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【アジアで会う】伊藤愛恵さん ABCクッキングスタジオ・シンガポール 第227回 料理教室の枠超えたコミュニティー構築(シンガポール)

いとう・まなえ 1989年神奈川県生まれ。成城大学社会イノベーション学部卒。2013年にABCクッキングスタジオに入社。現在はシンガポール現地法人でBtoB(企業間取引)事業を担当するシニア法人営業エグゼクティブを務める。趣味は料理や旅行。旅先で現地のクッキング教室に通い、帰国後に自宅ですぐに試すほどの料理好きだ。インドネシアやタイなどによく旅行に出掛け、滞在中に撮影した美しい風景や料理をインスタグラムに載せている。

「シンガポールでは『娯楽性』を求めて料理教室に通う人が珍しくありません」。ABCクッキングスタジオのシンガポール現地法人で、唯一の法人営業担当として教室で使用する食材や調理機器の調達・手配などを手掛ける伊藤さんは、こう言って笑う。

大学時代に自分がやりたいことを見つけるため、1年間休学して英国に留学した。多国籍・多民族社会に身を置く中で、ありのままの自分でいいんだと気付き「人生観が180度変わりました」。それ以来、海外に携わる仕事がしたいという思いが募っていった。帰国して就職活動をする中で、尊敬する先輩が勤めていたことや、積極的に海外展開する事業方針に魅力を感じABCクッキングスタジオへの入社を決めた。

■社長に海外赴任を直談判

入社後は東京本社で法人営業を担当。料理教室は、食品メーカーなどの顧客企業にとって自社商品をPRできる絶好の場所だ。食材だけでなく、生徒の大半を占める若い女性向けに訴求効果がありそうなファッション関連など、商品提供が期待できる多様な業種の企業を回った。顧客企業の商品を教室でPRするイベントの企画も手掛けた。「料理教室は生徒と顧客企業をつなぐ橋渡し役を果たせる」という思いがあった。営業は数字が命。「負けず嫌いなので終電もいとわず必死に頑張りました」。その甲斐あって営業成績を認められ、当時の社長が目をかけてくれるようになった。社長と言葉を交わす機会が増える中で「海外で働きたい」と直談判。その熱意が伝わり、現地1号店オープンから半年たったシンガポールに赴任した。

同国での担当業務は日本とほぼ同じだが、現地スタッフは料理教室運営のノウハウは理解していても、法人営業に関する知識はほとんどなく、BtoB事業の重要性を一から教えるのに苦労した。顧客企業も一から開拓。赴任直後にシンガポールで開催された日本食の大型展示会では名刺交換をして回り、日本の大手塩メーカーとの交渉にこぎ着けた。1年半後に商品提供のスポンサーになってくれたことはうれしい思い出だ。今でも積極的に食品関連イベントに足を運ぶようにしている。

■「新たな趣味」として料理を楽しむ

ABCクッキングスタジオは現在、海外会員数が9万3,400人、海外スタジオ数が32店舗(2018年9月時点)に上る。シンガポールでは繁華街オーチャードにあるシンガポール高島屋内と西部ジュロン・イーストの大型商業施設ウエストゲート内に計2店舗を出店。会員数は約1万300人と日本国外で最も多い国・地域の一つだ。会員の約99%がローカルの人で8割近くが女性。国籍はマレーシアや台湾など多様で、永住権(PR)保持者も多い。国土が狭く娯楽が少ないシンガポールでは時間を持て余し気味の人も少なくなく、冒頭の発言のように「新しい趣味」としてABCクッキングスタジオに通う人も目立つ。完成した料理をインスタグラムに載せるのを楽しみにしている人もいる。「(郊外の)ジュロン・イースト店では家族ぐるみで通う人もいます」

さらにシンガポールの生徒で多いのは、年に数回は日本を訪問する「日本通」だ。「日本で食べた味を自宅で再現したい」という声も聞かれ、「最近は煮物や魚の煮つけといった日本の家庭料理をレシピに入れてほしいという要望も増えています」。

日本好きの地元消費者には、輸出拡大を目指す日系食品メーカーだけでなく、観光や交通、金融など多様な業種の日本企業が熱視線を送っている。日本各地の食材を紹介することで、産地に興味を持つ人の訪日需要喚起が期待できるためだ。17年以降は、インバウンド(訪日外国人)誘客を目指す日本の地方自治体と日本産食材を使った料理教室を共催する事業の需要が拡大している。教室の現地スタッフや生徒が参加し、日本の農園などを回るファームツアーも実施。来年のツアー催行の準備も既に進めており、先ごろ日本各地を視察して回ったばかりだ。

シンガポール以外にマレーシアの法人営業も担当する現在は、両国を行き来する生活が続いている。自分と組んで営業を担当してくれるローカルスタッフを採用するのが当面の目標だ。

今後は日本企業だけでなく、地場や外資系企業ともスポンサー契約を結びたいと考えている。「外資系企業の商品を料理教室に提供してもらうことで、シンガポール進出を支援したい」との思いがある。将来は、料理教室を介して多様な企業が連携し合える「コミュニティー」を作るのが夢だ。伊藤さんは、料理教室の枠を超えた大きな商流が生まれる原動力になろうとしている。(シンガポール&ASEAN版編集・清水美雪)


関連国・地域: シンガポール日本
関連業種: 社会・事件

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