「瑞穂駅か?送ってやるよ」。花蓮県の山間にある一軒宿、紅葉温泉旅社からの帰り道。山道を歩いていると車が停まり、声を掛けられた。ビンロウで赤く染まった男性の歯に一瞬ひるんだものの、乗せてもらうことにしたのは、手の甲に「紅葉温泉」の入れ墨があったから。男性はその温泉宿で働いており、入れ墨は名刺代わりだそうだ。
紅葉温泉旅社は日本統治時代に設立。戦前に建てられた木造家屋や自然に囲まれた露天風呂、畳敷きの部屋に風情を感じられる、温泉ファンに人気の秘湯だ。
男性は日本を旅行した際に温泉を訪れたが、入れ墨のせいで入れなかったという。「俺は『黒道(マフィア)』じゃないし、温泉で働いてるのにな」。温泉好きに悪い人はいない、とは思う。ただ豪快に笑う男性を見て、入れ墨だけでなく、その真っ赤な歯が怖がられたのではと邪推するのだった。(妹)
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