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【特集企画】業界座談会第3弾・小売り業 ブランディングをどうする?(上)

アマゾンや外資系小売りブランドの相次ぐ進出で、オーストラリアの小売市場は現在、大変革を迎えている。そんな中で、オーストラリアで展開する日系小売りブランドはどう戦っていくべきか。日本を代表する大手小売り分野の4ブランド「無印良品(MUJI)」「セイコー」「紀伊國屋書店」「ジュリーク」の現地法人代表者4人に集まってもらい、ブランディング戦略や苦労話などをざっくばらんに語ってもらった。【NNA豪州編集部】

【NNA・西原】まずは自己紹介をお願いできますか

【MUJI・藤本】MUJIオーストラリアは2013年に設立しまして、今年11月でちょうど5年を迎えました。シドニーに2店、メルボルンに2店、キャンベラに2店、合計5店舗で展開しています。衣料品や生活雑貨、一部食品を販売しています。最近のオーストラリアの小売り市場はオンラインの方が売り上げが伸びており、特に大型小売り店や百貨店の苦戦が最近目立っている中で、おかげさまでMUJIは今のところ好調に推移しています。

各氏共に「日系ブランドとしての価値は高い」としながらも、豪州で展開する苦労も(NNA豪州)

各氏共に「日系ブランドとしての価値は高い」としながらも、豪州で展開する苦労も(NNA豪州)

【セイコー・小泉】セイコーはオーストラリアでは製造や組み立ては一切しておりませんで、販売会社の現地法人です。腕時計、置き時計、掛け時計などを、卸販売をしたり、マーケティングしています。オセアニアでは現法がここしかないので、NZもブランチを持ってシドニーからコントロールをするという形です。最近は世界的に、メーカーが直接運営するブランド・ブティックが腕時計業界でも盛んになっていまして、セイコーのブティック店舗をシドニーとメルボルンに2店舗展開しています。

【西原】腕時計では高級ブランドの「GS(グランド・セイコー)」だけですか?

【小泉】いえ、GSの比重は一番大きいですが、他もひと通り揃えております。ブティックで利益を出すのはさほど意識しておりませんで、あくまでブランディングが趣旨です。小売店が扱うのをためらうほど値段が高いモデルもありますが。卸先で一番多いのは、日本では近年見かけない、時計と宝飾を扱う時宝店(ジュエラー)ですね。

【紀伊國屋書店・河合】オーストラリアでは今年22年を迎えました。現店舗は17年目です。日本語の書店というイメージが強いとは思うんですが、英文書がメインの取り扱いです。日本は特に紙媒体の書籍の販売減少が叫ばれていますが、こちらは紙の媒体は堅調に伸びているようです。最近のトレンドとしてはオーストラリア人作家が堅調ですね。

【西原】オーストラリアではどんな分野が人気なのですか?

【河合】基本的には小説が多いです。最近、オーストラリア人作家コーナーを独立拡張させました。また、投資指南本の「Barefoot investor」という本が昨年当地初のベストセラーになりました。オーストラリアの書店はチェーン系と独立系、2つの潮流があります。大まかに言ってチェーンはボリュームで売る、値引きで売る一方、独立系は店舗の雰囲気とか品揃えなどの個性で売るといった感じなのですが、弊社は比較的その真ん中ですね。

【ジュリーク・山本】ジュリークはオーストラリア発祥のオーガニック系の化粧品会社です。ブランド設立が85年で、2012年に日本のポーラ・オルビス・ホールディングスが買収したのです。私は14年に社長ではなくて管理部門の担当で来まして、16年4月から社長をやっております。事業展開としては、コンセプトストアという直営、デパート、それからダイレクトで自社サイトを運営しております。NZへの卸しは、オーストラリアからみています。

ジュリーク・山本融 会長兼CEO

ジュリーク・山本融 会長兼CEO

【西原】ジュリークの本部はシドニーなのですね。

【山本】親会社は日本で、ジュリークの本部はシドニーにありますが、アデレードに工場と農場も持っていて、自分たちで主要な原料は作っています。「メード・イン・オーストラリア」がコアでして、バイオダイナミック農法という無農薬農法で作っています。我々はナチュラル、オーガニック系の化粧品会社としては先駆け的な存在だったのですが、いろんなブランドがこの分野に参入していますので、ブランドの戦略やマーケティングは非常に大事になっています。

【西原】以前は日本人観光客がオーストラリアでジュリークのナチュラル化粧品を買ってお土産にするのがトレンドだったことがありました。

【山本】オーストラリアに来た日本人はまだ買っておられますね。一つにやはりここがジュリークのホームカントリーなので日本とか他の国の価格より安いためでもあります。日本でも当然いろんな化粧品が多い中で、多くの人々にジュリークの持つユニークなストーリーに共感して頂いていると感じています。

【西原】オーストラリアは他民族国家なので、国民の特性を読む販売戦略が難しい気がしますが、皆さんどうされていますか?

【藤本】MUJIはほぼ日本と同じ品揃えで、基本的には白人系オーストラリア人に商品を使っていただくことを目指しています。しかし現在はまだ購買層の半分以上はアジア系なので、そこに支えて頂いている部分はあります。今後、規模が小さいうちはアジア人の住人が多い地域で認知度を上げてから、白人系の方々にも広げていくというやり方がリスクが低いと考えています。

【河合】商品の売り上げ特性は日本と違いますか?

無印良品(MUJI)オーストラリア・藤本健MD

無印良品(MUJI)オーストラリア・藤本健MD

【藤本】衣料品と生活雑貨の構成比にそれほど違いはありません。売り場の広さや棚割りもほぼ同じです。一部、人種によって売れ筋商品は異なりますが、例えば中国系顧客に一番売れているのは化粧品やアロマディフューザーなどです。逆にオーストラリアで売れているのは肌着や靴下ですね。それらは品質を見てくれているのだと思います。価格に関しては、関税の違いに伴って各国で異なります。FTA協定がない国では、関税の分、小売り価格が比較的高くなっています。

【小泉】我々は、価格を国ごとに大きく変えることは許されません。オーストラリアでは人件費が高いので小売価格は高くなりますが、基本的な幅の中には収めないといけません。我々は多品種少量なので現在扱っている型も軽く1,000種を超えていて、日本でしか売っていないモデルもたくさんあります。女性ものの「ルキア」はオーストラリアでは売っていません。

【西原】オーストラリアで売られている時計はどこで作られているんですか?

【小泉】組み立ては大体日本か中国でやっています。ざっくりいうと一定価格より上のものは日本で、下のものは中国で作っています。中のムーブメントはほぼ日本ですね。GSはすべてが日本製です。GSは最近すごく売れているんですけども、やはりメード・イン・ジャパン、日本のクラフトマンシップは非常に評価されます。

【西原】一部外資のアパレルは、アジア人客が多いにもかかわらず白人向けのサイズに特化していたために、進出当初は売れなかったということを聞きました。MUJIはどうでしたか?

【藤本】創業時は同じようにひと回り大きい欧米サイズを作っていて、こちらでも販売していましたが、売り上げは伸びませんでした。今は日本と同じサイズを販売しています。皆さんはオーストラリアは白人の国ととらえていらっしゃるのですか?それともアジアの一部でしょうか。我々も店に中国語を話せるスタッフを置きますが、それでいいのだろうかと思います。

【小泉】腕時計のデザインの好みというのも各国あるんですが、オーストラリアは欧米なんです。もちろんひと口には言えないですけども、売れ筋がかぶるのは英米ですね。明らかにアングロサクソンの国です。

SEIKOオーストラリア・小泉撤MD

SEIKOオーストラリア・小泉撤MD

【西原】時計もアジア人と欧米人で好みが違うんですね。

【小泉】違います。時計は、端的に言うと欧米系はゴテゴテ系なボリュームのあるモデルが好きなんです。日本も含めてアジア系はどちらかというとシンプルイズベスト的なところがあります。サイズ感も違いますしね。こちらでよく売れるのは黒と金色のツートンですね。日本だと「誰が買うの」といわれそうなモデルです。現状はそれをベースに売り場を作った方が回るのです。アジア、中国の方を中心に品揃えをするよりは、欧米目線の売り場の方が売りが立つと思いますね。

【藤本】顧客は白人富裕層が多いということですね。

【小泉】現状はそうですね。都市部でいうとアジア人が多いですけど、統計を見ると7割が英国系ですよね。中華系はまだ10%いないくらいでしょうか。都市部だとすごく多いですが。全土では、確かにお金持ち率は高いのかもしれませんけども、まだやっぱり西洋系のニーズが比較的強いと思います。

【西原】でもブティックは(中華系が多い)都市部にありますよね。

【小泉】我々のブティックはちょっと話が違いまして、ブティックでしか売っていないような、ものすごく高い物とか日本でしか売っていない物とか、セイコーのファンが来る店になっています。

【藤本】アップルウォッチの影響はあるんですか?

【小泉】それはイエスでありノーでもあります。売り上げはあまり落ちていないので共存できている感じです。500豪ドル(約4万2,000円)以下の市場は全世界的に緩いんです。そこはスマートウォッチに食われていると思います。ファッションブランドの時計が数多くありますが、あの価格帯は正直厳しいと思います。

【西原】セイコーの腕時計の機能が、多機能なスマートウォッチ側に歩み寄ることはないんですか。

【小泉】時計はすごく切り口が多い商品なので、100円ショップでも売っている一方で、100万円以上の商品も普通なのです。こんなに価格帯の幅がある商品は珍しいですよね。ですからおっしゃるようなさまざまな機能を搭載することもできますが、GSのように、世界の何人かしかできない、歯車とゼンマイを山にこもって組み立てているような手作りの時計の方が売り上げが高いのです。アップルウォッチやパナソニックさんと戦っちゃいけないんです。家電になったら時計メーカーはもう厳しいです。

【山本】機能面ではあまり差別化になっていないということですか?

