2008/10/16(木)

緊急特集・アジアに試練、リーマン破綻から1カ月


主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の行動計画を好感した欧米株高を受け、今週明けのアジア株式市場は日本で過去最高の上げ幅を記録するなど大幅反発。連鎖的な全面安にひとまず歯止めがかかった。

表1

米国発の金融危機が、アジア市場に土足で踏み込んで1カ月。経済のグローバル化が進む中で、欧米市場の暴落を「対岸の火事」と傍観することができない現実を、アジア各国の市場関係者や投資家は今回改めて脳裏に刻み込んだ。

自国市場にもかかわらず、株価反発は、欧米株の上昇を待つしかない。利下げや株式の買い支えなど、アジア各国が打ち出した市場安定化対策は特効薬にならず、政策担当者の誰もがもどかしい日々を過ごしたことだろう。

G7が今月10日に行動計画を採択した直後に急きょ開催された、中国やインドなど新興国を含んだG20も、「米国を責めても意味がない」と震源国への責任追及をせず、各国が早急に足並みをそろえる対応の必要性を強く宣言した。国境を越えて流れる資金や投資マインドの悪循環を一気に断ち切るには、一枚岩の姿勢を市場に見せるしか道は無かった。

◇景気刺激か、インフレ対策か

リーマンショックは、時差なしに連動する世界市場を証明すると同時に、アジアの「自我」も浮き彫りにした。

景気刺激のため中国や香港、豪州などが利下げを決める一方、インドネシアは金融不安が依然高まる10月初旬、利上げを実施し、インフレ封じ込めを優先した。タイやフィリピンもインフレ懸念から金利を据え置いている。インドネシアはストップ安で無期限の取引停止を経験、タイで は金融不安で7割の輸出企業が業績悪化を訴えているにもかかわらずだ。株安が続いていたべトナムでは、グエン・タン・ズン首相が1日に経済閣僚らを集めて開いた会合で、経済関係省庁、特にベトナム国家銀行(中央銀行)に対し、米金融危機に伴う米国および世界の金融情勢の変化を追跡・分析するよう指示した。

マレーシアでは今のところ株式市場の下落幅も比較的小さく、政府首脳は一貫して「金融危機の影響はない」と主張。ただ一部からは、危機回避のための対策が何ら示されていないとして、政府への批判の声も上がっている。市場規模などに起因する世界市場との連動深度がそうさせるのか。

垣根が崩れて一体化している市場と、ひとくくりにできないアジア経済。アジア発の金融危機が起きたとき、難産ながらも今回、欧州連合(EU)が見せた協調利下げや、フランスなどユーロ圏(15カ国)による金融機関への公的資金注入のような合意が、はたして可能だろうか。

…………………………………………

中国がいつ、どのような形で、いくら米金融界を支援するのか世界が注目している。1兆8,000億米ドルもの外貨準備を持ち、米金融界崩壊の影響が軽微な中国が世界金融にどういう形でコミットするのだろうか。

7日付英フィナンシャルタイムズは「中国が米国を救済するためのマスタープラン」という論説を掲載。中国政府は米国に直接、5,000億米ドルを貸与するだろうと大胆に予測している。香港紙・明報は「中国は米国債2,000億米ドルを新たに購入する。すでに第1回分として700~800億米ドルの買い取りを米側に伝えたもよう」と報じた。

中国では、今後5年間の政策を決める中国共産党第17期中央委員会第3回総会(三中全会)が12日、「世界金融危機に積極的に取り組む」と宣言して、閉幕した。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン