2001/01/29

第15回 香港ヤクルト<ヤクルト>、香港人の腸を守って30年



台湾、ブラジルに次ぐ3番目の海外拠点として香港に進出してすでに33年。香港ヤクルトは大埔工場からは1日72万本ものヤクルトを市場に送り出し、日々700万市民ののどを潤し、「健腸長寿」に貢献している。

川喜多工場長

活性乳酸菌飲料「ヤクルト」は、22カ国・地域で販売され、1日に日本国内1,100万本、海外1,400万本が飲まれている。くびれのあるボトルデザインや使用される乳酸菌とその数「1mlに1億個以上」は、日本も世界も共通だ。

ヤクルト菌(「ラクトパラチルス・カゼイ・シロタ株」)は、創業者の代田稔博士が1930年に発見した特殊活性乳酸桿菌で、ヤクルトの肝心かなめの原材料。世界各地の工場には、日本から冷凍乾燥されて「冬眠」状態のヤクルト菌が運ばれてくる。工場ではまずヤクルト菌を解凍活性化。シードタンク(種桶)での蒸気殺菌、培養を経て、脱脂粉乳やブドウ糖を加え、さらに培養タンクで細心の注意を払いながら7日間37℃前後で培養。ここで、ヨーグルト状の酸っぱい乳酸菌液ができる。

川喜多康政工場長によると、一定した品質を維持するためには「生きた乳酸菌」の増殖率と菌数のコントロールが必須。また洗浄・殺菌は何度も念入りに行い、それだけで「製造工程の20~25%」を占める。徹底した品質管理が認められ、香港ヤクルトは昨年11月に品質保証の国際規格ISO9001を取得した。

次に、乳酸菌液に香料、シロップなどその他の原料を調合。ヤクルト原液(濃縮液)ができ上がると、品質検査の後ストレージタンク(原液桶)で5~6℃に低温保存。大埔工場のストレージタンク5基の容量は合計すると12万リットル。この原液に洗浄ろ過した殺菌水を混合させれば、乳酸菌飲料ヤクルトの誕生だ。日産は7万2,000リットル、72万本分に達する。

プラスチック容器も、成型機6台を使って1時間に平均3万8,000個を作り、赤インクの印刷をほどこす。パイプを通じて運ばれたヤクルト液をボトルに詰めると、冷蔵庫へ送られる。

香港のヤクルトは少しグラマー

香港に根づいた100mlボトル

デザインは同じでも日本の65ミリリットルに対して、香港は約1.5倍の100ミリリットルのボトルを採用している。川喜多工場長によれば、1969年進出前に行った市場調査で、多くの消費者が「おいしいけれど、量が少なすぎる」と回答したことが理由。やはり夏が出荷のピーク、工場がフル稼働となる。

進出から33年、すでに販路は香港全域をカバー、「乳酸菌飲料市場のシェアは85%」に達している。川喜多工場長は、「香港の方で、ヤクルトが日本のものだと知っている人は半分いるかいないか、ぐらいでしょう」と語る。

工場見学に来ていた地元の幼稚園児らは、工場内を一巡して「ヤクルトができるまで」の工程を一通り見た後、腸内の善玉菌が悪玉菌を退治するヤクルトのオリジナルアニメを見ていた。そしてご褒美のヤクルト。ゴクゴクッと飲み干すと、「大好きー」「もう1本ほし~い」の大合唱。川喜多工場長は「この子供たちは将来の顧客なんですよ」と、朗らかな笑みを浮かべた。ヤクルトは1日平均3~4回、幼稚園、小学校などからの工場見学を受け入れている。

■中国市場、5月に本格進出へ

10年ほど前からは広東省へ輸出している。50%の関税で小売価格は5本入り1パック14~15人民元に跳ね上がるが、毎日7~8万本が売れている。

この実績を背景に、今年5月には「広州ヤクルト」を立ち上げ、中国市場への参入に本腰を入れる。出資比率は、日本のヤクルト本社が60%、香港ヤクルト35%、地元資本5%。すでに同省での市場は開拓済みなだけに、自信も気合も十分だ。ただ川喜多工場長は「広東省から香港への逆輸入が心配」と、価格コントロールを今後の課題に挙げた。

ヤクルトは巨大な中国市場をすごい勢いで「北上」していくことになりそうだ。


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