【小泉】一方で「アストロン」といって、GPSを搭載していて、テクノロジーがバリバリの時計もあります。ソーラーで2万キロ彼方から受信して、調整して、それで止まらずに動かすという技術がとても難しいのです。100メートル防水なんて必要なのかと思われますが、そういう所に価値を感じていただきたいですね。

【西原】オーストラリア人やNZ人は服装はラフですが、時計も安い物でいいといった傾向はないのですか。

【小泉】そうした印象と比べ、きちんと富裕層がいます。GSも最近、高級時計のファンクラブとコラボして富裕層を呼ぶのですが、そういう方々がサンダルなんです(苦笑)。それが他の国と違うところです。他の国民は、一見して暮らしの程度が分かるんですが、豪州やNZではすごい富裕層が、半袖短パン、サンダルでビニール袋を持っていたりします。この間オークランドでGSのイベントをやった際、ネクタイしていたのは私だけでした。

【山本】まさに我々も商品企画の中で、ナチュラルやオーガニックの世界観やデザインをパッケージに表したいと思うのですが、オーストラリア人がやろうとすると、金色でゴージャスで、それがプレミアムになる意識があるようです。ただ日本人からいうと、先ほど小泉さんがおっしゃったような山奥で作るような価値がプレミアムだという感覚がありますね。やはり、我々もブランドは何なのかを強く打ち出したり、本物のナチュラルを訴求していった方がいいのではないか。お客さんによって振り回されると、我々の世界観がぶれると思うので、セイコーさんなどはそこが素晴らしいと思います。

【西原】化粧品の場合、アジア人と欧米人は、肌質から、ボトルの形状の好みまで違うと思いますが、そこも十把ひと絡げにぶれずに、変えずにやっていくべきでしょうか。

【山本】我々はそっちに軸足を置くのがいいと思いますね。ナチュラル、オーガニックは、当然ケミカルとは全然違うので、やはり豊かなものを出せるのです。他社と比べても、ジュリークの商品は本当にすごいと思っています。安易にナチュラル比率を下げて、もっと効くケミカルの物を入れて、効くからいいという議論に走るとだめだと思います。なのでやはり守るべき所は守る。その中で、お客様にどう使ってもらおうとか、肌質を考えてお薦めするものを変えていくやり方で対応すべきだと思います。だから、中国人専用商品とかはあまり作らない方がいいとは思いますね。

【西原】書店としてはどうですか?

【河合】弊社は8割が英文書、そのほかを中文書、日文書と分けていますが、元々おなじ英語話者を狙っているんです。弊社が皆さんと違うのはリテーラーであることなのです。我々は商品を生産するのではなくて、商品をセレクトしてそれをお客様に提供する立場です。だから選べるのです。展開している国によって、地域特性はあるんですけれどもリテラシーという部分ではある程度英語話者が持ってくる情報は一緒なので、大本の所ではあまり変わらないのかなと思います。

【小泉】アマゾンなどのEコマースは盛り上がりにかけていませんか?

オーストラリア紀伊國屋書店・河合勇佑 支配人

オーストラリア紀伊國屋書店・河合勇佑 支配人

【河合】少なくとも本については、アマゾンはまだ本気ではないように見えます。ブックス・デポジトリーというアマゾンの子会社があって、そこをサードパーティーセラーとして活用しているようです。オンラインの強みは価格ですが、ブックトピアという地場大手があり、そこも安いです。我々は価格では勝負しません。うちはお金よりもどういう風に楽しんでもらうか、そのストーリーですね。この本はこの紀伊國屋イベントで買ったとかそうした体験を充実させて、そこに市内の一等地で店を構えている意味を出しています。また、オンライン部門もあります。

【小泉】本社視点で言うと、当然オンラインがもっと伸びるはずだと言われますが、なかなか売れないんです。日本だとアマゾンが時計を売っていまして、相当な量なんですけれども、オーストラリアとなると、まともな統計がないような状態です。皆さんどうでしょうか。Eコマースってなんとなくまだ増えるという印象があります。

【河合】オーストラリア人ってすごく保守的な人たちだと思います。あまり変えたがらず、昔の雰囲気を残している気がします。これは俺の店、私たちの店という風に愛着を持ってきていただけるのかなという印象はありまして、そういった点では、豊かな懐事情もきついきついと言いつつも、日本ほどの圧力はないのかなと想像しています。

【西原】紀伊國屋書店のお客さんは他店に浮気せずに来てくれますか。

(続きはあす21日付で掲載します)


関連国・地域: オーストラリア
関連業種: 小売り・卸売り

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