2002年10月 9日(水)

身近なシンガポール法務第54回[社会]


雇用(5)

岡田ビジネスコンサルタンシー

岡田昌光

“雇用(1)”の冒頭で述べました様に、シンガポールの雇用体系と日本のそれが根本的に異なっているのは、雇用者と被雇用者との関係が契約の枠組みの中で構築されている点です。

法的には、雇用者と被雇用者との間で交わされる雇用契約書は、必ずしも文書でなされてなくてもよいのです。つまり、両者で結ばれる契約書は口頭でもよいし、一部文書、一部口頭でも、契約書として成り立つのです。

しかし、実務上、また法的にも望ましい事は、雇用契約書を文書で作成することです。両者が確認し合い、契約有効期間中に契約内容の変更等がある場合、それが可能だからです。

人を雇用する時、雇用者として十分認識しておかなければならない事は、雇用しようとする人の法的権利です。この権利は、“雇用(3)”で述べました様に、Ministry of Manpower (労働省)、Trade Union(労働組合)、および CPF Board(中央積立基金庁)の諸官庁で守られております。雇用契約書の内容が、被雇用者の権利を保護する法令に相反することはあってはなりません。

“Employment Act Employees”とは、Employment Act(雇用法)が適用される被雇用者のことを指します。このような被雇用者との雇用契約書の内容が、Employment Act に規定されている関連条項と比較して不利なものであれば、当該契約書は不法であり、無効なのです。当該契約書の該当事項の内容が Employment Act のそれよりも下回るものであってはならないのです。つまり該当条項の内容は、Employment Act の該当する条項内容と同等もしくは、有利でなければならないのです。

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