• 印刷する

経済活動は徐々に正常化へ 爆破テロ後のスリランカ

日本人1人を含む359人が犠牲となった連続爆破テロが21日に発生したスリランカ。夜間外出禁止令に続き、23日には非常事態宣言が発令されテロ再発が警戒されているが、日系企業を含め同国の経済活動は徐々に正常化しつつあるようだ。日本の大手旅行代理店ではスリランカツアーを相次ぎ中止し、同国の観光業への影響も懸念されるが、爆破テロのマクロ経済への影響は限定的との見方もある。

最大都市コロンボの繁華街に掲げられた弔意を示す白い布=24日、スリランカ(共同)

最大都市コロンボの繁華街に掲げられた弔意を示す白い布=24日、スリランカ(共同)

22日に休場したコロンボ証券取引所。再開した23日の終値は5,402.58ポイントと、前営業日の5606.35ポイントからは大幅減となったが、24日以降は持ち直した。

スリランカにある約130の日系企業の対応は様々だが、23日以降はおおむね通常に近い体制となったようだ。

佐川急便を中核とするSGホールディングスが出資するスリランカ物流大手のエクスポランカ・ホールディングスでは、事件翌日の22日は全国31カ所の事業所を閉じ、従業員は出勤させなかった。しかし、23日から出勤可能な従業員で段階的に業務を再開し、24日からは通常営業となった。ただ、日本人駐在員2人は現在もシンガポールに一時退避している。

豊田通商が出資するトヨタ・ランカの販売店(ディーラー)は23日に営業を再開した。豊田通商の日本人駐在員も23日以降、通常勤務となっている。

国際協力機構(JICA)のコロンボ事務所も23日から通常の勤務体制に戻った。ただ、各機関に派遣されている日本人専門家やボランティアには25日現在、自宅待機の措置を継続している。

コロンボ日本人学校は26日まで臨時休校となった。

■ソーシャルメディアは遮断

非常事態宣言下では公権力の逮捕状なしの逮捕・拘留が可能となる。政府はこのほか、フェイスブックなどソーシャルメディアのアクセスを遮断。しかし、規制を回避できる「VPN(仮想私設網)」を利用して情報を交換する市民が増えているようだ。スリランカでは非常事態宣言は昨年3月にも一時発令されていた。ソーシャルメディアの偽情報などをきっかけに、仏教徒とイスラム教徒が対立したためで、政府はこの時もソーシャルメディアを遮断していた。

■直行便、連休のキャンセルは1割程度

大手旅行会社のJTBは23日から6月16日出発分までのスリランカのパッケージツアー(募集型企画旅行)を中止。エイチ・アイ・エス(HIS)も24日、5月10日出発分までの中止を決めた。HISの担当者は中止を決断した理由について、非常事態宣言が23日に出されたほか、さらなるテロの可能性が出てきたためだと説明した。大手旅行代理店のツアー中止は募集型企画旅行のみで、ホテルと航空券を組み合わせただけの手配旅行は対象外だ。

日本とスリランカ間の唯一の直行便を運航するスリランカ航空の日本支社によると、成田発コロンボ行きのゴールデンウィークの便は、約300席の機材で、1割程度のキャンセルが発生した。同航空担当者は、「コロンボを経由してインド南部やモルディブに行く旅客もあるため大きな落ち込みにはなっていない」と話す。スリランカが最終目的地の旅客でも、旅慣れている手配旅行者は、テロが発生したコロンボに宿泊せず、仏教寺院があるキャンディなど内陸部に宿泊しているという。

■マクロ経済への影響は限定的か

「テロ事件で投資や観光が落ち込む」「対外債務返済が滞る恐れがある」との報道もある。ただ、スリランカ観光開発庁の資料によると観光業が国内総生産(GDP)に直接貢献する割合は4.5%にすぎない。2017年のスリランカの外貨収入をみると、海外からの送金が全体の27.1%を占めてトップ。2位は縫製品輸出(全体の19.0%)で、観光業(14.8%)は3位で39億米ドル(約4,360億円)を得た。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの堀江正人・主任研究員は、「連続爆破テロがスリランカ経済に与える影響は限定的ではないか」とコメント。その理由として、スリランカの経常収支は、観光収入が減っても海外労働者送金によってカバーできる構造であること、スリランカへの直接投資の流入規模も小さく投資減少の影響は大きくないことを指摘した。

スリランカ政府はGDP比で6割の対外債務残高を抱える。中国からの借款で建設したハンバントータ港の99年間の権益を中国企業に11億米ドルで売却したが、債務返済が課題だ。こうした債務懸念について堀江氏は、「(社会主義を掲げる同国で)肥大化した国営企業や無償の医療・教育といった財政支出拡大要因を見直すことが、財政収支改善と政府債務縮小につながる」と述べ、テロ事件が原因となって債務増加・経済危機になる、との報道については否定的な見方を示す。

(遠藤堂太)

<メモ>

■連続爆破テロ発生からの動き(現地時間)

・21日午前8時30分頃 ホテル・教会の6カ所で同時に自爆テロ発生

・21日午後6時 「夜間外出禁止令」(翌朝6時までの12時間、22日は午後8時~翌朝4時に短縮)

・22日 爆破のあった教会近くの不審車両から爆弾発見、コロンボのバス乗り場でも爆発物発見

・23日午前 政府が「非常事態宣言」を発令

・23日午後 ISが犯行声明


関連国・地域: インド日本スリランカ
関連業種: マクロ・統計・その他経済

その他記事

すべての文頭を開く

テイクオフ:先日見たヒンディー語映…(10/16)

住宅購入で年齢層が低下 35~45歳が主軸、日系も商機探る(10/16)

NEC、西部スマート都市向けシステム受注(10/16)

5G入札は来年3月末までに実施=通信相(10/16)

5Gの運用、GDPを最大0.5%押し上げ(10/16)

アップル、鴻海の工場でスマホ生産開始(10/16)

印M&M社長が訪韓、双竜自の再建策提示も(10/16)

ITビルラ、米医療器具と2.4億ドルの契約(10/16)

起亜自の第2弾モデルはMPV、来年2月発売(10/16)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン