NNAは9日、インドネシアのコンサルティング会社フェニックス ストラテジー インドネシア取締役の柳田茂紀氏を講師に迎え、「インドネシア・ビジネス・セミナー」を開催した。柳田氏は、2020年11月に施行された雇用創出法について、基本的に新規投資の誘致が目的で、既にインドネシアに進出している企業への影響は限定的だと説明した。また、同法には不明な点がいくつも残るとし、施行細則である政令、さらには大臣令の施行を待って具体的に対応する必要があると述べた。
雇用創出法は、80本近い法律を一括改正したオムニバス法。うち第81条は労働法関連の条文で、アウトソーシングの業種制限廃止や最低賃金の算出方法の変更、解雇条件の緩和などが示されている。柳田氏は、既存の企業が新法に従うには、就業規則・労働協約を変更する必要があると指摘。労働者にとって改悪となる合意は困難なため、現状が継続する可能性が高く、企業へのメリットは限定的にとどまるだろうと説明した。
■合弁から単独出資への切り替え進む?
一方、第144条で規定した「外国人の不動産所有」では、経済特区などで外国人にアパートや事務所の所有権が認められたことを「画期的な改革」と評価した。投資関係では、外資の出資比率制限が30事業分野に限定されたことで、今後は合弁から外資100%に資本比率を変更する企業が増えるだろうと予想した。
ビジネスリスクでは、新型コロナウイルス感染拡大で経済成長が減速し、焦点となる上位中所得層の消費回復が22年にずれ込む可能性もあると述べた。世界銀行は21年のインドネシアの経済成長率について、移動制限の緩和やコロナワクチンの開発が進めば4.4%に達するが、移動制限が継続し、世界経済の回復が遅れれば3.1%にとどまると予想している。
また、ジョコ・ウィドド政権は政治的には安定しているが、依然として地域間や富裕・貧困層間の格差が解消されていないと指摘。所得格差やコロナの影響で拡大する財政赤字に対応するため、政府は増税による税収拡大に躍起だと述べた。
インドネシア・ビジネス・セミナーは14回目。今回初めてオンラインで開催し、約50人が参加した。
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