2001年12月12日(水)

身近なシンガポール法務第14回[社会]


会社役員(2)

岡田ビジネスコンサルタンシー

岡田昌光

会社役員の法的責任のうち、“受託者責任”について申し上げます。

役員たるものは、会社に利益をもたらすべく、誠実に行動しなくてはなりません。第三者の個人、もしくは団体の為の利益行為であってはならないのです。

これは、役員の最重要かつ、最優先されるべき責任です。大局的立場で「何が会社にとって有形無形の利益であるか」の判断ができなくてはなりません。会社の利益とは、取りも直さず、会社の株主への総合的利益のことを言うのです。

役員の間違った決定は、単に会社に対する受託者責任を遂行しなかっただけではありません。裁判所は「役員は誠実に責任を果たしていない」と推論することがあるようです。

役員は、会社の資産の保管人でもあると考えられています。従って、資産は会社の利益目的のみに利用されるものです。役員は自己のために会社の資産、資金を使用し、利益をあげてはならないのです。このような利益をあげますと、役員責任の不履行となります。もちろん、このような利益は、会社に帰属させなければなりません。会社資産を自己の利益のために利用すると、信託法違反として刑事責任を問われ、有罪となる可能性があると言われております。

“能力・監督および注意義務の責任”について申し上げますと、会社法には、役員としての資格規定はありません。役員は知識、経験から、充分役員としての能力を発揮できるとの期待ができれば任命されます。誠実に、与えられた権限を行使すれば判断の誤りについての責任は問われません。会社問題を自らの問題として認識し、対応することが求められます。公私混同は厳に慎まなければならないことは言うまでもありません。

最後に、“遵法責任”について申し上げます。株主および債権者に対して、適切な情報の開示をしなければなりません。登記上の住所、監査に必要な全ての資料の保管と提示、監査報告書を作成し、株主に提出すること――などです。

このように、役員の責任は重く、従って軽々にForm45に署名はしないことです。役員に任命される前に、役員についての責任と義務を弁護士事務所などで充分確認しておくことをお薦め致します。

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