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【アジアで会う】高橋裕一さん 国際交流基金ジャカルタ日本文化センター所長 第329回 変わらない日本語熱を支える(インドネシア)

たかはし・ゆういち 1967年1月生まれ、千葉県出身。91年に国際交流基金入社。本部人物交流部などを経て96~2001年、07~13年にジャカルタ勤務。20年1月から現職。趣味の野球はプロ入団テストを受けたほどの実力で「最近やっと実際にグラウンドに立てるようになった」。

高橋さんがインドネシアに赴任するのは今回が3度目になる。まず驚いたのはジャカルタの風景が大きく変わっていたこと。特に中心部を南北に縦断する都市高速鉄道(MRT)の開通が大きかったという。「日本でMRTが開通したとは聞いていたが、目抜き通りの歩道もきれいに整備され、歩行者や自転車も多く見かけるようになった。以前の車だけの交通から大きく変化した」。一方、「インドネシアでの人と人との距離感、そして日本語への学習熱は、昔から変わっていないと感じた」と話す。

高橋さんがジャカルタに初めて赴任したのは1996年。当時のインドネシアは経済成長が著しい時期で、インドネシア人の日本語熱は非常に高く「活気があり、元気がある国」だった。しかしアジア経済危機の影響で98年にジャカルタ暴動が発生。「日本から日本語教師が派遣されたその日に暴動が起こった。成田空港を出た午前中は問題なかったが、午後になってジャカルタの高速道路が閉鎖され、街中で火の手が上がった。日本語教師をホテルに送ることもできず、自宅に避難させる事態になった」と当時を振り返る。

2001年に一度帰国し、07年に2度目の赴任。経済危機の混乱からも立ち直り、国内情勢は比較的安定していた。落ち着いたこともあってか、日本語を勉強する人は増えていたという。

■教育パートナーを派遣

インドネシアの日本語学習者数は、中国に続いて世界2位。このうち約7割を高校生が占めており、ジャカルタなどの都市部だけでなく、地方にも多いのが特徴だという。

国際交流基金に入ってから、主に日本語教育支援に携わってきた高橋さんは、「地方を訪問すると『日本人が来た』とものすごく歓迎してくれる。ただしこれは、せっかく勉強した日本語をインドネシア人教員と学生の間だけでしか使っておらず、日本人相手に話す機会がないことの裏返し」と指摘する。教員や学生のモチベーションが上がりにくく、国際交流基金派遣の日本語教師の数も限られていたことから、各地をくまなく巡回させることも困難であるなど、問題は多かった。

他の国でも同様の状況が見られることを踏まえ、高橋さんは14年度から「日本語パートナーズ事業」の企画・立案に携わった。7年間限定の日本語教育支援プログラムで、日本国籍を有する20~69歳までの人材を募集し、各地の教育現場に現地日本語教師のアシスタントとして派遣する。インドネシアでは最大150人を各地に派遣し、現地でインドネシア式の生活を送りながら、教員・学生と同じ目線に立って意識を共有してもらうのが狙いだ。

当初は東京五輪・パラリンピックを見据えた20年度までの事業だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で東京五輪が延期となり、人材の派遣も難しくなった。「今年も150人ほどを派遣する計画だったが、日本語パートナーズ事業も結局1年延期になった」という。

■感じたことを伝える

20年は新型コロナの流行拡大によって、国際交流基金が進めているシンポジウムなどさまざまなイベントが変更・延期、あるいは中止になった。16年から同センター主催で実施している日本映画祭も、20年は初めてオンラインで開催。日本映画27作品を専用サイトから見られるようにし、トークショーやワークショップも動画配信サイトを通じて実施した。高橋さんは「コロナ禍でいろいろなことが制限されたが、何もしないわけにはいかない。できることをやっていく」と言葉に力を込める。

その一環が日本語弁論大会。日本語学習の成果を示す場として毎年開催されており、01年からは高校生の部もスタートした。2月に開催する高校生の大会は、弁論でなくプレゼンテーション大会としオンラインで開催する。高橋さんは「今回から、大勢の聴衆の前で話す弁論とは違うスタイルにした。ただ話すことを暗記するだけでなく、自分の感じたことを伝える必要がある。少しハードルは上がったが、能力を試すいい機会になる」と期待を示す。

21年上半期の状況次第だが、下半期には衛生規律を順守しながら、オンサイトの文化交流イベントも開催する計画だ。かねて進めてきた教材のオンライン配信も、この機会に加速させていく方針という。(インドネシア編集部・六角耕治)


関連国・地域: インドネシア日本
関連業種: 社会・事件

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