2001/04/23

第25回 台湾山崎<山崎製パン>:喜ばれる焼きたてパンを目指して



台湾は近年、パンの需要がうなぎ上り。パン人気が拡大する中、台湾山崎は、販売するパン商品の8割以上を店内で焼いている。調理面積の限られた店舗では作れない食パンや和・洋菓子、そして冷凍パン生地を製造し、各店舗でのパン作りを支えているのが同社の台北県林口郷の製パン工場だ。

台湾山崎は現在、台北、台中、高雄などの百貨店内で計18の直営店を運営し、食パン、菓子パン、デニッシュ、和洋菓子などを販売している。菓子パンとデニッシュは、各店舗で生地を作る手間を省くため、工場で作ったパン生地を冷凍させた状態(冷凍生地)で各店舗に配送する。

■天然の風味を守る冷凍生地

冷凍生地は、冷凍しても風味が落ちない工夫がポイント。同社では、冷凍耐性のあるイースト菌を生地に加えた上、強力粉や砂糖、塩、脱脂粉乳などを混ぜ合わせたミックス粉の配合バランスによって、生地自体の冷凍耐性を引き上げ、自然な風味を引き出す独自の手法を採る。天然のおいしさを守るため、人工添加物には一切頼らない。

台湾山崎はこのミックス粉を用い、林口工場で40種類の菓子パン用とデニッシュ用冷凍生地を生産する。ミキサーでこねて生地種を作り、冷凍前に約1時間発酵器で発酵させるところがほかの製パン企業にはないプロセス。こうすることで、焼き上がり時にイースト菌特有の生臭さが抜け、ふっくらしたマイルドな味わいを出せるのだ。

この後、発酵して膨らんだ生地を小さく分割して形を整え(成形)、マイナス20度の冷凍室で30分かけて急速冷凍する。でき上がった冷凍生地は直ちに冷凍車で各店舗に配送され、ほぼその日のうちに焼いて店に並べられる。

台湾で売れ筋をつくる試み

台湾山崎は月当たり3~5アイテムのペースでパンや和洋菓子の新商品を発売しており、本社の山崎製パンで開発された商品を含め、現在約300以上の豊富なアイテムを有する。新商品は毎月の売上高増加分への貢献率が12~15%と高く、売り上げを伸ばす上で重要な存在だ。王勝聰工場長は、「絶えず新商品を開発、発売し続けることは当社にとって生命線」と新商品の重要性を強調する。新商品は月間売上高100万台湾元以上の売れ筋となることを目指して開発されるが、原材料や香料の調達から始まり、台湾人の食感に合う商品の試作と製法研究を繰り返すため、開発には平均約3カ月を要する。

昨年発売された「デニッシュ・メロン(丹麥菠蘿)」は、今年3月に月間売上個数8万個、同売上高約270万元のトップ商品になった。日本のメロンパンをモデルにしたが、柔らかい食べ物の多い台湾ではクッキー生地の固い食感が受けないため、デニッシュ生地を菓子パン生地に加えて柔らかい食感を作り出した。「台湾人の口に合うさっくりした柔らかさを出せたことがヒットにつながった」と王工場長。甘味も台湾になじみのあるココナッツミルクを使ったことが、受け入れられた理由という。

ベーカリーカフェを目指す

「台湾でも品質の良い焼きたてパンをその場でゆっくり食べたいという人が増えてきました」。立花敬三取締役は、今後はカフェテリア形式の店舗形態を広げていくと話している。台北県の板橋新駅構内の直営店はこの店舗形態の1号店で、将来はさらに店舗数を増やす考えだ。台湾山崎にとって、台湾の人々に焼きたてパンをおいしく食べてもらうための新たな挑戦が始まる。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン