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【アジアで会う】水流早貴さん サクラホームサービス代表 第317回 スラム女性の手に職を(インド)

つる・さき 1992年生まれ、岐阜県出身。都留文科大学を2016年に卒業後、大手人材サービス会社に就職。2年半の法人営業を経て起業に取り組む。19年にインド法人を設立し、渡印。スラムの女性を雇用する家事代行サービスを開始した。新型コロナウイルスの流行で、「感染が収束しても、メイドを派遣する家事代行業は厳しい」と考えハウスクリーニングに事業を転換。全土封鎖中はスラムへの寄付活動にも尽力した。

インドでは新型コロナ対策の全土封鎖を機に、各家庭でこれまで家事を任せていたメイドの受け入れが止まった。契約する顧客の元に毎日スタッフを派遣し清掃するサクラホームサービスの家事代行事業も休業状態に。売り上げゼロでも従業員への給与の支払いを続ける中、単発で徹底的な清掃を提供するハウスクリーニングに事業を切り替えた。この転換が功を奏し、「休みが全く取れないほど忙しくなった」と声を弾ませる。

■より多くの雇用目指して

サクラホームサービスで働くのはスラムに住む女性たちだ。ヒンディー語の読み書きができないなど、学力もスキルもない女性がより高い収入を得られるよう、マナーやあいさつからトレーニングする。給料は研修期間から支給。トレーニング終了後は1人で各顧客を担当した。

封鎖を機に転換したハウスクリーニングは、感染を恐れメイドの受け入れを控えている家庭や、引っ越し前の人などから需要がある。コロナ前は7人の清掃スタッフにそれぞれ1人の顧客をもたせるのでやっとだったが、現在は月に25件程度の依頼がある。月単位でなく、数時間程の1回の清掃で受注するため、単価も上がった。「コロナ禍で、インド人の衛生意識が上がったと実感している」

収入を失った人から相談を受け、封鎖中はスラムへの寄付活動を実施。主に日本人から資金を集め、580世帯に食糧や日用品、寄付を届けた。一時帰国して不在期間が長期化する日本人駐在員向けの清掃サービスも始めた。北部グルガオンで基盤を築いた後は、他都市への拡大を目指している。「より多くの人を雇用することで、ソーシャルインパクトを生みだしたい」。まずは、来年中の黒字化が目標だ。

■働く女性の姿を力に

スラム女性のために奮闘する力の源はどこから来るのか。それは、大学在学中に訪れた孤児院での出会いにさかのぼる。インド東部ブッダガヤにある孤児院では、共同生活を送る子どもたちが、教師や貧しい人を救う夢を持ち、暗い部屋の中で勉強していた。一方で資金繰りに窮する非政府組織(NGO)の支援が無くなれば、自力で夢を叶えられない理不尽な環境に疑問が生まれた。

子どもたちを取り巻く「貧困」をどうしたら解決できるのか。答えを求め、大学を休学しフィリピンやインドのNGOや企業でインターンを重ねる。この経験を通じ「ビジネスを通じてインドで貧困を解決する」ビジョンを持つようになるものの、インド企業でのインターンで挫折。実力をつけるため、卒業後は大手人材サービス会社に就職した。将来、雇用を作りたいとの思いから人材系を選んだ。

入社当時は7~10年経験を積む考えだったが、インドが頭から離れない。最終的には夏休みにインターンしたインドネシアのソーシャルビジネス企業の創業者からもらった「誰でも最初はひとり。まずはやってみることだ」という言葉で退職を決意。翌週に退職届を出した。

ビジネスプランを練り、法人を設立し、インド渡航にこぎ着けたのは退職から9カ月後の19年7月だった。9月からスラムの女性を雇用する家事代行事業を始めた。

「インドで起業する日本人は少なく、続けていくのが難しい」。顧客や従業員間のトラブルもつきものだ。封鎖中は、仕事ができず自分の給料をゼロにするなど苦しい期間だったが、帰国は考えなかった。最近は創業時から在籍するスタッフの成長も実感している。「家族や子どものために、くらいついて働く女性の姿が力になっている。こういう女性をもっと増やしていきたい」

結婚直後に単身インドに渡り、事業を軌道に乗せるため突き進むことを応援してくれる夫や家族も支えだ。「理不尽な環境で暮らす人がやりたいことができる」ことにつながるならば、事業内容にこだわりは無い。「もし今の事業が失敗したら、他の事業を考える。やりたいことはたくさんある」と話す。大きなソーシャルインパクトを残せる規模になるまでは、将来子どもをインドで生み育てながらでも、この地にとどまる覚悟だ。(インド版編集・榎田真奈)


関連国・地域: インド
関連業種: 社会・事件

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