コラム:テイクオフ


インドシナ戦争を追ったピュリツァー賞カメラマン、沢田教一氏がカンボジアで射殺されて50年。関連する本を読み返し、ドキュメンタリー映画を見た。

受賞作を超える写真を求め、より危険にのめり込むうち、命は突然絶たれた。改めて驚くのは、当時の風景と、道路も街も整備が進んだ現在のインドシナとの落差だ。銃撃現場は、今は普通の幹線道路。戦争が生んだ不条理な死というほかない。

作家、三島由紀夫の割腹自殺も50年前。こちらは憂国の思想と美意識に基づく計画的な死だったが、彼が小説「暁の寺」の舞台としたタイも、ここ半世紀の変貌は著しい。三島は書いた。「芸術は巨大な夕焼けだ」「何が始まったのか。何も始まらない。ただ終わるだけ」。自死が与えるはずの衝撃も、時が過去に押し流すと覚悟していただろう。二人が世に残したものを、忘れずにいたい。(範)


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