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【アジアで会う】宋知勲さん スタディーカフェ「ザ・ライブラリー」経営者 第322回 ライフスタイル中心の共有空間を提供(韓国)

ソン・ジフン 1981年生まれ、ソウル市出身。大手証券会社のサムスン証券でプライベートバンカーとして10年間勤務した後、「スタディーカフェ」の経営者として独立。2017年に「ザ・ライブラリー」を立ち上げ、現在は全国に七つの店舗を展開する。現在はザ・ライブラリーのコンセプトをベースとした幼児・児童向け複合空間や共有オフィスの設立も目指し、活動の幅を広げている。

店内に入ると、飲み物を注文するカウンターが目に入ってくる。一見すると普通のカフェだが、「ザ・ライブラリー」では時間単位の利用権を購入しなければならない。テーブルには勉強する学生や仕事中のビジネスパーソンの姿がちらほら。経営者の宋知勲さんは「カフェとしても、仕事場としても活用できる空間です」と簡単に説明してくれた。

そもそも「スターディーカフェ」とは、どういったものなのか。幼いころから厳しい受験戦争にさらされる韓国では、勉強に集中するためにパーテーションで周囲を遮った机を予約制で利用する「読書室」というサービスが古くからあった。その読書室と最近流行の「コワーキングスペース(共有オフィス)」の中間に位置する空間共有サービスがスタディーカフェだ。

「読書室は殺伐としていて、逆に集中できない。かといって一般のカフェではうるさすぎる。そういった学生には、スタディーカフェは最適です」と宋さんは言うが、近年はビジネスパーソンの利用も多いという。個人事業者やフリーランスのように、特定のオフィスを必要としない人が増えていることが背景にある。

■大手証券マンからの転向

共有空間を提供する企業の経営者である宋さんだが、元々は大手証券会社のサムスン証券でプライベートバンカーとして活躍していた。10年間働いた証券業界から全く異なる分野へ転向するきっかけは「本当に偶然だった」という。「同僚の誘いでカフェのような読書室を運営することになり、空間と人がお互いに有機的に影響を受けあう過程を経験しました。昔からクリエーティブな仕事に興味があったので、それをきっかけに『ザ・ライブラリー』を立ち上げることにしたんです」と宋さんは振り返る。

ザ・ライブラリーのロゴは、人類が初めて月に残した足跡をモチーフにしている。これも、宋さんの空間づくりに込めた意思が反映されたものだ。「ザ・ライブラリーのモットーは、『Be yourself(自分自身になる空間、自分を探す旅程)』。自身に集中し、自分の可能性を見つけることで、誰も歩まなかった自分だけの道をつくるという意味を込めました」と宋さんは話す。

自分自身と素直に向き合える空間を提供することで、利用者の新しい挑戦を応援するのがザ・ライブラリーであり、宋さんの理想だ。

■佐賀のツタヤ図書館から着想

そのようなザ・ライブラリーを立ち上げるにあたり参考にしたのは、13年に佐賀県武雄市に初めて登場したTSUTAYA図書館だった。TSUTAYA図書館は飲料品の持ち込みを認め、BGMを流し、夜遅くまで開館するなど、それまでの図書館の枠を超えた新たな取り組みだった。また、本の陳列方法も直感的に手に取りやすいよう工夫され、長時間いても疲れない座り心地の良い椅子もそろえる。

「そのようなTSUTAYA図書館の哲学に着想を得ました」と宋さん。「貸出」中心から「滞在」に軸足を移したTSUTAYA図書館のように、「ザ・ライブラリーも余暇を楽しむことができる空間」を目指してきた。

■コロナ禍がむしろチャンスに

一方、20年は新型コロナウイルス感染症で一時は営業を停止せざるを得ないなど悪影響も受けた。それでも、「新型コロナの流行で学校や職場などで密集を避ける傾向が強まったこともあり、むしろ近所の人がザ・ライブラリーを利用する率が高まったように思う。総合的にみれば『追い風』になった面が大きい」と前向きだ。

韓国では共有オフィスなど「空間のシェア」が拡大している上に、新型コロナの流行でいわゆる「3密」を避ける傾向が強まっている。さらに、店舗の無人化も進む。こうした流れの中で、「ザ・ライブラリーは強みがある」という。

「これからは仕事と余暇が混在する暮らしが重要視されるでしょう。ザ・ライブラリーは創業当初から感性的な部分を重視してきました。仕事場として、または学びの場としても過ごしやすい空間として、利用者からも良い反響を得ています」と、宋さんは話す。

■ライフスタイルに溶け込む「空間づくり」

現在の目標は「ザ・ライブラリー」ブランドを幼児・児童向けの複合文化施設や共有オフィスなどに広げることという。

「キッズ向け施設を利用した児童が成長してスタディーカフェを利用し、さらに共有オフィスで働く。そのようにライフスタイルにザ・ライブラリーが溶け込むブランドに育てたい」。スタディーカフェの経営者にとどまらず、居心地の良い場所を作り出す「空間デザイナー」として、宋さんの奔走は続く。(韓国編集部=清水岳志)


関連国・地域: 韓国
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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