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【NNA特集】コロナ下の企業マネジメント (下) NNA業界座談会第5弾

(7月6日付からの続き・敬称略)

■連邦・州政府への要望

【日本製紙・野津】補助金もそうですが、公的な規制緩和もやってもらわないと、と思います。現在、埋め立て処理されている家庭ごみなどを回収して、それを弊社の工場で燃やして発電するプロジェクトを検討しています。埋め立てから発生するメタンを減らして炭素ガスを抑制というメリットもあります。

しかし、各地区の自治体は目先の処理コストの安い埋め立てを選んでしまう。プラス効果を生み出すプロジェクトなのに、将来の埋め立て処理税の方向性が見えないとなかなか自治体も方向修正が難しいと思います。我々もごみの契約が取れないと事業化できません。

INPEX・大川氏「地元スタッフのプロ意識を育てたい」

INPEX・大川氏「地元スタッフのプロ意識を育てたい」

先の補助金もそうですし、埋め立て処理税を適正水準に引き上げるとか、燃焼してできた灰を道路整備にも使っていいとか、うまく機能する規制緩和を、連邦と州が協力して整備してほしいと思います。

【INPEX・大川】連邦政府と州政府、このつながりの弱さは痛感します。一体感がないのです。西オーストラリア(WA)州はもともと独立を考えているような州ですから、常に連邦政府に対して強い立場で臨んでいます。ですから、連邦政府の大臣やWA州首相、それぞれと話をしてもかみ合わないのです。

【丸紅・小林】エネルギー政策はもちろん、せめて新型コロナの州間ルールだけでも統一してくれたらいいのですが(苦笑)。

【タダノ・楠本】そうですよね。弊社の社員も、大型クレーンを顧客に納車するために各州から多くの社員を融通して納車するのですが、コロナ禍で習慣になったのが、各州のコロナの感染者数を朝まず見て、何か起こってないか、その週に誰がどこに出張しているかを見ることです。その朝に帰任の判断をしたり、出張に行かせない判断をするためです。

【大川】先日、パースからキャンベラに行く際に、メルボルン空港を経由しました。マスク着用で、わずか2時間のトランジットです。なのにパースに帰ってくると、WA州警察からテキストが来て、48時間以内にPCR検査を受けて陰性にならない限り自宅待機だと。メルボルンに滞在していた人と、2時間のトランジット、みな同じ扱いですよ? もう本当に厳しいですよ。

【マキタ・芹川】ニュージーランド(NZ)では連邦と州がないので、基本的にルールは同じです。州境で違うルールや手続きで困ることはありませんでした。

■マネジメントの変化

【進行役・西原】皆さん、コロナ以前と比べ、従業員のマネジメント面で変わったことはありますか?

【小林】一番決定的なのはやはり、在宅でもできるポーションの仕事があることが分かってしまった、ということでしょう。私のような古い人間からすると、営業管理や労務管理ができるのかという不安はあるのは確かですが、一定の権利は与えざるを得ないだろうと思っています。まだ最終決定ではないですが、弊社の場合3分の1の在宅を認める方向です。

東京本社の役員会も、アジェンダがしっかりしている場合は、わざわざ東京に出張しなくてもいいし、国際会議もできてしまう。おそらく、出張回数も激減するような気もします。

【西原】在宅勤務のパフォーマンス管理基準のようなものはありますか?

丸紅・小林氏「在宅勤務は営業に不安はあるが権利は与える」

丸紅・小林氏「在宅勤務は営業に不安はあるが権利は与える」

【小林】PCと連結しているので、その気になれば管理者は従業員が何時間PCを見ていたというのは分かりますが、実際は管理できないですよね。犬の散歩行っても分からないでしょうし。弊社も古い会社なので100%会社に来ること前提に労働契約ができていますが、チャイルドケアやベビーシッターのコストを認めてくれという要望もあり、悩んでいるところです。

【野津】在宅でも仕事はできるという一方で、やはり直接会うことが重要なんだということを痛感したところもあります。コロナ初期はリモートでチームス会議などをやり始めたのですが、それがずっと続くとやはり直接会って話して、分かり合って進めるプロセスが人間にとって大事だということを再認識しました。

ただしオフィスに戻るようになったら、弊社でも月と金の出勤率が圧倒的に低い傾向があることが分かりました。週末を挟んで在宅勤務を希望する人が多いようです。一方、人事サイドからは働き方改革による在宅勤務を新制度として早く整えたいという要望が来ます。今回の買収で本社を統合して一つにするので、フロア面積を削減する他、フリーアドレスのデスクを増やすなどでよりフレキシブルな体制にしようと考えています。このフレキシブルな体制とは、会社と社員でウィンウィンでやりましょうということです。通勤も減り、無駄なお金を払わずに自分で子供の面倒をみられるメリットもあるし、それで生産性が上がるならいい。ただ、パフォーマンスの担保がしっかりできる形を作らないと、とは思います。

