「お客さん、タイに住んで長いんですか?」。スーパーで会計をしていると、不意に日本語で話し掛けられた。顔を上げると、制服のエプロンを身に着けた女性店員が立っていた。母国語のように流ちょうに日本語を話す。
聞けば、本業は日本人旅行者向けのツアーガイドだという。「新型コロナのせいで仕事がなくなってしまったから、アルバイトしているんです。働かなきゃ生きていけないからね」と明るく振る舞う一方で、マスクの上からのぞく目は寂しげだった。
タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は先週、今年の訪タイ外国人旅行者の見通しを当初の前年比25%減の500万人から52%減の320万人に下方修正した。一方で、観光関連業者への支援はなく、事業継続が危ぶまれている業者は少なくない。スーパーで働く女性が、再び旅行者を案内できる日が早く来ることを願うばかりだ。(香)
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。