【アジアで会う】マノティップ・シリパパーンさん ナリー創業者 第189回 おしゃれなバッグを全女性に(ラオス)

マノティップ・シリパパーン 1987年、ビエンチャン生まれ。ラオス国立大学からフランスのリヨン第三大学に留学し、ビジネスマネジメントを学ぶ。帰国後、会社員として働きながらも、女性向けバッグを作る夢を諦め切れず、独立した。空手の黒帯を持つが、十分な稽古時間が持てないのが悩み。夫はロックバンドを組むアーティスト。

ラオス伝統のシルクを生かした同国初の女性向けバッグブランド「NAREE(ナリー)」を2013年に立ち上げた。お店は首都ビエンチャンの中心部から少し離れ、商品価格は12万~140万キープ(約1,600~1万8,000円)と、ラオス人の平均所得から考えると安くはない。それでも年約1,000個売れ、販売網も拡大。事業もようやく黒字化した。

両親は公務員、親戚も大半が公務員の家系だった。唯一異なっていたのが、母方の祖父。建設業などのビジネスで成功し、私財を寄付して小学校も建てた。「おじいさんのように独立して社会の役に立ちたい」。小さい頃から思い描いていた夢を実現させ、ナリーのオフィスも祖父が建てた小学校の付近に構えた。

■友人から火が付く

ラオス国立大学でフランス語を専攻し、フランスのリヨン第三大学への留学を勝ち取った。同国でインターンをした不動産会社での経験を生かし、ラオスに戻ると不動産会社に就職。いずれは独立と考えていたが、フランスと異なる商習慣に悪戦苦闘し、不動産業での独立は諦めた。親のすすめもあり、狭き門だった国内最大手銀行BCELに入行した。

不動産業界で仕事をしていたときから、女性用バッグのデザインには関心を持っていた。友人の結婚式に出席した際、伝統衣装を着た若い女性が使うおしゃれなデザインのバッグが国内にないことに気付いた。

仕事の合間を縫ってバッグを自作すると、友人から「欲しい」との声が相次ぐ。商品に手応えを感じ、試しに10個ほど製造したが、現実は甘くない。一般の消費者には売れなかった。

「商品の質ではなく、販促方法が問題なのかもしれない」。売れなくても、一からデザインを手掛けたバッグには自信があった。バッグのデザインに合いそうなラオスの伝統衣装を販売する店に置いてもらったところ、バッグが売れた。マーケティングが重要だと実感した。

副業のバッグ販売に注文が入るようになったのは良かったが、同時に銀行での業務も忙しくなった。行内での業務は求められる以上のアイデアが常に浮かんでいたが、属している組織は大きい。企画が通ることは少なかった。独立したいとの思いが募った。

そんな折、12年に世界銀行が主催する若手起業家の発掘コンテストがあることを知る。「女性向けバッグブランドを一緒に立ち上げないか」と誘ってくれていた友人と共に参加することを決めた。

有給休暇を全て使い、コンテストに集中した。数十チームが参加する中、みるみる勝ち上がった。コンテスト中に開いた即売会では、2日間で600米ドル(約6万5,000円)分を売り上げた。「ビジネスとしてやっていける」。そう思った矢先、友人から「念願だった銀行への就職が決まったから、これ以上はコンテストを続けられない」と告げられた。

ショックもあったが、「即断即決で事業を進めることができるようになる」と前向きに捉え、自信に変えた。コンテストのプレゼンにも熱が入った。結果は入賞。5,000米ドル(約54万円)を勝ち取った。

■いずれは社会貢献

世銀のコンテスト後にナリーを立ち上げ、しばらくは銀行と二足のわらじを履き続けた。銀行の午前業務が終わると、昼ご飯を車中で食べ、従業員に指示を出し、銀行業務に戻るような生活が続いた。

世銀のコンテストで勝ち取ったお金は運転資金に回したが、すぐに消えた。銀行から融資も受けたが、事業は立ちゆかなくなり、スタッフも去った。ビジネス成功者の書籍を読み、セミナーなどにも参加したが、苦しい状況は続いた。

変化が訪れたのは、ラオス女性ビジネス協会の知り合いに誘われたカンボジアでのセミナー。同業者とのネットワークが広がり、ラオスのシルクを生かしながらより大きな枠組みの中で事業を展開するヒントを得た。

バッグの注文が増えたことで、自前での生産から委託生産に切り替えた。国内外を飛び回り、多くの協力者に出会い、事業は安定していった。ようやく、スタート地点に立った。そんな心境だった。

「ラオスの全ての女性におしゃれなバッグを届けたい」。その先には、委託しているバッグ製造を内製に戻して雇用を増やし、社会に貢献する未来図がある。何回転んでも、実業家の祖父という目指すべき背中がある。(プノンペン支局記者・竹内悠)


関連国・地域: ラオス
関連業種: 商業・サービス

その他記事

すべての文頭を開く

埼玉など4自治体、ラオスの水道事業支援(05/24)

中国海南省、2都市に直航便就航へ(05/24)

証取の売買額3倍、17年は4100万ドル(05/23)

世銀など、国道13号線改修を支援(05/22)

アユタヤ銀、ベトナム消費者金融の参入先送り(05/22)

ラオス事業家百人の紹介データ、後編を発表(05/21)

ラオス中国鉄道、影響住民への補償承認(05/21)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社エヌ・エヌ・エーは一切の責任を負いません。

出版物

各種ログイン