2002年11月 6日(水)
身近なシンガポール法務第58回[社会]
雇用(9)
岡田ビジネスコンサルタンシー
岡田昌光
(b)秘密保持(続き)
“Trade Secret”(業務秘密)は、内容からいって、極めて高い秘密情報と申し上げてよいと思います。
この情報は、例えば化学式、建築様式、もしくは建設方法等です。裁判所基準では、このような情報は開示したりする事はできないとの見方を示しています。
雇用期間中、被雇用者の義務として、秘密情報であるとか、ノウハウの悪用はできないように規定されています。ある業務には必然的に高度な秘密情報に接する事になる場合、雇用者は、雇用契約に特に秘密保持を明示するのがよいでしょう。
秘密保持事項を確固たるものにするには、その条項には、どの情報と書類が雇用者にとって秘密であるかを明確にしておくことです。
雇用者は“Non-CompetitionClauses”(競合禁止条項)を雇用契約書に入れる事により、企業利益を保護することが可能になります。かかる条項には、退職後、ある一定の期間は一定の地域内で競合しないとか、以前の得意先であるとか、かつての同僚である人たちに接触しないとかを明示して、被雇用者に明確な義務とするのです。
シンガポールの裁判所は、かかる条件を是非、雇用契約書に明記するようにはいっていません。ただし、(1)企業利益を守るため(2)規定される秘密保持期間が適正である(3)地理的地域と範囲が適正である(4)企業利益を守る以上の事を求めない――場合は認めるようです。
もっとも当該企業は、かかる条項が適正であることを立証する責任を有します。
一般的に、シンガポール裁判所は、退職後の元従業員の活動を束縛する事項は無効かつ強制できないとの見解をとり、一般企業の考え方と一致していません。もっとも、雇用者が企業の利益を合法的に守り、不必要な企業保護をしていない事を示すことができる場合は除きます。