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【アジアで会う】三海郁弥さん ソーシャルメディア・クリエーター 第335回 誰もが知る日本人に(フィリピン)

さんかい・ふみや 1995年生まれ、静岡県浜松市出身。高校卒業後に上京し、専門学校を経て帝国ホテル東京に就職する。2017年、語学留学のため単身フィリピンへ渡る。動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿した動画がヒットし、ユーチューバーとして認知度が向上した。19年に国民的リアリティー番組に出演して脚光を浴びる。会員制交流サイト(SNS)を中心に活動の幅を広げている。

「番組出演が決まったから急いで来てほしい」。2018年のクリスマスイブ、日本のカフェで動画を編集していると、民放最大手ABS―CBNからオーディションの合格通知が来た。すぐさま家を引き払い、最低限の荷物をスーツケースに詰め込んでフィリピンに飛んだ。4カ月後に「フィリピンで最も有名な日本人」になるとは、想像すらしなかった。

■ホテルマンから国民的スターに転身

静岡県浜松市の中心部から電車で30分、田畑の広がるのどかな街で、スーパーマーケットを経営する父と母の下、4人兄妹の長男として育った。人から「やれ」と言われて行動するのが苦手な性格は、子どもの頃から変わらない。

高校生のとき、ある日突然父親が無職になった。人脈があるから平気、と気丈な父の姿に自分も経営者になろうと決意。人脈を広げるため高校卒業とともに上京し、ホテルの専門学校に入学した。

「どうしたら、経営者になれますか」。ホテルマンとして働く傍ら、さまざまな宿泊者に尋ねた。1人の女性経営者との出会いを機に、数年後に海外でアパレルブランドを立ち上げることを決め、翌日には支配人に退職の意向を伝えた。

ただ、英語検定試験「TOEIC」は185点。エージェントに勧められた中部セブへの留学を押しのけ、学校も家も決めずにマニラ行きを決めた。当然、家族や友人は猛反対した。「危険と言うが、行ったこともないのに分からないじゃないか」。安否確認の代わりに開設したのがユーチューブチャンネルだった。

留学して2カ月後、バロット(ふ化直前のアヒルの卵)を食べる動画が現地で注目を集めた。英語が話せる日本人はいても、ずぬけて有名な日本人はいないはず。アパレルブランド設立の近道になるとも思い、当初5カ月を予定していた留学をやめて動画制作に専念するようになる。

帰国後も動画を投稿し続け、チャンネル登録者数は1年で約10万人に増えた。イベント開催のため何度か渡航していた18年、視聴者からの勧めで人気リアリティー番組「ピノイ・ビッグ・ブラザー(PBB)」のオーディションを受け、世界10万人の応募者から選ばれた。

PBBは外部から完全に遮断され、24時間監視の下に男女が共同生活し、出演者と視聴者からの投票で勝ち抜いていく型破りな番組。19年の元日、空港到着とともに番組の手荒い洗礼を受けた。出迎えたスタッフ数人とバンに乗り込んだ途端、時計や携帯を取り上げられ、アイマスクと耳栓を付けられた。収録開始までの5日間、ホテルに「幽閉」されたため、日本では誘拐騒ぎになったとか。

嫌われ者になるか、人気者になるか。見えない視聴者の反応は常に心配の種だったが、勝者の4人に残った。

■肩書より好奇心を大事に

PBBに出演後、世界が一変した。レギュラー番組、映画、写真集、ソロコンサート――。スケジュールが分刻みで埋まり、寝る間もなく国内外を飛び回った。

どこへ行っても誰もが自分のことを知っている。ボディーガードなしで外出し、100人近いファンが殺到して危険を感じたこともあった。海外で絶大な人気を集める息子に、母は「別人を見ているよう」と話す。

19年の年末、病気のため緊急帰国し、地元浜松の病院に入院した。早回しの生活に息継ぎをして、自分を見つめ直したとき「いま仕事ができているのは、フィリピンの方の応援があるから」と身に染みて思った。両国の懸け橋として活躍したいと強く感じるきっかけとなる。

新型コロナウイルスの影響で日本に再び戻り、SNSの発信力を生かした仕事が多く舞い込んでいる。昨年12月には念願のアパレルブランドを立ち上げた。総フォロワー数は約460万人に膨らむも、「有名人という実感はない」。

急速に人気が高まった芸能人「Fumiya(フミヤ)」という存在と、等身大の自分。固定概念や肩書にとらわれなければ、世界はもっと広がると考えている。いま目の前のことを楽しみながら、好奇心の赴くままに挑戦していくつもりだ。(フィリピン版編集・大堀真貴子)


関連国・地域: フィリピン
関連業種: 社会・事件

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