• 印刷する

【アジアで会う】チョー・ミン・ティンさん JTBポールスター社長 第275回 全ての人の案内星に(ミャンマー)

Kyaw Min Htin 1972年生まれ、西部ラカイン州出身。95年にヤンゴン大学卒業後、英語ガイドになる。独学で日本語を習得し、99年にミャンマー人で初の日本語検定1級に合格する。2000年にミャンマー・ポールスター・トラベルズ&ツアーズを起業。13年に日本の旅行大手JTBと合弁会社JTBポールスターを立ち上げる。趣味は音楽。全国歌謡大会で準優勝の歌声を持つ。

「日本には1年しか住んでおりません。ですがビジネスに関しては非常にハングリーなんです」。初対面で日本語をほめるとニッカリと笑った。「わたくし」「~させていただく」「おっしゃる通り~」。丁寧な言葉づかいの中に自信がみなぎる。

履くわらじは多い。ポールスター・グループの会長として、旅行業、日本語・英語教育、技能実習生の送り出し、貿易業などを束ねる。18年10月に始まった日本人観光客の査証(ビザ)免除の舞台裏では、ミャンマー観光連盟(MTF)共同事務局長として実現へ奔走した。「まるで一昔前のジャパニーズ・ビジネスマン」――。発するエネルギーに周囲は目をみはる。

ハングリーの原点は高校時代だ。社会主義体制下に暮らす一家の家計は苦しかった。「おしゃれをしたくても靴を買えなかった」という少年は、「この貧しさは誰のせいか」という問いの答えを本に求めた。デール・カーネギー「人を動かす」などを読みあさり、考えを改めた。「自分が努力すれば、必ず解決できる」。世界を知るため、英語の勉強を本格的に始めた。

■慰霊団に教わった「ありがとう」

大学に入学後、「僧院学校で日本語をほぼ無料で勉強できる」と聞きつけた。親戚の一人が戦時中に日本語通訳をしていた縁で、幼少期に旧日本兵らの慰霊訪問団をもてなしたことがあった。贈り物の文房具を受け取るときに覚えた「ありがとう」がよみがえった。アジアの先進国へのあこがれが、日本語の勉強へと駆り立てた。

転機は1996年に訪れた。全日空の直行便がヤンゴンに就航し、日本人観光客が一挙に増えた。英語から日本語ガイドに衣替えし、衛星放送でNHKの視聴を始めた。月々の視聴料は約40米ドル(現在のレートで約4,300円)と、庶民の平均月収の半分以上だったという。しかも海外の衛星放送の受信は、当時はご法度。「本当に高かったし、怖かった」。

ニュースや「朝ドラ」を通じて知る生情報の効果は絶大だった。99年に日本語検定1級(現在の「N1」相当)を取得すると、大使館や企業からの通訳依頼が舞い込んだ。ビジネスの人脈が増え、ミャンマー・ポールスターが誕生する。ポールスターは、英語で北極星の意味。「世界中の方々にミャンマーをご案内したい」。その思いが社名の由来となった。

経営者として「開眼」したのは、一橋大学での経営学修士(MBA)留学時代。野中郁次郎氏など有名教授陣の下で「企業を守るのは数字」と叩き込まれた。通訳で知り合った日本人たちから教わった経営のイロハが、ここで昇華する。「あの時に人間も変わりました」。後に中古車輸入で大量の在庫を抱えたことがあったが、中核事業の旅行と人材に注力して乗り切った。粘り腰を経理と財務の知識が支えた。

■若者に「開眼」を

2011年、民政移管によりミャンマーの自由化がついに到来。サービスの良さを評価してくれていたJTBと、2年後に合弁会社の設立に至った。「シートインコーチ(観光乗り合い型バスツアー)」商品を開発するなど、日本人や欧米人にミャンマーの魅力をアピールし続けている。

ポールスター・グループの役割は、世界中からの観光客や投資家のミャンマーでの道案内にとどまらない。ミッションは、長く閉ざされてきた祖国で生まれ育った「右も左もわからないミャンマーの若い人たちに開眼してもらうこと」。04年に設立した語学学校ベター・ライフからは、ガイドだけでなく、エンジニアや技能実習生など将来を担う人材を輩出し続けてきた。ミャンマーに関わる全ての人たちの道標となる輝きを得たとき「ポールスターは今よりも何倍か大きくなっているはずです」。(タイ地域事務所・渡邉哲也)


関連国・地域: ミャンマー日本
関連業種: 観光マクロ・統計・その他経済雇用・労務社会・事件

その他記事

すべての文頭を開く

コロナ、新たに1400人余り感染=1日夜(19:34)

国軍が停戦を年末まで延長、テロ地域除く(20:34)

「投資誘致へ土地改革を」 OECD、登記簡素化など提言(12/02)

有望国、越が7年連続首位 中国も人気根強く=中小企業調査(12/02)

コロナの累計感染者、9万人突破=30日夜(12/02)

タイPTT合弁事業など5件認可、投資委(12/02)

10月の新規雇用は4500人、前月から半減(12/02)

総選挙の投票率は72%、選管発表(12/02)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。

の記事は有料サービスご契約者様限定記事です。契約すると続きをお読みいただけます。契約されている方は、画面右側にある各種ログインからログインください。
無料トライアルはこちら
購読申し込みはこちら

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン