2004年 1月 21日(水)

賃金について(3)[労働]


Q1.従業員に提示する金額は税込み(Gross)と税抜き(Net)のどちらが多いですか。

A1.これに関しては正確な統計がありません。製造業では、賃金レベルが低い従業員が多いので、税抜き金額で契約されるところが多いです。但し、ある賃金レベル以上の役職者だけは税込みで契約しているところもあります。非製造業では製造業より税込みが多くなっているようですが、圧倒的なものではありません。

Q2.賃金の遅配を起こした場合に、何かペナルティがありますか。

A2.法令では下記のように規定されています。

(1)給与の支払いが遅延した場合、給与を支払うべき日より起算して4日目から8日目までの間は1日当り5%ずつ増額した給与を支払うものとする。8日目を過ぎた場合は、1日当り1%ずつの増額とし、1カ月当り50%の増額を限度として支払うものとする。

(2)1カ月を過ぎても給与が支払われない場合は、経営者は上記(1)の増額された給与を支払う義務の他に、当該会社の口座に対し銀行が定めた利率で計算された利子を加えた金額を支払わなければならない。

(政府通達1981年第8号第19条)

Q3.当社は今年8月に操業を開始する予定です。レバランまで3カ月ほどしかありませんが、THRは払わなくてもよいのでしょうか。

A3.法令では、継続して3カ月以上の勤続期間を持つ労働者に対しては、下記の計算式を用いて勤続期間の割合に応じた金額を支給する。(労働大臣通達1994年第4号)

(勤続期間÷12)×賃金1カ月分

従って、8月初旬の操業であれば11月初旬に3カ月を超えますので、固定給の25%のTHR(宗教祝日手当)を支給しなければいけません。しかし、もしも3カ月を超えない場合でもいくらかの援助金は出しているのが通例ですので、ご検討ください。

Q4.当社ではレバランの2週間前にTHRを支給しますが、その支給日前に退職する従業員にはTHRを払わなくてもよいのでしょうか。

A4.法令では宗教的祝日の30日前在籍者には受給の権利があります。(労働大臣通達1994年第4号第6条)ですが、31日前に退職する従業員に払わないかと言えば、大部分のケースでは支払っています。というのも退職金交渉の際に、必ずTHRの支給は要求項目になってくるからです。逆にいうとTHR1カ月分の上乗せで納得させている企業が多いということです。

Q5.会社が支給すべきファシリティ(食堂・食事・制服・祈祷場所・通勤手段・住居など)について法令で何か決められていますか。

A5.法律や政府通達/大臣通達/大臣決定書などで会社の義務としているのは有給休暇と冠婚葬祭に関する特別休暇の取得許可およびJAMSOSTEK(労働社会保障)への加入だけですが、州知事決定/県知事決定のレベルではいろいろな規定がある可能性があります。例えば西ジャワ州では以下のファシリティの供与を企業の義務としています。(西ジャワ州知事決定1990年第32号)

1) 労働者および家族の為の医療施設 2)宗教施設 3)制服 4)食堂施設 5)スポーツ施設 6)労働者娯楽施設 7)交通施設 8)寮施設 9)住宅施設 10)休憩所施設 11)会合施設 12)託児所 13)就業時間外保険 14)共済組合 15)教育施設 16)その他福利厚生にかかわる事業

勿論、各企業単位でこれら全てを実行できているところはほんの僅かでしょう。また今のところ、各労働省地方事務所もこれらに関してうるさく要求はしてきておりません。しかし、この中の13番「就業時間外保険」に関しては、労働省はうるさく指導を入れてきた時期がありますので、ご注意ください。

Q6.従業員が交通事故で大怪我をして手術を受けましたが、その費用が3,000万ルピアだと言います。会社の医療手当は年間500万ルピアまでです。会社としては援助すべきでしょうか。

A6.もしその従業員が一般ワーカーであれば、3,000万という金は自分では用意できない可能性のほうが高いでしょう。会社としてはある程度みてあげるべきではないでしょうか。対処方法は3つほどあります。

 1)会社が不足分全額を負担して、復職が可能であれば、給与から天引きして返済させる。

 2)会社が不足分の一部を負担をして、残りは日本人スタッフで補填する。

 3)会社は医療費の年間上限額までしか負担しない。従業員全員から寄付金を募り、日本人も寄付をして助ける。

※実際は1)か3)が多いようです。

Q7.解雇の際に転職処分をかけた場合、固定給だけは払わなければいけませんが、解雇の許可がとれるまでずっと払わなければいけないのですか。

A7.これは、大臣決定2000年第150号においては「固定給の75%を最長6カ月間支払うこと」と規定してあったのが、新労働法では「固定給100%を解雇の許可が当局から下ろされるまで払うこと」と改定されたことに関連する質問ですが、昨年12月に国会を通過した「産業紛争解決法」においても、特別な期限設定はありません。

ただ「産業紛争解決法」では仲裁まで約2カ月(最高裁に上告されても約3カ月)、調停を経て産業関係裁判所まで約4カ月(最高裁まで上がっても約5カ月)で審議を終了し裁定を下すと書かれており、これが実施されれば6カ月未満で解雇の許可が下りるか否かがはっきりすることになります。

しかし、「産業紛争解決法」は施行までまだ1年ありますので、ここ当面は停職期間が6カ月間経過する前に労働省もしくは地方/中央労使紛争調停委員会に賃金支給について裁定を仰ぐべきでしょう。



●お詫びと訂正

第11回(2003年12月17日付掲載)の賃金に関する解説で下記のように書きましたが、正確ではありませんでしたので、お詫びして訂正させていただきます。

1)固定給は残業代を除く賃金総額の75%以上とする。 残業手当の算定基礎に関する労働大臣決定書1984年第72号第3項には下記のように規定されています。

「残業手当の算定基礎となる給与の総額は、同時期に支払われた給与総額の75%より少なくなってはならない。」

そして、この大臣決定の注釈の第4項には下記のように解説されています。

「もしもこの大臣決定書の第2項の給与の構成要素の合計(=固定給を意味すると言われています)が、同時期に支払われた給与総額の75%より小さいとき、残業代の計算基礎は給与総額の75%に基づくこと。」

これを労働省の担当官は、「固定給は残業代を除く賃金総額の75%以上」とするようにと指導する場合が多いので、第11回の解説でそのように書いてしまった次第です。

従って、固定給が給与総額の75%に届かない場合でも法令違反ではありませんが、最寄の労働省地方事務所の担当官に確認なさってみてください。(地域によって或いは担当官によって指導が違うと思います。)

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