2001年10月10日(水)

身近なシンガポール法務第6回[社会]


雇用時の注意点

岡田ビジネスコンサルタンシー

岡田昌光

シンガポールでの雇用思想は、根本的に日本と異なっています。

シンガポールの雇用基本は「移動雇用」です。つまり、被雇用者は常に賃金、待遇などの理由で移動します。一方、雇用する側も経済環境の変化に対応し解雇を行います。シンガポールの雇用法はこのような雇用・被雇用に適切に対応したものと言えます。

雇用される場合も、解雇もしくは退職する場合も、極めて日常的に行われており、決して「大ごと」と考える必要はありません。いったん雇用しても、本人が雇用者にとって不適者であれば、解雇すればよいし、本人も入社した会社が自分にとってふさわしくないと判断すれば、退職すればよいのです。

ただし、これらが安易に行われていると見るのは、適当ではありません。常に、「法」に則った行動が望まれます。

それには雇用する時に必ず、雇用契約書(Letter of Appointment)を被雇用者との間で取り交わすことです。第4回の中でも申しましたように、例え1人の雇用者、1人の被雇用者という駐在事務所の場合でも、雇用契約書は必要です。労働組合のある場合、通例この労働組合による契約書の規定が適用されます。

会社対個人の間に結ばれる雇用契約書には、業務内容や給与、ボーナスなどの支給額、支給方法(銀行振込等)、支給時期、福利・厚生(医療費、交通費支給等)の他に、就業規則がない企業の場合は、就業規則のように細かく規定します。

拘束勤務時間、超過勤務時間、年次有給休暇、産前産後休暇、CPF(中央積立基金=日本の厚生年金にあたる)、保険などの他に、機密保持義務、勤務遂行義務、他社との重複勤務禁止、解雇もしくは退職後一定期間における競合他社への勤務禁止、解雇手当支給、有給買取なども含めたほうが、退職、解雇の時の軋轢(あつれき)を避けることが出来ます。

定年退職金制度、解雇手当などの法の規制はありません。この点、誤解されている方を見受けられます。

この契約書作成にあたって、信頼のおける弁護士事務所に相談されることをお勧め致します。

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