【大川】弊社も在宅勤務への移行は比較的スムーズにいきました。東京本社や役員クラスは、会社に来ることを奨励するのですが、若い人たちの話を聞くと、在宅でチームスを使えば合理的じゃないかと言われます。そこで、会社のPCを貸し出したり、環境整備のために1人300豪ドル(約2万5,227円)の手当てを出したりもしました。

しかしそれでも問題になるのは、メンタルヘルスでした。共働きの夫婦間でトラブルになったり、家にいて孤独感が強まったり、「早く会社に戻してほしい」と言われていたのに、うつ病になって戻ってこなかったり。これは結構大変で、専門カウンセラーを会社が雇って対処しました。マネジメントに対して、そうした人がいた場合には、細かくコミュニケーションをとるよう指示しました。

【芹川】会社で専門的なカウンセラーを雇ったから何か困ったら連絡してくださいと、従業員に周知徹底するわけですね?

【大川】そうです。ただ、皆が知らないからそういうサービスを利用できなかったという事実もありました。内部でコミュニケーションを徹底することも非常に重要です。

■ワクチンをどうする?

【西原】ところで、ワクチンは会社で推奨していますか?

【大川】現場はやはり全員に接種してほしいですが、法的に強要することはできないので、勧めることしかできないのが現状です。10月にファイザー製が適用可能になるのでそれを待っている人が多いせいか、なかなかワクチン接種が進まない状況です。我々のマネジメントチームはほぼ全員接種しています。

【芹川】ワクチンを打つ際に、病欠や有休を使わなくていいという特別制度は設けていますか?

【楠本】50歳以上の直属の部下がいますが、彼が接種したら頭がぼうっとして体が痛くて帰ると言っていました。さまざまなケースを聞いてから決めたいですね。

【芹川】人事部などから、在宅勤務について従業員の強い要望が来るという話がありましたが、オーストラリア人はどういうことをこの状況下で求めているのでしょうか。

日本製紙・野津氏「直接会うことの重要性を痛感した」

日本製紙・野津氏「直接会うことの重要性を痛感した」

【野津】コロナ禍においても場所を問わず職責を全うしているから、わざわざ通勤しなくてもいいですよね、といったことですね。ただし、事実としては現在月金の出社が少なく、偏りがある状況です。土日に在宅勤務日をつなげたいという意向が傾向としてあるのかもしれませんが、この辺りのマネジメントをきっちり決めておきたいところです。

【大川】弊社も、そうした要求を受ける代わりに、KPI(重要業績指標)を設定し、結果が出なければ成績や給料に響く、場合によっては人員削減の対象になるということを言っています。ですから今後1~2年にどう結実するのか、楽しみでもありますね。

【野津】それはある程度シニア層対象ですか?

【大川】全従業員対象です。シニアの場合、ボーナスに直結する割合が大きくなります。自分のパフォーマンスだけではなく、その組織のパフォーマンスをしっかり管理できなければ、影響は給料にすぐ出てきます。これは日本のシステムと比べて非常に分かりやすく、パフォーマンス・マネジメントならこちらの方がやりやすい、と本社にも言っています。結果が全てですので。

【野津】会社としてのメッセージを伝えているのですね。シニア層は自分の部下も含めて管理して結果を出させる。マネジャー層に関しては結果を出しなさい、と。

【楠本】弊社でも、マネジメント層にKPIを設定しています。プレッシャーもある程度与えながら、信頼して任せることが重要になってくると思うので、そういうメッセージを伝え続けていますね。フレキシブルな働き方もある程度許容して、あなたにそういう働き方を許可しているのは信用しているからだ、と。メンタルヘルスも重要だと痛感していますので、電話でもZoom(ズーム)でも、顔を見ながらできる限りコミュニケーションをとるようにしています。ズームランチなども何度かしましたね。

在宅勤務も、直属の上司が認める限り許可しています。弊社はワーキングマザーが多く、自宅で働いて子供の面倒をみないといけないので、従業員もありがたく感じてくれているようです。彼らの生産性は私が見る限りは上がっていますね。

【芹川】NZではロックダウンになればもう100%在宅勤務でやっていました。解除されると弊社では何も言わなくても全員が戻っていました。なので、オフィスに行かなくてもいいのではないかと主張する従業員は弊社ではいませんでしたので、マネジメントは非常にやりやすかったですね。

パフォーマンスに関しては、売り上げでは四半期、半期ベースで見ているのですが、自社の倉庫と顧客係、財務も社内でやっているので、家からでも電話対応できますし、自宅で受注登録もできますので、マネジャーがその日に誰が何件在宅で電話を取ったかを把握している限り、任せていますね。倉庫やワークショップはロックダウン中でも全員出勤でしたが。

NZの昨年4月と5月は弊社もお客さんも全員閉まっている状態だったのでその時期は全く売り上げがなかったのですが、5月中旬に解除されてからの反動で、その直後の1~2カ月で前年同期に追い付きましたね。倉庫や顧客係、販売員などの忙しさはすさまじく、感謝しきれませんね。

【楠本】マキタさんの商品で、家庭で使えるDIY製品は、オーストラリアですとハードウエア店「バニングス」での売り上げが一気に上がったのではないですか? ロックダウンで通勤時間が無くなったために自宅を改修するといった需要が非常に増えているのでは。いつ行っても混んでいるので。

マキタ・芹川氏「すさまじい忙しさの中で働いてくれた社員に感謝」

マキタ・芹川氏「すさまじい忙しさの中で働いてくれた社員に感謝」

【芹川】去年の4~5月のオーストラリアの業績がよかったのは、多くの小売店がオープンしていたからだと思います。巣ごもり需要で消費が堅調だったようです。NZのバニングスは閉まっていたのですが。

■「できる社員」に仕事が偏る

【大川】ところで皆さんに確認したいことがあります。これだけ在宅勤務が増えている中で、在宅だろうが、会社だろうが仕事を「やる奴はやる」わけです。すると、在宅勤務だと、やる人間にものすごく仕事が偏り、本当に仕事ができる人間が疲弊し始めるという課題が浮き彫りになって来ました。

やはり日本人は真面目で、本当に働きますよね。彼らの所にもいろいろな仕事が偏っています。真面目に働いている人間がつぶれてしまったら意味がありません。なぜ業務が増えているのか、どこかで減っているのではないかと分析しようと動き始めたところです。皆様の会社ではそういったことはありませんか?

【小林】我々の場合は、事業会社の管理が多いので、現場と直結している状況があまり見えてこないので、大川さんが言われたようなケースはあまり表面化しておりません。

【楠本】弊社の場合、八十数人のオペレーションですが、やはり特定の社員に仕事が集中しているのは非常に感じています。特に顔と顔を合わせず、メールでのやり取りが増えると、返事をして対応する社員にどんどんメールを打ってしまうのです。知識も責任感もある社員の負担が増えていくのです。これは実際に課題としてありますね。

【西原】金融業界などでよく聞きますが、日本人駐在員がオーストラリアに赴任しても、日本的な仕事のペースで仕事せざるを得ないのに、ローカル社員は9時5時でパッと帰るので、彼らの残りの業務を日本人駐在員たちがかぶる。なのに給料はローカル社員の方が高い。だからといって、駐在員の給料も勝手に上げられないと。

【大川】弊社も、基本的にローカルの部下の方が給料が高いのは明確になっていて、諦めています(苦笑)。しかし諦めの中でも、本当に日本人としてプロの仕事をしようという矜持はあります。ここで学んだことは、必ず将来の自分に役に立つので歯を食いしばって頑張る、というところがありますね。これも日本人だからこそできるので、オーストラリア全体に広めるのは難しいかもしれません。ただし、オーストラリア人もプロ意識は結構持っています。そのプロ意識をうまくくすぐりながらやるべきだと思います。

タダノ・楠本氏「顔を見ながらコミュニケーションする」

タダノ・楠本氏「顔を見ながらコミュニケーションする」

【野津】頑張っている人には報酬で、という話になりますが、コロナという荒波の中で、いい仕事をした社員を高く評価して認知してあげて職責を上げるとか、そういうマネジメントもあります。きっちり仕事を見て評価しているということを示すことは本人にとってもモチベーションになるので、報酬だけではなく「あなたは良くやっている」と示すのは大事だなという気がしています。

【大川】おっしゃる通りです。我々がよく使うのは、「Recognition(承認)」と「Reward(報酬)」です。社内のプレゼンで、大々的に賞を設けて発表します。コロナ禍に入ってからコミュニケーションをしっかりしよう、そして「Opportunity(機会)」を与えよう、ということに前よりも力を入れるようになりました。

【西原】皆様、興味深い話をありがとうございました。(了)

◇今回の座談会やテーマに関して、読者企業のご感想や体験なども弊社<sales@nna.net.au>までお寄せください。


関連国・地域: オーストラリアニュージーランド日本
関連業種: 天然資源小売り・卸売りマクロ・統計・その他経済雇用・労務社会・事件

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