2001/12/03

第54回 台湾凸版国際彩光(CFI)<凸版印刷>、ミクロン単位のゴミと戦うCFメーカー



液晶パネルの画面をカラー化する色合成膜、カラーフィルター(CF)。ガラス基板の上に赤・青・緑の3色のアクリル系樹脂顔料をマトリックス状に細かく配置したもので、液晶ディスプレーのカラー品質を左右する重要な存在だ。

西郷正勝CFI会長

「台湾凸版国際彩光(CFI)」は、CF製造で世界最大手の凸版印刷の台湾子会社だ。「顧客メーカーの近くで製造と販売を行う」という方針から、2001年3月に台南科学工業団地に設立され、翌2002年6月には200億円を投じたTFT-LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレー)向けCF工場を完成した。

同工場では、顔料を乗せる黒い網状のクロム樹脂膜「ブラックマトリックス」のエッチング加工や、有機色素を露光による現像(リソグラフィ方式)で順番に配置するカラーパターニングなどの工程を設置。月間生産能力は約70万枚(12インチ換算)で、日本の工場と合わせると340万枚(同)に達し、世界最大の生産規模を誇る。

■良品率を高める生産環境に

CFIは、TFTパネルの生産サイズの大型化に対応するため、現在680mm×880mm、730mm×920mmサイズで生産を行っており、さらに来年4月には1,100 mm×1,300 mmサイズの第5世代ラインを立ち上げる計画だ。 一般に生産サイズが大きくなるほど、良品率を維持したまま高速量産するのが難しくなる。最大の問題はパーティクル(異物)の混入だ。生産面積が拡大した分、混入する割合が高くなってしまうため、生産環境への細心の注意が必要となる。西郷正勝CFI会長の「量産時の全面良品率は90%以上で業界一」という自負を裏付けるのは、クリーンルーム内での徹底した管理だ。わずか1ミクロン(1,000分の1ミリ)の異物でもCFの厚み(0.8~1.2ミクロン)を越えてしまうため、独自の管理基準を設定して異物の排除に努めている。特に混入しやすい露光機とカラーコーティングの工程は、「0.3ミクロン以上の異物が1立方フィートに10個以下」ともっとも厳しい基準を設定している。

このほか不良品を出さない対策として、クリーンルーム内の温度管理がある。特に大量の熱を発する露光機周辺は注意が必要で、0.1度の温度差で管理し、季節に関係なく摂氏23度に保っている。温度を一定に保つ必要があるのは、温度変化によってCFのガラス基板が収縮・膨張し、ガラスの上に現像したブラックマトリックスの1マスの幅(トータルピッチ)が不均等になったり、顔料の現像位置がずれたりするのを防ぐためだ。なお同社の露光機は730mm×920mmまでのCF基板の対応が可能で、従来のように1枚のCF基盤を分割して露光する手間が省け、量産効率を高める能力がある。また西郷会長は「台湾は凸版にとって最も重要な海外市場」と語る。台湾市場が凸版印刷の売上高に占める割合は約40%に上り、液晶パネルの生産で世界一の韓国を上回る。これは台湾が韓国に比べ、TFT-LCDメーカーの外部調達率が高く、参入しやすかっためだ。

このため同社は「当面は台湾市場を中心に取引先を拡大する」考えだ。 また競合他社は大日本印刷など日本メーカーが主で、CFIの台湾でのシェアは半分近い。

CFIの台湾での歴史はまだ浅いが、業界最高レベルの実力が台湾でどのように発揮されるか、注目を浴びている。

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