2005年 10月 5日(水)

労働法に関するQ&A(26)老齢保障積立金の引き下ろし[労働]


Q1.以前、NNAの当特集記事に、外国人の閉鎖ポジションについて「社長、副社長以外の人間が人事関係書類や経理関係書類に責任者としてサインしてしまうと違法行為を犯しているとみなされる。」という記述がありました。

Q1-1.責任者としてサインするとは、どういった場合を指すのでしょうか?

A1-1.以下の二つの場合です。

1)その部署の責任者として役員会/社長へ提案するため、稟議書などにサインする。

2)最終決裁権を持った者として文書にサインをする。

Q1-2.人事関係書類、経理関係書類とはどういう書類をいうのでしょうか?

A1-2.人事経理に関係する全ての書類だと思ってください。

Q1-3.例えば、50万ルピアの備品を購入して、伝票に「総務マネジャー」「経理部長」「外国人役員(社長、副社長でない)」のサインしかない場合、それは経理関係書類に責任者としてサインしたと解釈されるのでしょうか?

A1-3.書式で区別できます。決済権者として固定的なサインの位置が決められているのは総務と経理だけにしておき、その枠/欄外にパラフを入れるようにすれば、決裁権者とは見做されません。サインの固定枠があると、役職の上位者として最終決裁権をもっている者と見なされます。

Q1-4.また、稟議書等で財務というサインの欄に「外国人役員」がサインして、さらに「社長」や「副社長」のサインもある場合はどうでしょうか?

A1-4.稟議書の場合、総務と財務のサインがあるのはごく自然なことですし、社長、副社長のサインがあれば、まず問題ありません。また、財務担当役員が財務のサイン欄にサインをするのは構いませんが、他の役員が財務の欄にサインをするのはもちろんだめです。

Q2.弊社には女性社員が70%以上の比率で在勤しておりますが、最近既婚女性の産休取得により人員管理が大きな問題になってきており、出産に係る費用負担も無視できなくなってきています。そこで質問させてください。

妊娠後その定期検診や臨時の診療等妊娠に係る休みを規定の3カ月から差し引く事は可能でしょうか? 

妊娠後毎月検診等で1~2回休めば、出産までに延べ2週間ぐらいの休みを取ることになりますので、これらが全て有給休暇では会社はたまりません。

何とか出産時の3カ月の有給休暇の中に、事前に取った妊娠に係る休みを押し込みたいのですが、関連法令からみて可能でしょうか?

A2.妊娠は病気ではないので、病欠として認める必要はありません。休みたいなら、年休申請をすべきです。但し、母体保護のため休憩が必要だなどと書かれた診断書が提出されれば、これは病気休暇を認めないといけません。尚、出産休暇を削ることはできません。(これは休暇の目的が異なるからです)

また検診の為に休みを取りたいという従業員には、終業後あるいは土曜日に行ける病院を紹介してみたら如何でしょうか。ジャカルタ周辺では夕方から夜、診療を行っている病院、また土曜日に診療を行っている病院もたくさんありますので、可能なはずです。

さらに、社内研修で、生理や妊娠について教育されることも必要かと思います。年に1回くらい、ドクターを呼んで以下のテーマで研修されたらいかがでしょうか。

(1)生理日を快適に過ごす⇒誰でも生理痛をより軽くすることは可能です。

(2)妊娠と出産⇒妊娠初期、後期の注意事項、初産の場合の注意事項など。

Q3. 労働社会保障(ジャムソステック)の件で、労働組合(PUK)より、会社ステータス変更に伴い、今まで旧社で積んできた老齢保障の積立金を下ろしてほしいという要求がありました。

そこで調査してみますと、キャッシュでおろす場合、その従業員を解雇することが絶対条件になっており、これがないとキャッシュバックはできないことがわかりました。

今回のステータス変更で解雇は1名も行っておりません。解雇しないで、積立金をキャッシュバックする方法がありますか?

A3.法令(政府通達1993年第14号)によれば、退職しないと老齢保障の積立金は受給できないようになっていますが、以下のような方法がJAMSOSTEKが認めた実例としてありますので、最寄のジャムソステック事務所でもご確認ください。

貴社は株主変更により社名変更もされたとのことですが、そうなると別法人としてジャムソステックに登録しなければならず、旧社における在職証明(入社日と退職日を明らかにし在職期間を明記したもの)を発行することは可能なはずです。それをジャムソステックに持ち込めば、積立金の引き下ろしは可能となるとのことです(同時に従業員とは新たな雇用契約書を結び、在職期間は継続していることを明らかにしておかれるとよいでしょう)。

Q4.当社はスラバヤに駐在員事務所を開いて活動しておりますが、親会社が東南アジアの統括をタイの法人に移すために、事務所の名義変更をしなければならなくなりました。

これを役所に確認すると旧事務所を閉じて新事務所を新規に開設するという手続きを踏まなければならないと言われてしまいました。従業員は、全員継続雇用が可能ですが、今回、退職金を払わないとだめですか?

A4.これは従業員たちが受け入れれば、必要ありませんが、今払っておいたほうが安く付くでしょうから、資金的余裕があれば支給されたらどうでしょうか。ただし、考え方は二つあります。会社都合の解雇となれば法定の2倍ですが、会社のステータス変更を原因とする自主退職となれば、法定の1倍で済みます。

ジャカルタの労働省に確認したところ、実質上株主変更による会社の名義変更なので、ステイタス変更という解釈を認めてもいいと申しておりますが、スラバヤの労働省がどう解釈するかは分かりません。ご確認ください。

Q5.社員の残業制限はないと聞いていますが、法律上許されるのでしょうか?

A5.法律の中で標準時間(1日3時間、週14時間)の提示はありますが、労働省は制限をかけてきませんので、今のところ上限はないと考えてよいでしょう。ただし、毎年提出する就業時間・休憩時間の例外適用申請において貴社の平均的残業時間は労働省地方事務所に報告しておいてください。

Q6.外国人労働者の為のインドネシア語能力試験実施といううわさがまた流れていますが、実施される可能性や実施時期について何か情報があれば教えてください。

A6.我々が調べる限りでは、まだ具体的な計画は決まっておりませんが、大臣決定2004年第20号の外国人労働者の条件を定めた第2条c.に「インドネシア語で意思疎通ができること」と明記されており、法令上ではインドネシア語は必須条件になっております。しかし、およそ現実的ではない規定ですので、今のところは慌てずに待たれればよいと思います。新しい確実な情報が入り次第、またお知らせすることにします。

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