2001/09/10

第44回 奈良日本、手を抜かない弁当づくり



中華料理には慣れているが、日本独特の懐かしい幕の内弁当を職場で毎日食べたい――。日本人駐在員のそんな期待に応えようと、奈良日本有限公司が日系企業の集まるビジネス街で奔走している。「奈良弁当店」の日本人店長・奈良仁さんに、弁当屋経営の経緯や苦労を聞いた。

弁当

奈良さんは5年前に香港を旅行中、北海道の西武デパートに勤務していた関係で、香港西武内の日本人向け総菜店の職を紹介された。総菜店で働き、総菜サプライヤーとの取引手法や弁当づくりのノウハウを身に付けた。

そこで、独り立ちしようとさまざまな人から手ほどきを受けているうちに、九龍にある日本人向け弁当屋が閉鎖したことを知った。「今開店すれば、あとの顧客を引き継げる」とにらんだ奈良さんは急きょ、小さいながらも96年3月に「奈良弁当店」の開店にこぎ着けた。

99%が日系顧客

「食物製造ライセンスの取り方や店内改装の仕方など、初めは全く暗中模索の状態でした」と、奈良さんは笑う。 当初、電気釜を3台置いてエアコンを付けたらすぐにヒューズが飛び、厨房の電気容量が足りないことに気が付いて、配線工事を依頼したら、3万HKドル以上も出費がかさんで四苦八苦したという。

奈良弁当屋の顧客は現在、99%が日系企業の日本人駐在員で、これまでに約50社の顧客企業を持つ。売り上げはオープン後約2年間は漸増したが、97年を境に日系企業が撤退し始めたため、それに伴って売り上げも伸び悩んだ。現在はそれでも毎日約150食、約8,000HKドル弱を売るという。

現在、配達要員を含め、従業員10人を抱える。配達スタッフは、でき上がった弁当を地区ごとに分担し、タクシーに乗って人海戦術で配達する。午前10時半までに注文を受け取る限り、九龍地区のほぼ全域に配達可能だという。また最近は、香港島(セントラル、アドミラルティ、太古城方面)への配達も始めた。一度配達した先は、ファクス番号を控えておき、次回からは月の日替わり弁当表と注文用紙を送り、客層を伸ばした。今までは日系企業の駐在員が大半の顧客だったが、日本人家庭からの注文も徐々に増えつつあるという。

メニューは日替わり弁当のほか、「のりさけ弁当」「牛丼」などの定番メニュー合わせて約14種類。一番人気があるのは「メンチカツ弁当」、「白身魚弁当」などだ。

スタッフ

コンビニで情報収集

日本人数の減少とともにシェアが小さくなる業界。そのためマーケットを香港人対象にも広げることも検討している。ただし「香港人は冷えたご飯を食べる習慣がないため、興味本位に注文してきた後は固定客にならない」として、新たな顧客戦略を考案中だ。 奈良社長は、日本に一時帰国した際には、必ずコンビニに立ち寄って弁当情報を収集したり、弁当屋のチラシを集めておかずの並べ方を工夫したりと、研究は欠かさない。

奈良社長は「日本人は確かに減っているが、宣伝をきちんとして手を抜かずに作っていけば、商売はまだまだいけます」、そう自信を示している。 奈良弁当への注文・問い合わせは電話2785-1305まで。

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