2001年11月28日(水)
身近なシンガポール法務第12回[社会]
不良債権回収(2)
岡田ビジネスコンサルタンシー
岡田昌光
前回に続いて、不良債権回収において、訴訟に入ってからの順序を申し上げます。
弁護士事務所は、訴訟依頼に基づき、「Writ of Summons」(裁判所からの出頭命令書)を作成します。そして裁判所で、その承認を得て「Statement of Claim」(請求権利書)を添付して被債権者宛て「By Hand」で送達します。
「Writ of Summons」には、「本状送達日から8日以内に、請求権利書に記載されている金額通りの支払いを行うか、もしくは裁判所に出頭しなさい。さもなくば、原告は裁判の手続きに入る事ができる」と記載されています。
その有効期間は、本状発行日から6カ暦月ですが、裁判所の命令で更新することができます。
被告は、原告に対して弁護士経由で、抗弁の申し立てをすることができます。この抗弁がなければ被告に対して判決を申し渡すことになります。
被告が判決に従って支払いを行わないと、弁護士が裁判所に「資産差し押さえの依頼書」を提出します。裁判所は「Sheriff(執行吏)」を資産のある場所(被告の自宅等)へ派遣します。
依頼人は自ら、被告人のどこにどのような資産があるのかを明確にして、事前に裁判所に連絡をしておく必要があります。
また、銀行預金の差し押さえには、別途裁判所に対して申請をし、許可を得ることが必要です。
被告人が会社のオーナーであれば、「その会社を清算する」と言って圧力をかける方法もあります。ただし会社清算には、別の法的手続きが必要となります。
以上が、一般的な回収手順です。
回収の対応は、信頼のできる弁護士に依頼して行うのが賢明であり、周囲の人たちの情報だけで安易に対応しないことです。
また、相手側が「支払う」と口頭で言うことだけを信用しないことです。「支払う」という場合、必ず文書で支払日を確定しておく必要があります。くれぐれも、回収が滞らないよう、常に万全の態勢をとることが肝要です。