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【アジアで会う】濱田恵理子さん  ベトナム漆画家 第280回 ハノイの街並みを作品に(ベトナム)

はまだ・えりこ 1988年仙台市まれ。2012年に多摩美術大学を卒業後、13年にベトナム・ハノイに図工教師として赴任。滞在中に出合ったのがベトナムの漆絵だった。「ベトナムの古い建造物と漆絵は似ている」と語る。6年間にわたる2度のベトナム滞在を終え、先月、日本に帰国した。今後は日本での個展開催を目指し、活動を続けていく。

ホアンキエム区のカフェに置かれていたカレンダー。ハノイ独特の建物の色使いと、どこかなつかしく素朴で愛らしいタッチが気になり手に取ると「Eriko Hamada」、日本人の作品だった。聞けば、ここで漆絵作品の個展が開かれたのだという。

濱田さんがベトナム漆に出合ったのは、ハノイで図工教師を務めていたころ。知人の紹介で、日本人が運営する漆絵ギャラリーの教室に通い始めたことがきっかけだ。そこで展示されていた当地で活躍する日本人漆画家・安藤彩英子さんの作品を目にし、自身でも制作をする中で徐々に魅了された。

ベトナム漆は日本の漆と比べて柔らかいことが特徴で、硬く漆器などに用いられる日本のものと異なり、昔から絵画などに取り入れられてきた。漆絵の技法は、天然漆に顔料を混ぜ合わせたものを何層にも塗り重ね、乾かし、研磨する。これらの工程を繰り返すことで、独特の質感とツヤが出るのだ。漆の上に卵の殻や金箔をのせ、幅広い表現を織りなすのも特徴の一つ。

本腰を入れて漆絵に取り組むようになったのは、4年間の赴任を終え日本に帰国後、再びハノイに戻った昨年から。ベトナム人作家に師事して毎日のようにアトリエに通い、細かい質感の出し方などを習得した。

今年9月に開催した個展は、再び日本へ帰国する前の集大成。100人以上が訪れた。出展したのは12作品で、大きいものでは制作に2~3カ月を要したという。細かい描写と多彩な色の表現からハノイの街に対するリスペクトが感じられるのと同時に、作品全体の力強さからは柔らかな雰囲気の中にある彼女の芯の強さが垣間見える。

■芸術に触れた海外での子ども時代

濱田さんが美術に興味を持ち始めたのは、小学3年生のころにさかのぼる。海外駐在員の父親に帯同したスペイン・バルセロナで「父と一緒に通い始めた絵画教室だった」。中学生時代を過ごした英国・ロンドンでは、美術館が身近な存在で、足しげく通った。メキシコでは日本の高校では受けられないようなアートの授業に出合うなど、芸術が根付く海外の文化に触れて育ったことが、美大入学につながった。

海外を転々としてきた濱田さんにとっては「現地の文化を最も感じられるのが図工の授業だった」といい、卒業後は海外で働くことを目指した。そうして赴任先となったのがハノイだった。

■ハノイの街並みをモチーフに

ベトナム滞在は合わせて6年。「ベトナム漆がつくり出す独特な雰囲気は、ベトナムの古い建造物との相性がいい」――。彼女の作品の多くはハノイの古い街並みがモチーフで、当地に息づく文化への理解を深めるほどに、その思いが強くなった。

何度も塗り重ねられてきた外壁は、ひび割れたり、剥がれ落ちたりしていて、その様子が漆絵の制作工程とよく似ているという。歴史的な建物や街並みが好きなのは、子どものころから。「建築スタイルによって異なる時代背景やそこで脈々と受け継がれるベトナムの人や家族の暮らしを想像する」と、うれしそうに語った。

ハノイではこれまでに、世界各地に広がるスケッチコミュニティー「アーバンスケッチャーズ」に参加して、ベトナムの人たちに交じり古い街並みを描いてきた。建物を描写した「スケッチ」が作品の土台だ。

これらの漆絵作品とは別に、自費制作したのがハノイの街並みを描いたカレンダー。増刷分を含めて完売したという。「いろいろな人に応援してもらった」と謙遜しながら感謝を表し、新しいことに挑戦できたことを喜んでいる様子。日本に帰国後も「ベトナム漆×ベトナムの建造物」というスタイルは変えずに、表現を続けていく。(ベトナム版編集・尾崎由佳)


関連国・地域: ベトナム日本
関連業種: 社会・事件

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