある。5日付明報によると、政府のコロナ対策における専門家顧問団の一人、香港中文大学の許樹昌(デビッド・ホイ)教授(呼吸器学科)は「感染が拡大している省や市からの入境者に対しては、在宅ではなくホテルでの隔離を義務付けるべきだ」との認識を示した。

香港政府は4日からマカオに対しても回港易の適用を停止しており、市民や経済界からの要望が多く、政府も早期の実現を目指してきた本土、マカオとの「隔離なしでの往来再開」はここにきて大きく後退を余儀なくされた。香港01によると、田議員は「本土で感染が抑制されている時期には香港で感染が広がり、香港の感染が落ち着いたら本土、マカオで感染が起きた」と嘆いた。

香港政府の計画では当初、香港身分証を持たない本土の人にも入境時の隔離を免除する新スキーム「来港易」を5月中に始めるとしていたが、ちょうどこの時期に広東で感染者が出たため実施を延期。政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は先月、本土との往来再開に向けて中央政府(国務院)から求められていた「報告」を提出したことを明らかにし、実現が近いことを示唆していたが、またも仕切り直しとなった。

香港経済日報は4日付の分析記事で「往来正常化は当面見込めない」と指摘。「本土側は出入境を緩和できる状態では全くなくなっており、香港も水際対策を強化せざるを得ない」とする消息筋の見方を紹介した。

日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所などが先月26日発表した調査結果によると、香港に拠点を構える日系企業の75.5%が、香港・本土間の出入境制限を今後の業務遂行に当たっての課題と認識している。


関連国・地域: 中国香港マカオ日本
関連業種: 医療・医薬品マクロ・統計・その他経済政治社会・事件

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