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【アジアで会う】ナンティチャー・オチャロンチャイさん 環境活動家兼ジャーナリスト 第332回 気候デモから草の根へ(タイ)

Nanticha Ocharoenchai 1997年生まれ、バンコク北郊パトゥムタニ県出身。国立チュラロンコン大学コミュニケーション・アーツ学部コミュニケーション・マネジメント学科卒業。在学中に気候変動への具体的な対策を求める抗議活動「グローバル気候マーチ」をタイで開催した。大学卒業後は、ジャーナリストとしても環境NGOなどを通して情報発信を続ける。

(本人提供)

(本人提供)

ナンティチャーさんは、大学4年時にスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの記事を読んで突き動かされた。「気候変動問題に関わったのは意図したことではなかった」と振り返るが、危機感を抱くようになり、2019年3月にタイで「気候ストライキ」を企画した。

「最初は20人ほどしか集まらなかったし、とても緊張した」というが、借りてきた拡声器で思いの丈をぶつけた。参加者からは多くの活力をもらった。新型コロナウイルス感染症が流行する前の昨年1月までに計5回のデモを開催。最も多くの人が集まったのは、19年9月20に世界各地で開かれたグローバル気候マーチに合わせて開催したデモで、高校生らを含めて約300人が参加した。

この時、ナンティチャーさんは政府に気候変動を国家課題とし「気候非常事態宣言」を発令することなどを求めた。政府からは3~4カ月後に書面が届き、各要望事項に対して「(気候変動対策には)何かしらの対応をしている」もしくは「対応は難しい」と回答してあった。

グローバル気候マーチから6日後に国連開発計画(UNDP)が開いた「気候行動になぜ女性が必要か」と題したイベントに出席したナンティチャーさんは、その時点で「現在の政治状況では気候非常事態宣言を発令するのは難しい」と、厳しい表情を浮かべていた。

その1年後、折しもタイではプラユット政権の退陣や、軍政色が残る憲法改正などを求める若者たちが、公正・公平な社会の実現を訴えて反体制デモを始めた。だが、反体制派の若者たちの要求に気候変動対策は含まれていない。さまざまな利権が絡む気候変動問題が、政治と結び付けて論じられている欧州とは対照的だ。

ナンティチャーさんは「我々には新鮮な空気を吸い、清潔な水を飲む権利がある。反体制デモと気候変動問題は人権の観点で共通しているが、反体制派はまだそこをあまり見ていないのではないか」と話す。ただ、「若者世代は良い暮らしをするには自然環境が大事だと分かっている。良い環境を保つためには健全な民主主義も必要となる」。

反体制派との共闘について問うと、「一度は考えたけれど、個人的にはあの群衆の中に身を置くことに居心地の悪さを感じてしまう。気候マーチを開催できても、何万人もの人が集まる場所は違う」と述べた。

■地域の食から問い直したい

こうした状況下で、ナンティチャーさんは現在、アクティビズム(積極的行動主義)よりもジャーナリズムに可能性を見いだしている。試みの一つとして、新型コロナの流行で行動が制限される中、環境NGOとの協業で、ナンティチャーさんの1日の生活を撮影し、どの行動がどれだけ環境に影響を与えるかを解説する動画を作成した。

自宅アパートからエレベーターを使用せずに降りたらプラスポイント、カフェに入店したがマイボトルを忘れたのでマイナスポイントといった具合に、日常の一部を独自の視点で解説していく。動画では、スーパーマーケットで過剰包装の青果物や食品などを取り上げるシーンもある。

最後には、どんなに環境に配慮した生活を心がけようとしても個人では限界があるため、社会そのものの構造的な変化が必要だと指摘した。

ナンティチャーさんは、タイにおける市民の環境意識は全般的に高まっていると話す。ただ、脱プラスチック対策に少し焦点が当たりすぎているとも感じている。「多くの人は廃プラスチック問題が気候変動対策だと考えて、プラスチックの使用をやめれば地球温暖化の解決につながると思っているかもしれない」といい、さらに理解が深まることを期待する。

次の取り組みとしては、自身でコミュニティー菜園を開くことを検討している。タイは農業国だが多くの食品を輸入していることから、タイの農業がどうあるべきかを考えてみたいという。「地域でフードシステムを持つことは、二酸化炭素の排出量削減や生物多様性を高めることにつながる」。世界的な気候アクションの自国での実施を経て、より草の根の活動へと関心が移ってきているという。(タイ版編集・京正裕之)


関連国・地域: タイ
関連業種: マクロ・統計・その他経済社会・事件

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