2005/01/19

工場を軌道に乗せるには


工場が軌道に乗りません。どうすればいいのですか。

非常に切実なご質問ではあるのですが、ご質問の意味が広範囲ですね。まず、問題は何かということから取り組まなければならないと思います。

工場が軌道に乗らないということは次のようなことなのではないでしょうか。

1、現地スタッフが育たず、何でも日本人がやらなければならない状態にある

2、会社の利益が出ない

3、製品の品質、生産能力、納期に問題が多く、クレームばかり

4、従業員の定着が悪く、どんどん従業員が辞めていく。特に幹部の定着が悪い

[現地進出時の計画はどうなっていたのか]

海外進出を計画する人と、海外で指揮をする人は違うケースが圧倒的に多く、無責任とは言いませんが、計画と実際の状況との間には大きなギャップがあることも事実です。

計画を立てる段階では、不確定要素も多く、すべてを決めるということが難しいということもあります。また、その後の環境の変化というものもあります。

工場が軌道に乗らないということは、本当に軌道に乗っていないのか、それとも当初の計画に対して遅れているだけなのか、です。

多分に机上で計画する場合、トップからの要請もあり日程は厳しくなっています。従って、計画通りに進まないのが普通とも言えます。

[工場が軌道に乗らないケースの分析]

1、現地スタッフが育たず、何でも日本人がやらなければならない状態にある

少し時間が必要かなという気がします。現地スタッフは基礎力と経験が不足するので、日本の時計では動かないのは当たり前です。忍耐強い現地スタッフの指導が必要です。一方で、言葉の問題もあり、こちらの意思が、十分に伝わらないという歯がゆさもあると思います。

私どもが指導をする会社でも、当然のことながら言葉の問題には直面しています。大企業のように、日本の大学を卒業したスタッフをそろえれば、それで済むことかもしれませんが、一般には、そのようなことは難しいのが実態です。従って私どもも、コンサルテーションの過程で、翻訳をしたりすることも多く、コンサルテーションを行っているのか、翻訳を行っているのかと自問自答をすることもあります。

当然の事ながら、私どもでは提供する資料は英語と日本語の併記を原則としています。やはり、海外で仕事をするということは大変なことなのです。

2、会社の利益がでない

この件に関しては、本連載の第6回で紹介していますので、説明は割愛しますが、利益を出す努力をすれば利益は出るようになると思います。ただし、当初の計画には、人件費の高騰だの、厳しい条件は含まず、魅力的なものとなっていると思いますので、当初の計画通りにはいかないと思います。また、ある程度の忍耐は必要でしょう。工場での人を使っての仕事ですから、1年程度の時差が出るのはやむを得ないと思います。

3、製品の品質、生産能力、納期に問題が多くクレームばかり

これは、工場の管理ができていないということです。日本の企業には、技術、技能がありますが、これが正しく伝えられていないということだと思います。

理由としては:

a.品質に対する意識が乏しく仕様通りの製品ができていない

b.生産計画に対する意識が乏しく、計画通りの生産が行われていなくても気にしていない

c.緊急輸送に慣れてしまって、納期に直結した納期通りの生産をしようとする気持ちがない

対策としては、

品質:短期対応―現場に不良の折れ線グラフを掲示し、問題ごとに原因を書き込む

どこの国も同じで、現場の人は真面目な傾向がある。問題は、上司が問題を問題として部下である作業者に伝えない点にある。これだけで、短期的には品質は向上するはずです。

長期対応:ISOなどを含め、品質のシステムを構築する。

この過程で、日本で行っているシステムなどを学び、導入することも多々あります。

生産能力:どこがネックかを明らかにして、集中的に取組みます。

どこの会社でもすべてを一度によくするほどの人材は抱えていないはずです。的を絞った重点志向が大切です。

次に、現在の仕事の見直しです。無駄がないかです。見直すと結構無駄な仕事をしています。聞くと、言われたからやっているというのが多いようです。何故そうするのかを考えないので、このようなことになるのだと思います。状況が変化すれば取り組みも変わるのですが、まだそのレベルではないということでしょう。

納期:工程内在庫の見直しです

まず考えていただきたいのは、生産能力と生産計画の問題です。在庫はあるのに納期遅れという場合は、生産管理のシステムが問題です。在庫が全くない場合は、生産性を含めて生産能力の見直しです。

まず、工程内在庫を調べていただきたいのです。これは、生産管理、現物管理がうまく行っていないのではないかという推測からです。この場合は、問題は改善するどころか、ますます悪くなっていきます。

納期管理の基本は明確な現物に対する表示と生産管理による現物の追いかけです。これらの対応は優先順位を付けて取り組むと良いと思います。

4、従業員の定着が悪く、どんどん従業員が辞めていく。特に幹部の定着が悪い

本当に、困るケースでしょう。しかし、幹部について言うと、必ずしも全員がある一定の期間で辞めていくのではなく、定着する人もいます。定着する人が増えれば会社も落ち着いてきます。

あわてずに対処することが大切です。また、辞める幹部に対しては、理由を明確に聞いておくことも大切です。その中に、重要なことが含まれているかもしれません。

[最後のアドバイス]

どこの会社も、最初からうまく行っていたわけではありません。幸いに工場の運営が軌道に乗ってから、こちらに来られた方々もいらっしゃるでしょうが、各社とも、それなりのご苦労があったはずです。

そんな苦労話を、他社の方から聞く機会があると、ヒントが得られたり、勇気付けられたりするものです。

JACTIM(日本人商工会議所)の部会などに参加して、他社の方々から話を聞いてみてはいかがでしょうか。

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