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【アジアで会う】関本恵子さん ボリウッドダンサー 第344回 一瞬でいいからボリウッドに出たい(インド)

せきもと・あやこ 1986年生まれ、青森県出身。高校卒業後、2006年にカナダ滞在中にボリウッド映画に出会い、08年に渡印。09年にインドでダンスを習い始める。ボリウッドダンス振付師の巨匠サロージー・カーン氏のダンス学校に通学中に出演が決まり、12年公開作でボリウッド映画初出演を果たす。日本とインドを行き来しながら、20本以上の映画に出演。16年に自身のダンスグループを結成し、日本でボリウッドダンス講師や映像制作、タレント活動などを行っている。

「初めてボリウッドの音楽を聴いた際は衝撃で涙が出た」と話すのは、数々のボリウッド映画に出演歴がある関本さん。カナダのバンクーバーで初めてボリウッドダンスを見た際に2度目の衝撃を受け「一瞬でもいいから、ボリウッド映画に出たい」と思うようになった。

ボリウッド映画は、西部ムンバイで制作される映画を指す。映画の公開前から配信される歌と踊りは、映画の成功さえ左右する重要な要素だ。

■人生を変えた出会い

「まずはインドを知らなくては」と、南部を中心にムンバイなど各地を巡る旅に出た。2度目の渡印で本格的にダンスを習い始める。多い日は7~8時間練習した。「ダンス経験がなかったため、必死だった。思うようにいかずフラストレーションがたまり、服を破いたことも。でもなぜだか、映画に出られることに疑いはなかった」。西部ラジャスタン州を中心に、陸路で北部のマナリやヒンズー教の聖地バナラシ、隣国ネパールにも足を運んだ。インドの文化を少しでも吸収したかった。

人生を変える出会いが訪れたのは、1年の滞在を終え帰国する間際のこと。航空便が遅延し、ホテルに宿泊。たまたま同室になった女性は、ムンバイで演技の学校を卒業したばかりという。スマートフォンがない時代、学校名と連絡先を教えてもらい、次の渡印時に向かう場所が決まった。

教えてもらった学校は、俳優のアヌパム・ケールさんが創設した演劇学校だった。オーディションに合格し、3カ月間、週5日で演技やダンスを学んだ。「ボリウッドは大抵、歌い手と俳優は別のため、口パクの授業もあった」と楽しそうに振り返る。卒業後は、著名な振付師サロージー・カーン氏のダンス学校に入学。「彼女はボリウッドダンスの振付師として初めて賞を取ったレジェンド。見学に行ってすぐ、ここに通うと決めた」

カーン氏のダンス学校に通い始めてわずか2週間。「突然ダンサーがぞろぞろ教室に入ってきた。何事かと思ったら、映画のリハーサルが始まった。その場でこの映画に出ないかと声がかかった」。即座に承諾。初めての映画出演が決まった瞬間だった。2012年公開の「アグニーパス(炎の道)」という作品で、後に東京国際映画祭でも上映された。初出演を機にダンサーとしてカーン氏が振り付けをする映画の撮影に頻繁に呼ばれるようになっていった。

■師の振り付けで大女優と共演

多いときは200人規模のダンサーで撮影するボリウッド映画のダンスシーンは、1曲の撮影に数日をかける。ダンサーは、上手くできなければ立ち位置が交代となる。初めはカメラワークに合わせて踊りながら動くことに慣れず、「2列目の中央から端に交代となったこともある」という。

人生の中で一番の経験と目を輝かせて話すのは、大女優マドゥリ・ディクシットさんとの共演だ。育児で演技と距離を置いていたディクシットさんが活動再開し、主演を務める作品の振り付けをカーン氏が担当。この作品で主役の周囲を固める「ブロックダンサー」に選ばれ、ディクシットさんの隣で踊る場面もあった。

師匠(カーン氏)の振り付けで、憧れの大女優と踊る。「これ以上の経験はない。やりきったという感覚があった」のは13年のことだった。

■一瞬に、思いを込める

15年の映画出演を最後に、16年にダンスグループを結成。本場の撮影経験を生かした振り付けで、イベント出演や映像制作を手掛けるようになった。現在はダンス講師やテレビ出演などボリウッドダンスの普及にも力を入れている。映像制作では、細かい絵コンテを描き、ボリウッド映画のような世界観にこだわっている。

ダンスの一瞬一瞬の表現にはインド文化が詰まっている。歌詞の意味を理解して、顔の表情や振り付けでどう入り込むか。「師匠も、ボリウッドダンスはエクスプレッション(表情)だとよく言っていた。ボリウッドダンスの魅力を伝えていくことは、インド文化を伝えていくことでもあると思う」

インドの古い白黒映画を表現した映像も制作した。「白黒映画は、これぞインド映画というリアクションが際立つから好き」なのだと笑う。映画のダンスシーンのまぶしい笑顔が脳裏をよぎった。彼女はあの瞬間、映画の情景に溶け込んでいた。

カーン氏は20年に他界した。師の教えを糧に、これからもダンスでインドの文化を伝えていく。(インド版編集・榎田真奈)


関連国・地域: インド
関連業種: 社会・事件

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