2001/09/17

第45回 台湾田辺製薬<田辺製薬>、実績生かし、グループのアジア生産基地へ



台湾では今年6月、医薬品の製造管理基準が以前にも増して厳格になり、一つ一つの製造工程に薬効への意味づけ(バリデーション)が必要になった。多くの外資系メーカーが既に撤退し、さらに設備投資を含めた新基準への対応が難しいため、現在地場・外資系を合わせて200社の業界規模が、50~80社まで縮小するという観測もある。その中で台湾田辺製薬は、日本市場向けの糖衣錠の生産を台湾に移管するなど、むしろ台湾での生産を強化する方針を打ち出している。

廖武工場長、石井会長兼社長、近藤顧問

同社は1962年9月の設立で、ちょうど40周年を迎えた。これは、グループの海外子会社の中では最長だ。新竹県湖口郷にある工場では現在、心血管系の薬品やビタミン剤などの錠剤、皮膚病の軟膏を含め39品目(うち3品目は輸出向けのみ)を生産している。狭心症血圧降下剤「ヘルベッサー」は年間生産量5,000万錠に上り、台湾市場でトップシェアを誇る。

現在の生産比率は医療用が70%、大衆薬(一般向け薬品=OTC)が12~15%で、台湾市場向けが約90%を占める

品質への信頼が最重要

「医薬品の製造現場では、「GMP(Good Manufacturing Practices)」と呼ばれる各工程の品質確認が義務づけられている。異物混入や外観の異常などがないかといった細かいチェックは、全体で10~15回繰り返される。この際に、機械による検査とともに、目視検査が頻繁に行われる。異物混入があった場合、機械では色が薄く薬品と見分けがつかなければ見逃すこともあるが、目視ではこうした異状を発見できるなど、機械よりむしろ確実と思えることもあるという。熟練工になると、問題が発生する前に気づいて未然に防げることも多いのだそうだ。

同社では錠剤の場合、肉眼でやっと確認できるマイクロメートル単位の異物の混入でさえ、生じる確率は1万個のうち4個しかない。限りなくゼロに近い数字が要求されるが、近藤斉・同社技術顧問は、「人の命の重さはどこの国でも同じ。台湾田辺の薬の品質は大丈夫という安心感をお客様に与えるためには、当然の作業です」と語る。

工場

輸出向け生産拡大目指す

台湾田辺が今後の目標として掲げているのは、輸出向け生産の拡大だ。同社は今年2月、日本本社がグループ全体のコストダウンを図るため日本での生産を打ち切った糖衣錠の生産を請け負い、日本市場向けに生産を開始した。これは、台湾田辺が親会社と全く同じ生産レベルを、直ちに実現できると判断されたためだ。

石井侑・会長兼社長は、日本市場向け糖衣錠の生産を足がかりに、さらにほかの品目や、他社向けの委託生産も手がけたいと語る。「ゆくゆくは、台湾田辺にグループのアジアにおける生産基地としての役割を担わせたい。例えば台湾では高温多湿な気候のため皮膚病患者が日本より多く、われわれは軟膏製造のノウハウも豊富です。次は軟膏の輸出向け生産を始めるつもりです」と話す。

輸出向け生産は、来年をめどに現在の3倍の水準に当たる、生産比率の30%にまで拡大する考えだ。輸出向けはまだ始まったばかりのため、品質確認をしながら生産をしている段階。近藤技術顧問は「早く通常作業での稼働を目指し、作業時間を国内市場向けと同水準までに短縮したい」と意欲を語った。

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