2001/02/19

第17回 韓国シャープ<シャープ>、中国に負けない生産会社へ、改善を追及



韓国シャープの佐竹嘉之・理事(取締役)工場長は「中国に負けないためにはどうするべきか」を常に考え、ものづくりに取り組んでいる。安い労働力を武器に「世界の工場」として成長を続ける中国以上にメリットのある生産会社を目指すという。

韓国シャープの主力製品はPOSシステム、ECR(電子レジスター)。このほかには、韓国市場をほぼ独占している電子辞書、昨年11月に生産を開始したハンディターミナルなどの情報機器や、ポータブルMDプレーヤーのボディ・パーツも生産している。従業員数は現在約320人。

最近ではEMS(生産受託)にも力を入れている。現在、同社の取り扱い製品のうちシャープ関連製品が80%以上を占めるが、残りはEMSによる欧州向けのセットトップボックスなどを生産している。

少量多品種生産で勝負する同社は、開発・設計から生産までを一貫して行うことにこだわりがある。「ものづくり」を続けていなければ、良質でコスト競争力のある製品を生み出すことができなくなり、いずれは製品開発力も失うとの考えからだ。

佐竹工場長は、生産を外部に移すことによる、生産にまつわる技能・ノウハウの消失に対する危機感を持つべきだと強調する。「生産の過程を知らなければ、良い製品を開発することもできなくなる」と話す。

作業の最適化を徹底

主力製品で、全体の約80%を占めるPOS、ECRのラインを例に、生産性向上のための取り組みについて話を聞いた。

ラインはセル方式とベルトコンベア方式の混合ラインだ。ECRのラインは、上部ユニットを積み替え、次の工程に運ぶ作業を省くため、ミニ・コンベアを渡し、H字型に組んである。「最も早いやり方は何か」を優先した結果だという。

こうした工夫で、ラインの規模は当初の半分に短縮され、トータルでの生産性は15%以上向上した。

また、2種類あるECRのうち、米国向け低価格版ECRのラインでは、コンベアの横に、立ち作業と座り作業の人が交互に並ぶ。

いずれも「最適な組み合わせ」を試した結果で、こうした改善・見直しを繰り返すことが、競争力を維持するためには欠かせない。

「そうでなければ生産が中国へ移ってしまう。現状が最高だと思っていてはだめ」と、現地社員にハッパを掛け続けることも忘れない。

徹底した「ムダ」排除のためには、品質管理の向上も重要になってくる。さらにミスをなくすこと。佐竹理事が工場長に就任した1996年から、従業員の意識改革は着実に実を結んでいるという。

調達からコストダウン

生産性をさらに上げるには資材調達の面から改善し、トータルでの効率化、コストダウンを図ることが必要になる。このため、資材担当の奥谷道夫理事が日本から応援に駆けつけ、今年1月から同工場の部品調達システムの見直しに本格的に取り組んでいる。

少量多品種生産のため、量による購買メリットが出せないことが泣き所だが、部品の標準化や情報管理の見直しで改善を図っていく。生産のリードタイムを1カ月まで短縮することが目標だという。

中国、東南アジアよりもメリットのある生産拠点へ――アイデアはまだたくさんある。


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