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<特別寄稿>グリーンディール産業計画と欧州経済の復興(上)

欧州では、差し当たりエネルギー・食品価格の高騰が終息したものの、コアインフレ率は高止まりしている。これに対して、欧州中央銀行(ECB)が8会合連続で利上げし、今後も継続すると表明したことも響き、景況感は悪化している。欧州連合(EU)の鉱工業生産指数は4月以降上昇に転じてはいるが、6月の総合PMI(購買担当者景気指数)は2020年初以来最低を記録し、これまで比較的楽観的であったドイツ景気期待指数(ZEW)や投資家信頼感指数(Sentix)も悪化している。
同時に、世界的なグリーン補助金競争が激化している。中国は、電気自動車(EV)の普及に公的資金を投入し、今や欧州を越えて世界最大のEV供給国である。米国は、インフレ抑制法(IRA)によって再エネやEV関連分野に3,700億ドルを投じる計画だ。既にドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)や高級車大手BMWといった欧州企業が米国でバッテリー工場を建設するなどの動きがあり、欧州の産業空洞化の懸念さえ取り沙汰されている。(立教大学経済学部教授・蓮見雄)