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【韓流新時代】制作主導で「韓ドラ」旋風 コロナ後押し、動画配信が転換期

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う巣ごもり需要で、アジアや欧米など世界的に人気が高まる韓国ドラマ。その強さの背景には、財閥の資金力をバックに成長する大手制作会社の存在や、優秀な脚本家を生み出す体制づくりなどが挙げられる。視聴スタイルがテレビから動画配信に移り変わる時代の中、韓流もこれまでの成功体験にとらわれない産業構造の転換を迫られている。【ソウル=中村公、坂部哲生、東京=古林由香】

「愛の不時着」は韓国の財閥令嬢と北朝鮮の将校の恋の行方を描いたラブロマンスドラマ。大阪市内で空調設備会社を営む荒牧太郎社長(52)は「胸キュン心が大いに刺激され、ステイホーム期間中に一気見した」と話した。(写真はスタジオドラゴン提供)

「愛の不時着」は韓国の財閥令嬢と北朝鮮の将校の恋の行方を描いたラブロマンスドラマ。大阪市内で空調設備会社を営む荒牧太郎社長(52)は「胸キュン心が大いに刺激され、ステイホーム期間中に一気見した」と話した。(写真はスタジオドラゴン提供)

動画配信大手の米ネットフリックスが日本で独占配信する「愛の不時着」は、2月後半の配信開始から9月まで同社の日本ランキングで首位を独走した。コロナ禍で自宅にいる時間が増える中、日本では韓国ドラマに関心を示してこなかった中高年男性など幅広い客層を取り込み「第4次韓流ブーム」を巻き起こした。

海外に目を向ければ、ネットフリックスで「サイコだけど大丈夫」が香港・台湾などアジア各国・地域で1位を獲得。これまで鬼門とされてきた米国でも韓国ドラマが上位に食い込み、米紙ワシントン・ポストやタイム誌も人気の高さを伝えるなど、その勢いは止まらない。

韓国文化体育観光省によると、韓国ドラマの輸出額は2018年時点で年間2億4,190万米ドル(約256億円)に達している。これは日本ドラマ(3,148万米ドル=総務省)の約8倍と、その差は歴然だ。新型コロナの流行で動画配信サービスが根付いた20年以降は、輸出額がさらに拡大すると予想されている。

■制作会社は下請け構造から脱皮

韓国ドラマの強さの秘訣(ひけつ)は何か。一つ目は制作会社の存在の大きさが挙げられる。「愛の不時着」「サイコだけど大丈夫」などを手掛けた韓国最大手のスタジオドラゴンは、財閥CJグループ傘下の企業で、潤沢な資金力をバックに制作会社4社を傘下に取り込みながら、事業規模を拡大してきた。

人気の脚本家や優秀なプロデューサーなど226人のクリエーターを自前で抱え、年間30本ほどのドラマを量産する。ドラマ制作だけにとどまらず、企画や資金調達、流通まで一括で手掛けられる事業構造も特徴で、日本のドラマ制作会社のようなテレビ局の「下請け的存在」ではなく、世界に売り込める力がある。

スタジオドラゴンのカン・チョルグ共同代表は「業界の慣習にとらわれず、どんなことにもチャレンジできることが当社の強みだ」と胸を張る。

その制作力に目を付けたのがネットフリックスだ。19年11月に株式4.9%を1,080億ウォン(約100億円)で取得し、20年からの3年間で21本のドラマの供給や制作で協力する契約を結んだ。

ネットフリックスが韓国ドラマを独占配信し、スタジオドラゴンはまとまった版権収入を元手に次の作品に再投資する。このような両社の協業が加速すれば、1本100億~300億ウォンほどに上る韓国ドラマの制作費はさらに巨額化するとみられる。

■脚本家の報酬は1話1億ウォン

脚本の力も強さの源だ。韓国ではドラマ制作における脚本家の地位が高く、「スター作家」と呼ばれるキム・ウンスク氏のドラマ1話当たりの報酬は約1億ウォンに上る。キャスティングありきの作品作りではなく、無名な俳優でもシナリオさえ面白ければ視聴率が稼げるとの考えが根強くある。

そのため脚本家の育成や発掘にも熱心だ。スタジオドラゴンの親会社であるCJ ENMは17年にO’PENという育成事業を発足。今年までに130億ウォンを投入し、94人の脚本家を輩出した。政府系の韓国コンテンツ振興院が毎年実施する脚本の公募展は、1位賞金が1億ウォンという破格の規模で新人発掘が行われている。

制作大手ドラマハウスの朴ジュンソ代表は「韓国はトレンドが激しく変化する市場で、脚本家は常に新たな試みを迫られる。過去の成功体験を否定することで、今までにない魅力のあるシナリオが生まれてくる」と分析する。

■政府支援は「あくまで縁の下の力持ち」

韓国政府も、1990年代後半からコンテンツ産業を国策事業に位置付けて支援を続けてきた。支援を担当する韓国コンテンツ振興院は、事業ごとに補助金を支給する日本のクールジャパン政策とは違って、独自の予算を持って機動的に運用できることを強みにしている。

このことから、日本などでは韓国ドラマの世界的人気は「政府の手厚い支援の結果だ」と考えられる傾向が強い。これに対し、韓国コンテンツ振興院の黄仙惠(ファン・ソンヘ)日本ビジネスセンター長は「あくまで縁の下の力持ち的な役割だ」と説明する。

同院の主な事業は人材育成や輸出支援だ。前出の大規模な公募展を実施して、そこで選ばれた脚本家に対し、作業場の提供や制作会社とのマッチングなどを手掛ける役割で、ドラマ作品への投資や大手制作会社に対する資金援助など直接的な支援は基本的に行わない。

日本の大手芸能事務所の関係者は「政府の支援でコンテンツが急成長するのであればどの国もやっているはずだ。結局、作品の善しあしは、民間の力で決まる」と明言する。

■動画配信に合った制作が鍵

一方、韓国ドラマの先行きは明るさだけではない。これからは動画配信サービスを対象にした作品作りが求められる。スケールを壮大に設定しつつ、ストーリーの展開を早めてどれだけ「一気見」させるかなどの戦略が、世界の視聴数を増やす鍵となる。

スタジオドラゴンとキム・ウンスク氏の最強コンビで約350億ウォンの制作費が投じられた「ザ・キング:永遠の君主」は、奇抜で複雑なシナリオが視聴者から敬遠され、韓国での最終回視聴率が8%程度にとどまり、ネットフリックスのランキングでも上位をにぎわすことはできなかった。

いかに世界が魅力と感じるコンテンツを生み出し続けられるか。制作規模が巨大化する動画全盛の流れに対応できなければ、成長の波に乗り遅れる恐れもある。

※韓国版企画【「韓流」新時代、強さの秘訣を探る】では「K―POP」「韓国映画」「日本での韓流ビジネス」などについて続編を伝える。


関連国・地域: 韓国日本
関連業種: メディア・娯楽社会・事件

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